192話 一緒にいるためには理由が必要です
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「明日は分かったが、今日はこの後どうするんだ?」
「それは、シャムスに行こうかと。」
太陽の街シャムス。
前回、クラト公子と一緒に行ったはいいが、全然観光をしないで帰ってきてしまった。
せっかくだから、あの赤と白の街並みをもう一度拝みたいし。
ウォーターフルーツを飲んで、シャムスに行きたい欲が高まってしまったというのもある。
「まさか、シン王子がシャムスの名物を買ってきてくれると思わなくて。つい、シャムスにもう一度行きたくなったというか。それよりも、朝なのによくそこまで行きましたね。」
「男同士の話と言うものもあるだろう?」
「男同士の話?」
「あぁ、それに盛り上がってな。ついつい、シャムスまで行ってしまったんだよ。」
…そっか。
男同士の話かぁ…
確かにそれは私には分からないな。
シン王子とネロ、いつのまに仲良くなったのかとずっと思っていたけど、なんだかんだ二人の時間があったってことだな。
ネロも楽しそうだし、それは良かったかも。
「そうなんですね。」
「なんだ?何か言いたいことでもあるかと思ったが?」
「え?なんですか、それ?特にないですよ。男同士の話は、私には分からないですし、そういう話ができる知り合いが出来ることはいいことじゃないですか。…って、その顔は何です?」
私の言葉を聞いていたシン王子は、徐々に間抜け面になっていく。
その顔、王子にはあるまじき顔だと思うけど…
「なるほどな。」
「どうしたんですか?」
「いや。チヒロは、常にネロが隣にいることが当たり前だと思っているのだなと。」
え?
「いえ、そんなつもりはないですけど…」
「そうか?」
目を見開き、少し考える様子のシン王子に私は首を傾げる。
どういうことだろう…
シン王子には、私はどのように見えているんだ?
「ちょっと待ってください。さっきの言葉どういうことでしょう。」
「チヒロ、君はネロが絶対に自分のところに帰ってくると思っているんじゃないか?」
「それは…教育係ですし。」
「なら、その教育係の役が解かれたとき、君たちの関係は何だろうな。」
ネロが私の教育係じゃなくなったとき?
あ…確かにそんなこと考えてなかったかも。
そっか、今ネロと一緒にいるのって、ネロが私の教育係だからなのか。
異世界に来て、ずっとネロは隣にいた。
だから、ネロは当たり前のようにずっと自分の横にいるものだと思っていた。
仕事だし、いつかは独り立ちする時が来るのだろうか。
その時、隣にネロはいない…
「それはまずいな。」
「は?」
「それは、まずい…」
「おい、大丈夫か?」
顔を覗き込んできたシン王子の肩を掴み、シン王子を見た。
「それは、とても嫌ですね。確かに私は、ネロはずっと一緒にいると思っていました。」
「あぁ…え?」
「でも、そうではないということですよね。」
なるほど。
当たり前ではない。
ちゃんと、一緒にいることを可能にする理由が必要になるときが来る。
このままでは、ダメと言うわけだな。
「シン王子、シン王子の言葉で目が覚めました。これからは、もっと精進します。」
「あ…あぁ。」
シン王子に言われたことは、しっかりと胸に刻もう。
「お前ら何やっているんだ?行かないのか?」
ネロに遠くから呼ばれる。
私は、ネロの傍に寄り、ネロを抱きしめた。
「お前、急になんだよ。」
「いいじゃん。もふもふは落ち着くんです。」
「俺は、お前の癒しグッズじゃないんだが…」
ネロの呆れた声すらも、落ち着くなんてなぁ。
やっぱり、慣れって怖い。
シン王子。
ちゃんと上に立つ人だなぁ。
私すらも気が付いてなかったことを諭されたというか…
あのヘタレ王子に諭されたと思うと悔しい思いでいっぱいだけど、図星だったから、ちゃんとシン王子の言葉を受け止めよう。
ムカつくけどね。
「シン王子。シン王子も早くいきましょう。」
「おい。」
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