225話 ようやく扉の前に来ましたが…
ゴホンゴホン
前の方から大きめの咳払いが聞こえる。
「シン王子?どうかしたんですか?」
「いや、あまりにも、のほほん、ふんわり、ほわわんの会話に耐えられなくなったからとかではないからな。」
なんて?
のほほん、ふんわり、ほわわん…?
何語?
「お前たちも少しは集中しろ。後ろで花が舞っていそうな会話をするな。」
シン王子がご乱心である。
花が舞っていそうって…
「いいか?お前たちは、俺と運命共同体になったわけだ。」
勝手にされたんだけどね?
「二人で会話を繰り広げるな。」
「シン王子も入ってくればいいのでは?」
「今の話のどこに入る余地があるんだよ。」
どこにでもあるような。
私とネロが、仲がいいとシン王子が言うように、私からしてみれば、ネロとシン王子は仲がいいのだから。
「…もしかして、仲間外れにされて寂しいとか?」
「そ、そんなわけ、な、ないだろ。」
シン王子って、そんなに分かりやすい人だったっけ?
明らかに動揺してますと表現しているようなものじゃないか。
「大丈夫ですよ。シン王子のことちゃんと大切に想ってますって。じゃないと、ここまで付き合ったりしませんよ。」
「あぁ、それはそうだな。こんな大変なことをするわけがない。」
なんだ、寂しかったのかぁ。
可愛い奴め、と思いながら、シン王子に向かって心の中でグッドポーズ。
「いかにもフォローしていますと言った感じでありがたいが、お前たちは俺がここにこなくても、二人で勝手に探しに来てただろ。」
えぇ?なんのことかな?
「そ、そん、そんなことないですけど。」
「俺が行くと言わなかったら、どうやって夜のナトゥラに入ろうか考えていたんじゃないか?」
「まさか、そんなわけないだろ。」
「ちなみに、許可なしの夜のナトゥラは、いろいろ面倒だぞ。罪に問われる場合もあるしな。一生牢屋の中に居る羽目になるかもな。」
あぶなぁ…
シン王子がいてくれてよかった。
シン王子とアルビナ令嬢のことがなかったら、きっとこっそり侵入を考えたかもしれない。
だって、月の約束の話、気になるんだもん。
ジトっとしたシン王子の目が私とネロに突き刺さる。
「あははは。さぁ、シン王子、先に進むのみですよ。」
「そうだぞ。シン、この先にきっとあるだろうな。」
実際、シン王子のことは関わっているうちに好きになったし、アルビナ令嬢も同じく。
「まったく、都合のいい奴らだな。」
「まぁまぁ。」
長い、長い道の先…
最後は少しふざけながら、ようやくたどり着いたその場所。
私たちの目の前にある石の扉。
「…ありましたね。」
「あぁ。」
クヴェレ殿下の最後の言葉、扉は開かん。時が満ちるその日まで。
開く開かない以前に、扉を見つけないと話にならない。
その扉が長い道の末に、ようやく見つけることが出来た。
石造りの両開きの扉。
「やりましたね。」
「そうだな。」
シン王子は、その扉をぼっーッと見つめている。
こらこら。
安心している場合じゃないでしょ。
「開けないんですか?」
「開けるに決まっているだろ。」
シン王子は、すたすたと扉の前に歩いていき、扉をぐっと押した。
さぁ、その先に何が?
ワクワクする気持ちが止められない。
「……。」
ん?どうしたんだろう?
「シン王子?どうしたんですか?」
「開けないのか?」
シン王子は、扉の前で固まっている。
私とネロは、顔を見合し、首を傾げた。
「シン王子?」
「開かない…」
え?
「いまなんと?」
「はぁぁぁぁぁ。」
おぉぉ、大きなため息。
「開かないと言ったんだ。」
えぇ?
アカナイ…開かないだと?
「え?ここまで来て、道を間違えたとでも?」
「いや…どうだろうな。」
なんでだ?
それとも、満月の推理がそもそも間違っていたとか?
ここまで、いろいろと条件が揃って、ここまでたどり着いて全部間違いだったとか、そんなことある?
いや、ないでしょ。
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