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184話 憧れは、時に真実を霞ませる


「マニさんは、平民出身。これは、月の約束の話で語られています。五大一族は、平民の方も名乗るのでしょうか?」

「いや…五大一族は、爵位を持っている者たちの総称だ。平民は、それぞれの一族が守るべき領民、街の民だ。」

「だとしたら、マニさんが月と称されるようになったのは、月の約束のプロポーズが起きた後ということです。マニさんと月を結び付けるには、関係が薄いと思いませんか?そして、月の約束にも、結婚を果たした後に、太陽のアイネと月のマニと言われるようになったと語られています。」


私の言葉に、クラト公子は顎に手を当てた。


「じゃあ、月の約束とはなんなんだ?」

「マニさんが月の約束と言っています。でも月は、マニさんを示す言葉ではない。ということは、月と言うものは、何か別の物にかかっているのではないかと思います。」

「別の物…」


物語内で月が出てくるのは、マニさんが言った言葉。


『月の約束を果たしに来ました。月の光に導かれ、その扉の向こう側に行ってまいりました。』


あれ、ちょっと待って。


「クラト公子…」

「なんだ?」

「プティテーラは、気球が移動手段の一つですよね…」

「そうだけど。」

「夜は、原則、気球を飛ばしてはいけないんですよね?」


私の言葉に、ネロがはっとしたように私を見た。

私とネロの様子に、クラト公子は首を傾げる。


「そうだね。」

「なるほどな。」

「何か分かったというのか?」

「分かったというよりあくまで仮説なんですが、月の約束に出てきた、マニさんが渡した物に繋がる場所に行くためには、夜じゃないといけないんです。」

「夜?」

「はい。夜、ナトゥラの方へ行かないと、その場所にはたどり着けないのではないかと思います。」

「なんで、夜なんだ?」

「物語に語られている通りです。月の光に導かれと言うのは言葉通り、月が出ている時間に、月の光が指し示す方へ導かれていった、そしてその先の扉を開いた。月の約束と言うのは、時間。夜を示すものだったのではないでしょうか。」


私の話す仮説に、ネロは何も言わない。

多分、考えが同じだから。

クラト公子は、いままで思っていた、月の約束の解釈が違っていることに驚いているのかもしれない。

でも、あくまで仮説だからなぁ。

これは、確かめに行かないといけない。

確か、シン王子が現在は、夜間の飛行許可を貰えば飛んでもいいと言っていた。

許可貰えるかなぁ…


「聞いてもいいか?」

「どうぞ。」

「俺たちはプティテーラにいるのに、その月の約束の謎を見抜けなかった。なのにプティテーラに来たばかりの異世界から来た、君たちは、その謎に気が付いた。それは…」


クラト公子の言葉に、私とネロは顔を見合わす。

やっぱり、思い入れが深い分、思うところもあるんだろうな。

なんて言おうか悩んでいると、ネロが口を開いた。


「だから、だろうな。」

「え?」

「外部から来たから、分かった。俺たちは、月の約束に思い入れがない。だから、客観的に物事を見れた。好きや憧れは、良いことだが、見えているものを時に神聖視しすぎて、本来の姿を霞ませることがあるから。」


はっきりと言ったなぁ。


「マニさんが月の一族だと勘違いしたのも、月と言う単語が月の一族に繋がりやすかったからだと思います。あと、もう一つ。」

「もう一つ?」


シン王子は、こう言っていた。


「これは、言い伝えだ。」

「それは。」

「小さい頃から、月の約束の物語を聞いて、決まって最後にはこういわれると聞きました。これは言い伝えだ、と。」


子どもが月の約束を信じて、探しに行かない様に。

あくまでこれは、物語であり真実ではないとさりげなく伝える言葉。


「そうだ。」

「この言葉によって、月の約束は虚構であり真実ではないと、小さい頃から言われていた。その状態で、尚且つ憧れにより鈍った感覚なら、勘違いしてもおかしくはないかなと思います。そして、最初に聞いた、夜、気球を飛ばすことが出来ないことを踏まえると、プティテーラの人が、月の約束の謎に近づくのは、難しいのではないでしょうか。」


ともかく、少しだけ月の約束の謎に近づけた。

この仮説が正しければ、夜。

夜にナトゥラの方に行って、探索をしないといけない。


これは、シン王子を捕まえて、話して見る必要があるだろうな。

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