193話 不審者は王子でした?
太陽の街シャムスに再びやってきた。
相変わらずの落ち着いた街並み。
前回はクラト公子と図書館で缶詰状態だったし、いろいろ見て回るぞ。
「ウォーターフルーツは、どこに売っているんですか?」
「シャムスになら、どこにでも売ってる。」
「買ってきても?」
「…また飲むのか?」
だって、美味しかったし。
ハマってしまったし。
「ネロもまた飲みたくない?」
「確か、中に入っている温かいジャムと外の凍っているフルーツの水の味が選べると聞いた。」
味に種類があるのか。
それは、飲むしかなくない?
私とネロは、近くのオシャレなカフェに入ってみることにした。
カフェ内は、ホテルのエントランスの様で。
入った瞬間、ちょっと場違いかと思い、足を進めるのを一旦止めた。
すると、ホテルマンのようなウェイターの男性がにっこりと微笑みかけてくれた。
「いらっしゃいませ。」
「あの、持ち帰りはできますか?」
「はい。ご案内します。」
スタッフに促され、レジカウンター前まで来た。
台の上には、メニュー票が置かれ、いろんな料理が書かれていた。
メニュー表を目で追っていると、スタッフの人に声を掛けられる。
「何かお探しですか?」
「ウォーターフルーツを探しているんです。」
「ウォーターフルーツですね。こちらになります。」
スタッフが手のひらで示してくれたところには、ずらっと並んだウォーターフルーツ。
イラストや写真も載っていて、見た目も朝に飲んだものと全然違う。
ここのウォーターフルーツは、なんか可愛いな。
カラフルな色合いといい、フルーツや生クリームのトッピングといい。
「ネロはどれにする?」
「俺はこのオレンジ色のやつにする。」
オレンジと黄色の層が何層にもなっているもの。
説明を見ると、さっぱり、スッキリ、爽やかなものらしい。
「私はどれにしようかな。」
メニュー表を見ながら、悩む。
ネロのオレンジ色の物もいい気がするし、他のも…
「……俺のを少し分けてやるから、早く決めろ。」
「え?」
「そうしたら、二種類は楽しめるだろ?」
ネロぉ…
ネロの頼んだものが、さっぱり、スッキリ系だから、もう一つは甘いものにしようかな。
私は、結局ピンクと紫の層になったもの上の方に、生クリームが乗っているものにした。
「そういえば、シン王子は?」
「外で待っているらしい。」
あぁ、王子がこんな所に居たら大騒ぎになってしまうもんね。
…外で待っていても大して変わらないと思うけど。
ちゃんと隠れられているかな…
不安になってきた。
「シン王子も何か飲むかな?」
「爽やかなものが好きだと言っていた。」
「じゃあ、ネロと同じものにする?」
「そうだな。」
結局、オレンジ色の物を二つ、ピンクの物を一つ注文することにした。
出来上がりを待って、スタッフの人から、容器を受け取る。
急いで外に出ると、店の陰で丸まって隠れているシン王子がいた。
「…何やっているんですか?」
「あぁ、やっと出てきたか。」
「シン王子…怪しいですよ?」
「誰のせいだ。」
シン王子は、ムッとしながらスッと立ち上がり、服のしわを伸ばしている。
「さっさとここを離れるぞ。」
シン王子の言う通り、離れた方がよさそう。
だって、シン王子は顔をできるだけ隠し、カフェ前で丸まっていたことで、歩いている人たちから、だいぶ不審な目で見られている。
この不審者が王子だとバレると、余計に面倒くさそうだから、さっさとここを離れよう。
「そういえば、ここって飲みながら歩いてもいいんですか?」
「ポイ捨ては、厳しい罰がある。そこさえ気を付ければ、街中での食べ歩きは大丈夫だ。」
よかった。
ずっと手に持ったまま、飲めないなんて悲しすぎる。
無事、不審者がシン王子とバレずに移動することが出来た。
私たちがたどり着いたのは、大きい広場。
目の前には赤レンガの屋根に白い外観をした時計塔。
図書館って、確かこの辺だったな。
あの赤いレンガの塔は見覚えがある。
落ち着いてウォーターフルーツを飲むために、近くにあったベンチに腰を掛ける。
「はい、ネロ。そして、これがシン王子の分です。」
「俺の分?頼んだか?」
「私とネロが飲んでいて、シン王子がそれを見ている状況がなんとなく嫌なので、良かったら付き合ってくれませんか?」
「わかった。」
シン王子に容器を渡すと、容器をじっと見つめ、その後優しく笑った。
朝は、私一人で飲んでいたけど…
急遽始まったお茶会に、なんだか嬉しくなってしまった。
読んでいただき、ありがとうございます!
よろしければ、
評価、ブックマーク、感想等いただけると
嬉しいです!
よろしくお願いします!