178話 火の一族、アリファン侯爵家
「クラト公子から無事合格が貰えてよかったです。」
「あのなぁ…」
「それで、全部正解とおっしゃっていたので、火の一族についても何かあるのでは?」
「…もうよくないか?」
「よくないです」
私はクラト公子をじっと見つめ、言葉を待つ。
「いつもこんな感じなのか?」
「こんな感じとは?」
クラト公子は、やれやれと言った雰囲気を出すので、私は、ムッとして話を逸らす。
こんな感じってなにさ。
「こんな感じだな。」
私の返事が期待できないと思ったのか、ネロの方をちらりと見ると、ネロは何事もなかったかのように、クラト公子に返事をした。
ちょっと。
「そうか。」
クラト公子は、ネロの返事に満足をしたのか、ニヤリと笑った。
そして、一息を付くためか、座っていた椅子を座り直し、私たちを見る。
「プティテーラには、五大一族というものがあるんだけど、調べたりはした?」
「シン王子から聞きました。」
「そうか。」
五大一族。
月のフォルモント、太陽のシュルーク、虹のイーリス、雫のカスカータ、火のアリファン。
「月の一族が王族を担い、太陽の一族がその次点に着き、虹、雫、火は補佐にあたる。現在は、太陽は、シュルーク公爵家、虹、雫、火は侯爵家が一族のトップを担っている。」
虹、雫、火は同等ってことか。
「なんだけどね。火の一族は、少し肩身が狭いみたいでね。」
「なんでですか?虹と雫と火は、同じ爵位の人がトップですよね。一族内で他の家が、位が低いとか…?」
「いや、そうじゃない。」
じゃあ、なんだろう。
「月の一族のトリウェア女王にクヴェレ殿下が婿入りしたというのは、知っているだろう?」
あぁ、確か、あのパーティの時にヒソヒソと話をしていたアルスの人たちが言っていた。
「クヴェレ殿下は、雫の一族。しかも、現在トップを担っているカスカータ侯爵家だ。」
「え?」
「そして、次点に付けているシュルーク公爵家に嫁入りしたのが、虹の一族。現在トップを担っている、イーリス侯爵家なんだよね。」
わお。
王族に婿入りした、雫の一族と最高貴族、公爵家に嫁入りした虹の一族。
「しかも、カスカータとイーリスは、結婚を機にトップになったと言っても過言ではなくてね。それで、火の一族は、肩身が狭いというわけ。」
「雫と虹は、政略結婚ということですか?」
「いや、恋愛結婚だと聞いている。」
「えぇ?恋愛結婚なんですか?」
トリウェア女王が恋愛結婚…
クヴェレ殿下は、優しそうな感じだし…
想像できない。
「今すごい失礼なこと考えているだろう。」
「いえ、滅相もございません。」
顔に出てたか?
だって、あの威厳ある女王が恋愛をしているなんて…
もしかして、恋愛をしている時は乙女なのかな…
これが失礼に当たるんだよね、きっと。
「でも、それだとクラト公子の行動って少しおかしくないですか?」
「なにがだ?」
「シュルーク家のアルビナ令嬢と婚約を果たせば、肩身が狭い思いはしなくなるのではと。」
言わなくてもクラト公子なら気が付いているだろうし、あえて触れていないのかもしれないけど。
でも、そういうことだよね。
「そういう意見も、火の一族内で出たけど、無理だろ。」
「無理…ですか?」
「シンとアルビナ嬢の中に入っていけると思うか?」
あー…なるほど。
無理だろうな。
なんだかんだ、二人の世界を繰り広げ、周りを巻き込むお騒がせカップルだし。
「俺の両親も恋愛結婚だし、シンとアルビナ嬢を見て、他が入ることが絶対にできないことも分かってか、俺に無理して婚約することを進めていないんだよね。そもそも、好きでもないやつと添い遂げるなんて無理だろ、結婚なんて制約の多いもの。」
意外と恋愛観がしっかりしているというか…
チャラそ…軽そうに見えて、そういうとこしっかりしているというか…
「クラト公子…もしかして好きな人います?」
「な…」
あ…
顔を真っ赤にして固まるクラト公子を見て、いるんだなと私は納得するのだった。
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