22話 個だと平気なのに、集合するとなんか嫌なんだけど
ちょっと、気持ちの悪い部分があるかもしれません。
お気をつけください。
やっと、サバイバルに必要な4大項目の1つ、火を手に入れた。
水源を見つける時間が、早かったことによるアドバンテージは、火起こしによって、むしろマイナスになった。
でも、ここからはもう早い。
なぜなら、やることが見えていて、材料も揃っているから。
まずは、お湯を沸かして、ろ過装置に使う石や砂利を煮沸。
煮沸が終わったら、ろ過装置を作り、作ったものの中に水を入れ、ろ過。
下に出てきた水を、また煮沸すれば、飲み水の確保完了なのだ。
まず、火を起こした焚火の周りに、火傷をしないように、大きめの石を並べて、積んでいく。
これで、簡易かまど完成。
取り敢えず、鍋が置ければいいし、こんな物だろう。
鍋に泉の水を汲んでかまどの上に乗せる。
飲むわけじゃないから、煮沸だけでいいでしょ、ということで沸騰したところに、ろ過装置で使う材料を入れて、しばらく待つ。
時間が分かるものがないから、自分の感覚で10分ってことで。
その間に、ろ過装置の本体を作る。
「今度は、工作か?」
「そう、これに石とか砂利とか敷き詰めて水を入れる。そうすると、この下の所からゴミとか汚れが取れた水が落ちてくるってわけ。」
「なるほど、良くできてる仕組みだな」
「人は、魔法の力を持たない代わりに、生き抜くために知恵を身につけたわけよ」
ちょっと得意げに言うと、ネロは鼻で笑った。
「お前が考えたわけでもないのに、威張るなよ」
「うるさいなぁ、人間の文明を素直にすごいと言えないのかね、まったく」
お互いに悪態を付き合っていると、私の感覚で10分が経つ。
どうやって取り出そうかと思ったが、火おこしの時に持ってきていた木材を削って、箸をつくる。
必要だと思ったら作ればいいじゃない
…むふふ、こういう生活いいね
最初に入れるのは石で、隙間なく詰める。
石、砂利といれて、炭が必要だったのを思い出した。
炭ってなんでもいいのかな。
かまどから、火が消えてしまった部分の木を取り出す。
炭っぽいし、これでやってみようと思い、砂利の上に炭を入れた。
そして、砂を入れて、布を入れる。
ボトルの口部分に布をかぶせて、固定すれば完成。
早速、水をろ過装置に入れてみると、ゆっくりと水が下に下ってきた。
そして、最初の一滴が下のボトルに落ちる
「できたぁぁ…」
完成したことに安心して、その場に寝ころび、思いっきり伸びをする。
「おつかれ」
ネロが上から見下ろしてきたので、腕を伸ばした。
「なんだよ」
「癒してよ、疲れたし」
嫌な顔をしながら、仕方なさそうに私の腕に入ってきた。
ネロのおなかに顔をうずめる。
動物って、やっぱ癒される。
アニマルセラピー最高
このまま寝ちゃいそうだな。
拠点の確保、火の確保、水の確保、4大項目のうち、3つの獲得に成功した。
一日でやらなきゃいけないこととしては、十分なのではないか、そう思う。
「おい、チヒロ」
「なに…?」
「食べるもの、どうするんだ?」
鋭い…
サバイバル生活4大項目の残り1つ、それは食糧確保だ。
食量確保なのだが、正直1日目は、要らないかなと思っていたのである。
人間は水を飲まないと、3日くらいで死に至るらしいのだが、食べ物を食べなくても2週間くらいは持つのではないかと聞いたことがある。
諸説あるとは思う。
よって、食い気<眠気になったのだが…
ネロにご飯あげないといけないよなぁ。
そのことに気が付き、重い体を無理やり起こす。
うーん、取りに行くか。
もうすぐ、暗くなってくるころだから、急がないと。
無人島の食料として、思い浮かぶものと言えば、魚とか、あと野草とか、他にも木の実やキノコがある。
そういうものって、この世界にもあるんだろうか。
魚を取るには、釣り道具や銛が必要であり、今から道具を作っていたら日が暮れる。
次は、野草、キノコ、木の実。
この3つも早々に選択肢から外した。
暗くなってから、森に入ると道が分からず帰れなくなる。
そして、昆虫。
食べなくてもいいのであれば、食べたくない。
まだ、食べるものを選んでいるだけ、心に余裕があるってことだな。
そして、私が最終で選んだものは、貝である。
道具は基本いらないし、海沿いの岩や崖にいそう。
行ってみるか
必死すぎて、海のほうを全然見れてなかったけど、透き通る水に感動する。
綺麗…
いつまでも景色を眺めてるわけにはいかないから、食糧探しに移る。
岩の所を見てみる、いるいる。
岩場にごつごつと張り付いた物体が。
何の貝か分からないけど、発見!
こういう時、異世界転生の漫画とかだと、鑑定という最高スキルにより、これが何かわかったりするのに。
あのスキル、めちゃくちゃ便利だよね。
そんなことを考えながら、貝をとっていると岩場の陰で何かが動いた。
ビックリした…
よく見ると、あれは…カニなのかな?
手のひら2つ分くらいの体に、足が片側8本、合計16本+ハサミ1本+鎌1本。
…なんか足多くない?それにデカくない?
片側のハサミとか、手のひら1個分くらいあるし。
右手側、ハサミじゃなくて鎌だし。
浜辺にいるカニって、なんていうか、こう、こじんまりした慎ましいカニだと思っていたんだけど。
足の数しかり、存在の主張が激しいな、カニもどきめ。
そんなことを思いながら、カニもどきを眺めていると、一匹一匹と増え始める。
モゾモゾ、ゴソゴソ、カサカサ
なんかそこら中から、集まってきて今や、20匹の大集団になっていた。
……
「ネロ助けて」
「…お前さっきと言ってること違くないか?」
「そうでした」
き、気持ち悪い!!!
一匹だったら、なんかカニにしてはおかしいけど、異世界ならこういうこともあるって思って、捕まえて食べようと思えたんだけど、あの集団はさすがに気持ち悪い。
しかも、何してんのかと思ったら、カニもどきさんはカニもどきさんを食べてるし…
ぐ、グロイ
んー…んー…
食べなくても生きていける…
でも…
ネロの方をちらっと見る。
「ネロ、あれ食べる?」
「あれは、好きだぞ」
「え、食べるの?」
「あぁ、食べる」
猫ちゃんのくせにカニ食べるの?健康に悪くない?
本人がいうから、大丈夫か。
というか、あれを見て、好きと言えるのは、強すぎる。
はぁぁぁぁと、ため息をつき、決意した。
あのカニもどき、なんとか一匹とろう
貝採取をいったん中止して、生き抜くために異世界ガニもどきの集団に、無謀にも勝負を仕掛けるのであった。
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