182話 本に囲まれるとは、まさにこの事です
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困った顔をした受付のお姉さんを見て、クラト公子の笑いがようやく収まる。
切り替えるべく、コホンと一つ咳払いをするが、受付のお姉さんの目は明らかに不審なものを見る目だった。
受付のお姉さんから、ゲストの入館証を受け取り、中に入れてもらった。
「ちなみに今回は、俺の名前で入っているから、変なことをしない様に。」
既に、入口にて、変な目で見られた人に言われたくないけど。
「変なことですか?」
「図書館内で騒いだり、本に傷をつけたり。」
要は、普通の図書館でやってはダメなことをしなければ大丈夫ということかな?
「しません。」
「その点については、あまり心配してないけど、念のためね。」
「…クラト公子。」
「なにかな?」
「ありがとうございます。」
案内役を買って出てくれて、本当に助かった。
シン王子は、時間がないと言っていたし、少しでも時間を短縮できることはしていった方がいいと思う。
「そんなこと、今言っていいの?」
え?
「この中から、めぼしい物を探すんだよ?」
クラト公子が指をさす方を見て、私は絶句した。
「太陽の一族って、本当に真面目というか。これだけの本どうやって集めたんだか、ここに来るたびに思うんだよね。」
目の前に広がるのは、天井にまで伸びる本棚。
天井は、普通の図書館の高さではなく、建物五階…少なくともそのくらいの高さはある気がする。
その高さを埋め尽くすべく、本棚が積み上がり、その本棚の中には本がびっしりと入っていた。
「いや…あの…」
「なんだい?」
「検索機能とか…」
「あるよ。」
あるの?
なら楽勝じゃん。
「あるけど、思ったよりは大変だと思うよ。あの梯子を上って本を取りに行くわけだし。」
…なんで、二階、三階と階層を分けなかったの?
効率悪いでしょ。
「嫌な顔しているところ悪いけど、それが奥にびっしりと続いているから。」
ホントだ…
五階建てくらいの建物分、本棚が積み上がり、それの奥行きがエグイことに…
なんだか、本のトンネルみたい。
「なんで、この建物二階、三階と分けなかったんですか?」
「ここは、当初は本を保管するだけの倉庫だったらしい。だから、この入り口だけ、こういう作りになっているんだ。フロアを進んでいくと、もう少し使いやすくなるさ。それに、こういう風に不便な方が、悪事を働きにくいだろ?」
本を盗むとか?
防犯面に配慮して、こんなことに?
圧巻だけど、もっとやりようがあったような気がしなくもない。
「あれ?ふわふわ浮いている人がいますね。」
「あの人たちは、司書の人だね。基本、図書館関係者以外は、館内の魔法は禁止だから。」
私は、ちらりとネロの方を見る。
「なんだよ。」
「それ、アウトじゃない?」
フワフワと浮かんでいるネロに指摘してみる
「いや、グレーだろ。」
堂々と、グレーを主張するなよ。
グレーって、どっちかというとアウト寄りだから。
バレなきゃいいでしょ…じゃないから。
そんなに堂々と飛ぶんじゃありません。
「まぁ、今回は、受付嬢にも何も言われていないからセーフということでいいよ。」
「ほらみろ。」
なに?
憎たらしい顔。
見逃してもらっただけじゃんか。
勝ち誇った顔をするネロの頬をぐいぐいと引っ張り反撃をしておこう。
ネロは、なにかにゃーにゃー言っているけど、気にしない。
「さて、ここがプティテーラの歴史コーナー。そして、こっちが月の約束関連の本だね。」
ずらっと百冊くらい本が並んでいて、少しめげそうになるが、よく見ると月の約束の研究資料や、イラスト集なんかも入っている。
「あの、月の約束の物語はどこに?」
「ここからここまでかな。」
見ると、月の約束の物語についての本は、7冊。
「これなら何とかなるんじゃない。」
「そうだな。」
7冊を調べるのにも時間はかかるけど、百冊を片っ端から調べるより遥かにいい。
「じゃあ、観光部、事務仕事で培った処理能力の見せ所だね。」
「たいして、ないだろ。」
ネロのぼそっとつぶやいた言葉を無視して、私は自分を鼓舞するのだった。
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