205話 明日は満月 冒険の前に
フレーブをお腹いっぱい食べて、お店を出る。
衝撃のシーンを目撃したが、美味しかったのでオールオッケーと言うことで。
「フレーブ、とても美味しかったです。」
「それなら、よかったよ。」
「はい。ありがとうございました。」
マジで、美味だった。
そういえば、なんでフレーブは、火の街の名産なんだろう。
他の街の名産も気になるけど。
「どうかしたか?」
「いや、どうしてフレーブが火の街の名産なのかなと。」
「あぁ。それは、刻印の石窯で焼き上げているからだな。」
刻印の石窯?
「フレーブに適した専用の火の刻印を石窯に用いているんだよ。フレーブの専門店では、それぞれ独自の刻印を使っているんだけど、俺はあそこのフレーブの店が一番口にあったんだよね。もちっとした生地といい、濃いめの味といい。」
なるほど。
専用の石窯か。
「ウォーターフルーツは、太陽の街の特性を生かした時短の飲み物ですよね。じゃあ、虹の街の水団子と、雫の街の魔水魚は?」
「虹の街の水団子は、もともと虹色の生地で出来ていたらしいぞ。」
「雫の街の魔水魚は、ナトゥラで採っている分と、街で養殖している分があるんだ。どちらも、絶品だよな。」
ここにきて新情報が続々出てきたんだけど。
水団子が元々、七色の団子だっただと?
しかも、雫の街で魔水魚を養殖しているのかい。
聞いてよかったよ。
何気なく聞いたものが、とんでもなくいい情報だったわ。
これは、この情報を知った上でまた食べる機会を作るべきだな。
月の約束のことがスッキリしたら、プティテーラ観光をもう一度やるべきだと思った。
「それから、はい、これ。」
クラト公子から受け取ったものは、頼んでいたロープ。
どのくらい長いかは、分からないけど、巻き数からいって結構ありそうだな。
「何に使うか知らないが。」
「ありがとうございます。助かりました。」
「いえいえ。気をつけろよ?それから、頼むな。」
この人、絶対に何に使うか分かっているだろう。
まったく。
察しのいいクラト公子からロープを受け取った。
これで、火の街で揃えるべきものも揃ったかな?
「そろそろ、帰る時間か?」
「そうします。」
「舟のところまで案内するな。」
「なにからなにまで、ありがとうございました。」
舟を停めていたところまでクラト公子に案内してもらい、舟の前で立ち止まる。
「じゃあ、俺はここで失礼しようかな。チヒロ、ネロ、宿まで送れなくてごめんな。」
「いえ、今日は案内していただいてありがとうございました。」
「シンはしっかり送ってやれよ?」
「分かっている。」
私とネロ、シン王子は舟に乗り込んで、クラト公子の方を見る。
「また、案内させてくれよ。」
「そう言ってもらえて、嬉しいです。」
帰りの舟を操縦するのは、話し合いの末、シン王子になった。
私が運転すると言ったが、ネロとシン王子に却下された。
帰りの時間は、人通りも少なくなってきているし、シン王子の顔の布グルグルも免除になったためだ。
解せぬ。
そんなにひどくないと思うんだけど。
ぶつぶつと言ったら、自覚がないなら、尚やめろと言われたため仕方なく断念し、シン王子にお任せすることにした。
「またな。」
クラト公子は、私たちが見えなくなるまで見送ってくれたんだろうな。
私の方からもクラト公子が見えなくなったし。
「今日はどうだった?」
「楽しかったですね。火の街。これで、一通りカナリスの街を見ることが出来ましたし。」
「それぞれの街の名産も食べることが出来たしな。」
「そうだね。」
散々楽しむことが出来たし、明日は気合を入れて探検に行けるんじゃないかな?
「それに、必要そうな物は手に入りましたし。」
「温度、明かり、発火の刻印だな。」
「あとロープ。」
そうそう。
「明日は、いよいよ満月ですね。シン王子。」
「そうだな…」
明日は満月。
ナトゥラに行って、月の約束の謎を解く。
月は満ちて、時が来る。
そして扉は、開く。
大丈夫。
読んでいただき、ありがとうございます!
よろしければ、
評価、ブックマーク、感想等いただけると
嬉しいです!
よろしくお願いします!




