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214話 夜に架かる月虹


ゆったりとハウスでゴロゴロしながら過ごし、もうそろそろ日が落ち、月が出始める。

カツも食べてゲンも担いだし、ゴロゴロとして休息もばっちり。

そろそろ動かないと自分にカビが生えてきそう。

全力の伸びをして、体を動かす準備もオーケーである。


横を見ると、椅子の上に丸まって寝ているネロがいた。

すよすよと気持ちよさそうに眠っているところ申し訳ないけど、ここは起きてもらおう。

ニコニコしながら、ネロを揺する。


「ん?」


まだ、眠そうなネロ。


「起きて、ネロ。そろそろ、日が落ちるよ。」

「あぁ…?」


優しく揺すっても全く起きないネロ。

仕方ない。

強硬手段に出るしかないなと思い、大きく息を吸って、ネロの耳元へ口を寄せる。


「起きてくださーい。」

「は?うるさ。何?」


あ、起きた。

飛び起きたネロは、キョロキョロとあたりを見回し、私を見つけると恨みがましく見てくる。


「もっと、起こし方ないのか?」

「耳元に息をフーっとするか、耳元で声を張るかで悩んだんだけど?」


耳元にフーっとされるのを想像したネロは、ぶるっと体を震わせて、もういいと言って飛んでいった。

私も耳元で息を吹きかけられるのは、得意じゃないんだよねぇ。

ゾワってするというか、鳥肌が立つ。

黒板を爪で引っ搔いたときとか、マジックペンをキュッキュされるときみたいなゾワっと感。


ゴロゴロとしていた部屋は二階だったので、そのまま下に降りると、シン王子はすでに準備万端でスタンバイしていた。


「起きてきたか。」

「おはようございます。シン王子。ゆっくり休めましたか?」

「あぁ、もちろんだ。」


本当だろうか?

いや、絶対嘘な気がするけど、まぁ大事なイベント前って気が休まらないこと多いよね。

緊張とかで。

こればかりは仕方ないのかもしれない。

倒れないことを祈るばかりである。


「ネロ、降りてきませんでした?」

「あぁ、あっちにいるよ。」


シン王子が指を指す方を見ると、荷物の上にポスっと座っているネロがいた。


「ネロ、怒ってるの?ごめんね?」

「あぁ?別に。気にしていない。」


キョトンと首を傾げる様子を見ると、本当に怒っていないのだろう。

よかった。


「さて、忘れ物はないな?」

「もちろんです。」

「大丈夫だ。」


再びお世話になったハウスにお礼をして、外へと出る。

外に出た時には、日が落ちてきて、あたりは暗くなってきていた。

夜用気球に乗って空を飛んだら、昼見た時とは違った風景が気球から見ることが出来るはずだ。


日が落ちて来ているということは、月が出て来ているという事。

日が落ちている反対側を見ると、綺麗な月が顔を出していた。

徐々に上がる月、欠けのないきれいな満月。


ハウス前で月が出るのを待って、気球に乗り込む。

夜用というだけあって、暗闇を照らすライトはしっかりと付いており、明るさもそれなりな物。


「月が出たな。」

「はい。まずは、導きの虹は消えないという、アルトゥンの虹の橋へ行きましょう。」


わざわざ、クヴェレ殿下がシン王子に語った話に不必要なところはないと思う。

このまま、エンゲルストラートに行くのではなく、先にアルトゥンに行って、虹の真相を確かめるべきだろうな。


「わかった。」


私たちが気球に乗り込むと、シン王子の操縦の元、気球は浮き上がる。

風船部分はついていないので、やっぱりついていなくても浮き上がることが証明されたな。

どんどんと上昇していく気球から、外を見る。

徐々に暗くなってきているけど、まだ見えるな。


「やっぱり、昼間とは違った景色ですね。」

「光源がないから、日が完全に落ちるとほとんど見えないけどな。」

「じゃあ、本当に真っ暗な中、飛ぶんですね。」

「気球が自ら出す光で辛うじて見える。まぁ、ほとんど真っ暗だ。」


ナトゥラは本当に広いなぁと思う。

日が落ちる前にハウスを出たのに、アルトゥンに着く前に完全に日が落ちてあたりは暗い。

月の光と、気球の光のみで、アルトゥンを目指しているわけだけど。


外に乗り出し、空を見上げる。

本当にきれいな満月。

それに、月が大きく見えるのは気のせいかな?


「おい、あれを見ろ。」


シン王子が私とネロの方に声をかけてくれた。

アルトゥンに着いたのだろうか?

私はそのまま、シン王子が見据えている方へ顔を向けた。


虹…

本当に虹がかかっている。

夜でも虹は消えないんだ。


「すごいですね。本当に、消えない虹。月の光で出来た虹ってことですよね。」

「あぁ…」


ん?

なんか反応が悪いな。


「どうかしましたか?」

「いや…消えないのはそうだが…こんなに大きな虹は見たことがない。」


え?

私はもう一度、虹の方を見る。

アルトゥンで出来た大きな虹が橋のように、時には曲線を描き、時にはまっすぐ直線に続いていた。


まるで、どこかに導いているような。

読んでいただき、ありがとうございます!


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