213話 ゲン担ぎはカツでした
変形した夜用気球にしばらく乗り、あまりの快適さに私は舟をこいでいた。
「おい、起きろ。」
「いひゃい。いひゃいって。」
ネロの肉球が私の顔面を押しており、ぷにぷにとした肉球を味わいつつも、結構な力で押してくるので、首が取れそうになる。
そして、鼻がつぶれそうだ。
「寝るなよ。」
「ごめんごめん。あまりにも揺れないし、乗り心地もいいから寝そうになるというか。何かあった?」
目をこすりながら、ヘラっと笑ってネロを見る。
起こされたということは、何かあったのかな?
「何もない。が、このままナトゥラのハウスに行ってもいいのかと。」
あぁ、そういうことか。
前話したときに決めたルートだと、早めにナトゥラに行き、ナトゥラにあるハウスで夜を待つ予定だったもんね。
「ハウスに行く前に、エンゲルストラートとアルトゥンを上から見てから、ハウスに向かいませんか?」
下見とまではいかないけど、様子見をしておいてもいいだろ。
何か変化があったらおもしろいし。
「エンゲルストラートとアルトゥンな。分かった。」
シン王子から返事が来て、夜用気球は、グッと曲がった。
わっわっ。
転ぶ、頭打つ。
「しっかり掴まっていろよ?」
言うのが遅いよー。
既に頭は一度打ちました。
痛い…
外を眺めると、既にエンゲルストラートが見えてきている。
この夜用気球、やっぱりスピード早いよね。
上から眺める最大の落差の滝は相変わらずの迫力である。
そして、落ちた水がどこまで続いているのかは、やっぱり分からない。
流れる水は永遠というのは、伊達じゃないなぁ。
その後、アルトゥンにも様子を見に行ったが、目に見えた変化はなかった。
前回よりも、虹の量が少なく、トンネルもなかったが、その変化はシン王子もよく見る変化らしく、普通のことらしい。
滝の迫力を見つつ、予定通り、ハウスに向かった。
ハウスも前回来た時と変化はない。
そもそも、前回来てからそんなに日が経っていないから当たり前だろうけど。
目の前の湖も日が当たり、キラキラと輝いている。
グッと両手を上げて、背筋を伸ばし空気をいっぱい吸い込む。
きもぢい…
空気もおいしいし。
自然豊かなところって、行きたくなるというか、空気を吸いたくなるんだよね。
「中に入らないのか?」
既に中に入っていた、シン王子はハウスの中から声をかけてくれる。
ネロは、私が伸びをしている様子をじっと見ていたようで、ふっと笑われた。
すごく恥ずかしいから、黙って見ているのはやめてください。
「行くぞ。」
「分かった。」
ネロは、ふよふよと飛んでハウスの方へと行く。
私もその後を追いかけて、ハウスへと入った。
ハウスの中も、綺麗なまま保管されていた。
先に入ったシン王子が窓を開けておいてくれたため、誇り臭さもなく快適である。
ハウスに来て、真っ先に窓を開けに行ったであろうシン王子を想像して、本当にナトゥラに来慣れているなと思った。
「今のうちに、何か食べておくか。」
「いいですね。」
日が沈みだしたら、バタバタするだろうし、ご飯食べる時間もないだろうから、食べておいた方がいいだろう。
「さて、カップ麺でも作るか。」
シン王子が取り出したのは、カップ麺。
やっぱりかぁ。
何か食べるかと聞きつつ、選択肢はないんだなぁと思った。
シン王子セレクトのカップ麺に私は少し不安を覚える。
チョコレートとかフルーツとか勘弁してくれよ?
机の上を見ると、らあめんとかかれたパッケージ。
おや?思ったよりも普通そう。
ぺりぺりとパッケージをはがし、お湯を沸かして、カップに注いでいる。
お湯は沸かしてあったんだろうな。
食べる気満々じゃないか。
しばらく待って、机の上に出来上がったカップ麺を置く。
「さぁ、食べよう。」
蓋をはがしてみると、普通のラーメンには乗っていないであろう物。
揚げ物がドカッと乗っていた。
これは…カツかな?
「魔水魚のカツだ。」
カツってもしかして。
「少しくらいゲン担ぎをしてもいいだろ?」
ニヤリと笑ったシン王子は、そのまま麺を啜って食べ始めた。
本当に意外なことが多いな、この王子は。
少し面白くなって、ニヤケてしまったが、魔水魚のカツなんて食べたことがないし、空腹に負けて、私も食べることにした。
魔水魚のカツは、シン王子が朝、買って来たらしく、別入りだったためか、サクサクホクホク感がたまらないものになっていた。
お湯と一緒にいれたら、こうはならないだろう。
お腹一体になったし、ゲンも担いだし、あとは日が落ちるのを待つだけになり、ハウスの中で、三人でくつろいで待つことにしたのだった。
読んでいただき、ありがとうございます!
よろしければ、
評価、ブックマーク、感想等いただけると
嬉しいです!
よろしくお願いします!




