208話 しおしおしている場合ではないですよ
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アルビナ令嬢の突然の来訪には驚いたけど、いろんな話を聞けた。
「急に婚約の話が進んだと思ったら、そんなことがあったなんてね。」
「そうだな。」
「シン王子はこのこと知っているのかな?」
「分からないが、シンは知らないんじゃないか?知っていたら、令嬢の所に走っていったかもな。」
あぁ、うん。
そうかも。
私たちの観光案内をしている場合ではないだろうな。
クラト公子も知らないだろうな。
クラト公子も、昨日、私たちのところに来たし。
アルビナ令嬢の胸の中に留めた言葉を、私たちに話してくれたのか。
なんだかむず痒いな。
それにしても…
「シン王子、来ないね。いつもこんなに遅かったっけ?」
「いや。今日はたまたま、チヒロが早く起きたとはいえ、いつもシンは、チヒロが起きるより早く来るぞ。」
それ、わざわざ、私のこと言う必要あるかな?
シン王子は、いつも早く来るぞ。でいいんじゃないかな?
「今日はタイミングよかったかもね。朝早くにアルビナ令嬢が来たから、シン王子がいつもと同じくらいに来ていたら、エンカウントして険悪ムードになっていたかも。」
「それ、シャレにならなくないか?」
「確かに。アルビナ令嬢に浮気相手だとは思われたくない。」
「それは役不足だろう。」
さっきから、私をけなさないと気が済まないのかな?
ムッとした顔で睨みつけると、ネロは素知らぬ顔でフイっとそっぽを向く。
この猫めっ。
……もしかして。
いや、まさかなぁ。
「どうかしたのか?」
「ドアの外を見てくる。」
「は?え…?」
私は、立ち上がり、ドアの方へと向かう。
ドアを開けて、廊下を覗き込む。
「…なにやっているんですか?」
「あぁ、おはよう。なにって涼んでいたんだ。」
ドア脇に立っていたのは、シン王子。
「人の泊まっている部屋の前で、涼まないでください。怪しいです。」
「どこで涼もうといいだろ。」
「いいですけど、やっていることは不審者ですからね。」
「……」
「とりあえず中に入ってください。」
怪しい王子を部屋の中に招き入れて、椅子を準備する。
「来てたのか。」
「部屋の外にいた。」
「あぁ、なるほど。」
ネロも何かあったことを察してか、部屋のドア前までふよふよと飛んできた。
シン王子は、落ち着かない様子で部屋を見回している。
「お、お茶が出ているな。誰か来ていたのか?」
「シン王子…」
貴方、聞いていたんじゃないの?
「シン王子、わざとらしいです。」
「なにをいう。なんのことだか、分からないな。」
「はいはい。」
アルビナ令嬢に出したお茶を入れ直して、シン王子に出す。
シン王子って、こんなに分かりやすい人だったっけ?
もっと、高度な駆け引きをやる人だったような…
アルビナ令嬢ショックか?
「それで、どこから聞いていたんですか?」
「お茶です。よければどうぞ…」
全部じゃん。
それ、私がアルビナ令嬢を部屋に招き入れて、一番最初に言ったことだよ?
そこから、ドアの外で私とアルビナ令嬢の話を聞いていたんだとしたら、本当に不審者だって。
よく捕まらなかったなぁ
「違う。話を聞いていたんじゃない。入るタイミングをうかがっていたんだ。俺が朝気合を入れてきたら、アルビナがなぜか来ていて、驚いたのは俺だぞ。」
「私もアルビナ令嬢が来ることなんて、把握していませんって。ねぇ、ネロ。」
「あぁ、シンを待っていたら、チャイムが鳴り、ドアを開けたら、令嬢だったわけだけだな。」
だよね。
そうだよ。
「そうか。そうだったか。アルビナの話を聞いてくれてありがとう。俺じゃダメだったな。」
シン王子。
「君たちが話していた通り、俺はアルビナの事情を全く知らなかった。急に婚約の話が進んだことも、不思議で仕方なかった。アルビナには、申し訳ないことをしたな。」
「シン王子。」
「なんだ?」
「なに、しおしおとしているんです?そんなんじゃ困ります。」
俺様じゃないのもいいと思うけど、今回はダメ。
「アルビナ令嬢は、シン王子を信じていると言っていましたよ。シン王子のことを過去のことになんかしていません。そして、シン王子には、今回のミッションをきっちり完遂してもらわなくては困ります。」
「はぁ?」
「なぜなら、私がアルビナ令嬢に言ってしまったからです。あなたが信じる約束は、裏切らないと。私を嘘つきにしないでくださいね。」
「…フッ。誰に物を言っているんだ。当たり前だ。俺は、嘘はつかない。あと、言っておくが、俺はしおしおなどしていない。」
それならよかったです。
「それなら早く、ナトゥラに行く準備をしてください。」
アルビナ令嬢の話を聞いて、より早くナトゥラに行きたい欲が高まっているのに、全くこの王子は。
シン王子を急かし、ナトゥラに行く準備を進めるのであった。
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