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223話 プティテーラと古代壁画の謎


ひえぇぇぇ…

滝のサイドから通り、まっすぐ進むことを選択したわけだけど…

岩の壁と滝の間は、人一人が通れればいい方の間隔しかない。

滝の方に行くと沸騰したお湯が当たるため、岩の壁をスレスレに歩く。

あっつ…

シン王子が何を言っていたのかよく分かる。

上から流れ落ちてくる水が跳ね返り、熱々のお湯が体にあたる。

熱いって…


あれ?

でも、まてよ。

炎の滝の方にスッと手を伸ばし、触れてみる。


「熱くない…」

「ほんとだな。」


炎の滝自体は熱くなく、でも跳ね返りは熱いとなると…


「もしかして、熱いのって滝つぼの部分だけってこと?」


もし、炎の滝自体が熱いのであれば、上から流れ落ちる段階で飛び散る水しぶきも熱いはずだよね。

それが熱くない。

案の定、触っても熱くなかった。


「そういう事みたいだな。」


それが分かってしまえば、こんなところ楽勝でしょ。

むしろ、早く抜けた方がいい。

だって、気を付けるのは、水の跳ね返りと下に落ちないようにすること。

滝スレスレであろうが、この滝に触れても熱くないと分かれば、すいすいと歩くことが出来る。


「調子に乗って落ちるなよ…」

「落ちないよ。足元さえ気に…」


すたすたと歩いていた先で、足元を踏み外しかける。

いきなり、地面が崩れたのだ。


「言った傍から、何やっているんだよ。」

「今のは私のせいではなくない?不可抗力でしょ。」

「その不可抗力で怪我してたら、元も子もないな。」


おっしゃる通りです…

足元は気を付けた方がいいな…


「炎の滝も、滝の幅があるよね。」

「今まで歩いてきた距離と比べると大したことないがな。」


それはそうだよ。

プティテーラを縦断したのと一緒の距離歩いていますから。

むしろ縦断しているから。

地図があるとして、上を北としたときに、北にあるのがセレーネギアや炎の滝、南にあるのが観光案内所やエンゲルストラートだからね。

今現在、やっていることは、エンゲルストラートから、炎の滝に向かって歩いているのと同じだから。

南から北に歩いているってことだからね。


「歩くという感覚がマヒしそうだ…」

「…ネロは飛んでるけどね…」

「飛ぶのも疲れるんだよ。」


そうかもしれないけどさ…

ネロは歩く感覚はマヒしないでしょ…


「揚げ足を取るな。」

「いつも取ってくるのはネロだけどね。」

「まったく。ああいえば、こういう…」


やれやれ感を出すのは、腹立つからやめてくれ。


「ほら、早く行け。シンを待たせているかもしれないんだからな。」

「それは、待っていてくれているかな…」

「どうだろうな…」


シン王子の知的好奇心が勝り、一人でグイグイと進んでいたらどうしよう。

怪我をされているよりは、断然それの方がいいけど、この先、安全とは限らないからなぁ。

慎重に足を滑らせないようにしながら、でも少し速足で進めるところまで進んでいく。


「あ、シン王子!」


離れたところでシン王子が見えてきた。

シン王子は、ボーっとしている様子だけど、何かあったのかな?


「なにやっているんだ?」

「さぁ…とにかく行ってみよう。」

「あぁ。」


シン王子の様子が気になり、足を速める。


「シン王子―」


ようやくシン王子と合流することが出来た。

そこは、滝の裏のゴールのように、広い空間になっている。

シン王子を呼び掛けてみるけど、返事がない。

どうしたんだろう?

シン王子がボーっと見つめる先に、目線を移した。


「あ…」

「これは…」


そこにあったのは、岩に所狭しと刻まれている壁画。

文字のようにも見えるけど…


「これはなんだ?」


シン王子がボソッとつぶやく。

プティテーラの文字ではないんだ。

そして、私のトラジスのメガネでも読むことが出来ない。


「ネロ…これって。」


ネロは、その光景を見て目を大きく見開いている。


「ネロ?」

「あ…あぁ。なんだ?」

「大丈夫?」

「あぁ。」


大丈夫には見えないけど…


「それで、なんだ。」

「…これ、もしかして古代の文字?」

「お前、古代文字のことを知っているのか?」

「え?あぁ、前、話に聞いたことがあって。」


これって言っちゃダメだったっけ?

ネロの様子に動揺して、もしかして口を滑らせた?


「…誰に聞いたんだ?」

「えっと、語り部の人に…」

「…なるほどな。口伝をする奴と会ったことがあるのか…それにしても、古代の話をするなんて、変わったやつだな。」


確かにユオは変わっている気がするけど…


「おい。これは、なんだ?チヒロとネロは、知っている様子だったよな。」


私とネロの話を聞いて、さっきまでボーっとしていたシン王子がこちらの方に来ていた。

私とネロは顔を見合わせて、頷く。


「私は、この文字がもしかしたら古代文字に関係があるかもしれないという事しか分かりません。私のメガネ、翻訳機能が付いていて、見れば勝手に翻訳してくれるんですけど、例外があって、古代の文字とコスモスに繋がりがない世界の文字は読めないんです。後者の可能性もあるけど…」

「これは、古代文字だ。」


ネロは、私の言葉を遮るように言った。

ネロには確信があるみたいだ。


「だが、すまん。俺も存在を知っているだけで、読めない。ただ、プティテーラに古代の文字があるのは確かみたいだな。」

「そうか…月の約束の謎を解こうとしたら、また一つ謎が増えてしまったな。」


シン王子は、もう一度、壁画の方に目を向けて、穏やかにほほ笑んだ。

読んでいただき、ありがとうございます!


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