228話 クヴェレ殿下は過保護です
「なんだ、急に笑って。」
「いえ。」
私が思い出し笑いを堪えていると、ネロが呆れた顔で私を見る。
「その様子だと、分かったんだろ?」
「まぁね。」
「分かったのか?なんだ?」
シン王子の勢いが凄い…
落ち着いてください…
「ここに八枚の岩パネルがあり、これをどうにか動かすことによって、扉が開くはず。じゃあ、この絵が描かれたパネルを何に当てはめるかなんですが…」
「あぁ…」
目の圧が凄まじいことになっていますって…
「さっきまでの推理、途中まであっていたんです。まず、これ。」
私が指で示したのは、丸の周りに直線の棒が散っているもの。
「これは、おそらく太陽です。お次にこれ。」
次に指さしたのが、七つの半円。
「これが虹。」
次に丸。
「これは月です。」
「ここまでは言われれば分かるが、他は何だ?」
「斜めにふにゃふにゃ三本は滝、半円の上に三本のふにゃふにゃの温泉マークは炎、にょろにょろがいっぱいが海、六角形が岩、二本の棒は道ですね。」
順々に、岩のパネルを指さしながら、対応する言葉を当てはめる。
「…なんか無理ないか?」
「無理ないか?と思うかもしれませんが、辛うじて見えるものは、そう見えるでしょ?にょろにょろいっぱいは波だし、六角形は岩のごつごつを表している。斜めに三本のふにゃふにゃの線は、流れ落ちる滝のことで、二本の棒はその間を通る道。そして、この半円の上にふにゃふにゃ三本は、炎…イコール地獄を表しているんです。」
「…辛うじて見ようと思えば見えるが、それでいいのか?」
シン王子は、まだ半信半疑と言った感じだ。
ネロは、何かに気が付いたのか、横で一回小さく頷いた。
「まぁまぁ、この岩のパネルは、順番に並び替える必要があるんです。私、こういう形のゲームを知っているんですけど…」
九×九のマスに八枚のパネルと一つが空間のパズル。
縦や横にパネルをスライドさせて、数字やイラストを並び替える遊び。
まさしく、その形にそっくりのため、見た時からパネルの並び替えだと分かったのだけれど、どう並べるのかが分からなかった。
「並び替えは分かったが、イラストについては納得がいっていない。無理やりあてはめただけじゃないのか?」
まぁ、私もこの絵だけをみて、その答えにたどり着くことは絶対にできなかったです。
それを解決してくれたのが、クヴェレ殿下の話の内容。
「シン王子?お忘れですか?私たちは、ここまで順を辿って来たではありませんか。」
「は…?まさか、父の話の内容なのか?」
「はい。その通りです。」
「じゃあ、父の話がそうだから、この絵にそれを当てはめたのか?」
まだ納得いっていない感じだ。
分かるよ。
「いえ、逆です。このパネルを見て、クヴェレ殿下はあの話を作ったんだと思います。」
「どういうことだ?」
「疑問に思っていたんですよね。わざわざ、アルトゥンに誘導してから、エンゲルストラートの滝の中に入っていかせようとした、クヴェレ殿下の言葉に。だって、私たち、永遠の滝がエンゲルストラートだと気が付いていたじゃないですか?なら、直接、エンゲルストラートから行くのもありだったと思うんです。」
もちろんそれだけじゃない。
「それにモアナの中央にある小さな海。モアナには穴が開いていて、地上からでも海は見ることが出来た。ということは、地上からモアナの穴に入れば、地下のあの道に出られるのではないでしょうか?」
シン王子は、はっとして私を見る。
「他にも行き方があったのに…。父の言葉は、他に使い道があったという事。それが、この扉のパネル。」
「そうです。おそらく正しい道を通ってこなくても、このパネルさえ解ければ扉は開く。クヴェレ殿下は、最後のパネルの解き方をシン王子に伝えるために、あの話をしたんです。そして、分かりやす過ぎないのは…」
「なんだ?」
「月の約束の謎に自力でたどり着いてほしかったとか?ですかね。」
私がそう言うと、シン王子は、
「なんだよ、それ。」
と笑ってほほ笑んだ。
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