221話 三人よれば文殊の知恵?
休憩したことにより、頭がすっきりした気がする。
スッキリとした頭で考えているのは、何か忘れているような気がするということ。
なんだっけなぁ。
今も永遠と長い道を歩いている訳なんだけど、ここに来るまでに何か引っかかったことがあるんだよね。
うーん、思い出せない。
私が顔をしかめながら歩いていると、ネロが引いた顔で私を見てきた。
「お前、その顔やばいぞ。」
「え?顔?」
「あぁ、いかにも間抜け顔と言ったところか。」
相変わらず失礼なんだから。
「考え事をしていたの。仕方ないでしょ。」
すると、シン王子も興味を持ったのか、私の方を向いた。
「何を考えているんだ?」
「え?あぁ、何か引っかかっていることがあるってだけなんですけど。こう何か忘れていることがあるような。」
「月の約束に関係あることか?」
「あ…いえ、それも分からなくて。でも何かが引っかかっているんですよね。」
うーん。
「引っかかりを覚えたのは、この洞窟に入ってからか?」
「えっと、はい。たぶん、そうです。」
「洞窟に入ってからの会話は、父クヴェレの月の約束の話と細かい内容を話したな。」
うん、そうだったかも。
ここに入ってからの会話をゆっくりと思い出す。
海の話、岩の話、そして道の話。
あと、地獄の話をして、休憩の時にカップ麺の話がチラッと出て…
あとは、世間話をしていた気がするけど…
殆ど月の約束についての話だよなぁ。
「……ん?」
まてよ。
そういえばさ…
「シン王子。」
「なんだ?何か思い出したか?」
「いえ、そういうわけではないんですけど。シン王子と地獄の話をした時、なんて言いました?」
「地獄の話?そういえばしたな。プティテーラの地獄のイメージは、燃え盛る炎と深い穴だな。そこに落ちたものは、二度と戻ることが出来ない炎の深い穴。」
これだ。
ここに引っかかっているんだ。
燃え盛る炎…深い穴…
なんだろうな。
というか、なんだっけなぁ。
「どうかしたか?」
「なにに引っかかっているのかが分かった気がします。でもなんで引っかかっているのかが分からないんですよね。」
「なにに引っかかっているんだ?」
言ってみれば何か分かるかもしれないよね。
「プティテーラの地獄のイメージです。燃え盛る炎と深い穴。ここに引っかかっているんだと思うんですけど…」
「燃え盛る炎と深い穴か。」
「はい。」
私の頭の中の引っ掛かりを、わざわざネロとシン王子にまで考えて貰うなんて…
これで月の約束が全く関係ないことだったら、頭下げてお詫びをするしかないよ。
恥ずかしすぎる…
「そうか。」
「なるほどな。」
ネロとシン王子が呟き、お互いの顔を見合わせた。
そして、ニヤリと笑っている。
え?なに?
「そういうことか。自分で言っておきながら、すっかり忘れていたな。」
「これが本当に目印だったのなら、面白いな。」
だから、なに?
二人で何か分かったみたいな感じを出さないでほしい。
私にも共有してくれ。
いまだに、引っ掛かりが取れず、モヤモヤとしているんだから。
「チヒロ、相変わらずいいところに気が付くな。海の時と言い、岩の時と言い。」
「いろんなことが気になるからだろ?好奇心があることは、いいことだ。」
あぁ、もう。
だから、なに?
ネロは、それ誉めているのかな?
私の言葉で何か分かったみたいなのに、私だけ仲間外れとかひどくない?
ブスッとした顔で二人を見ると、二人は私の顔を見て笑った。
失礼過ぎる。
「まったく、ほら、あっただろ?ナトゥラにも燃えるような炎が。」
ナトゥラにある、燃えるような炎?
あ…もしかして。
「炎の滝…」
バッと二人の顔を見ると、二人が大きく頷いた。
「あぁ。そうだ。炎の滝、バンシャラール。」
「それが、月の約束に関係があるってことでしょうか?」
「その可能性は高いな。いままでも、そうだった。そして、ナトゥラの三つの謎の最後の一つだ。目印にするなら持って来いのものだろ。」
シン王子の言う通りだ。
アルトゥンの消えない虹。
エンゲルストラートの永遠に流れ落ちる水。
そして、アクアルテの燃えるような炎の滝。
可能性はある。
あるんだけどさ…
「あの…確か、炎の滝ってエンゲルストラートの真反対に位置していましたよね。」
「そうだな。」
「モアナの湖から、気球で移動した方が早いって言ってましたよね。」
「…そうだな。」
だからかぁ…
歩いても、歩いても全然目標にたどり着きそうもないのは。
本当に炎の滝が関係しているんだとしたら、ナトゥラの端から端までを歩いて移動することになるのだから。
「中間にあるモアナは、もう通過している。それから、結構歩いた。目指すべき場所も分かった。あとは進むだけだ。」
「ふふっ、そうですね。」
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