177話 クラト公子の真意
余裕の笑みを崩さないクラト公子の様子を伺いつつ、頭の中で疑問点を整理する。
別にクラト公子のお願いを聞きますと言ってもいいけど、それって今やることと大して変わらない。
そのことも、クラト公子には説明したうえで、クラト公子は私たちにお願いをし、尚且つ案内役をしようとしているんでしょ?
面倒くさくないのかな…
それとも、さっきから言っている、一族というものが関係しているのだろうか…
疑問点は浮かぶけど、結論は出ないだろうな。
だって私、クラト公子のことそこまで知らないし。
「単刀直入に聞きますが、クラト公子は、どうして私たちのところに来て、そして私たちに何を頼みたいんでしょうか?」
「え?それは、さっきも言ったけど…」
「友人としてのお手伝いですか?それとも、私たちを見極めるためですか?」
さっきまで余裕の表情だったクラト公子が驚いた表情をする。
「それとも、先ほどから言っている、火の一族の関係ですか?」
クラト公子が単なるお人好しという線もあるかもしれないけど、シン王子の友人をしている時点でそれはないと思うんだよね。
なぜなら、シン王子は王族らしい王族だから。
考え方も上に立つものとしての考え方を持っている。
最終的には、自分のできる最大限で何とかしようとしてくれるから、人がいいんだけど。
そんな人の友人が、ただの手助けなんて理由で行動すると思えないんだよね。
「……」
「……どれも正解かな。」
「どれも?」
クラト公子は、ヘラりと笑った。
「俺個人としては、親友たちのために、アルビナ嬢とシンが仲良くゴールインしてくれるのが一番いいんだよね。今まで、相談乗って来たし。だから、さっき言ったことは本当。」
「どれも正解なんですよね?」
「そうだね。親友たちに近づいた異世界の人たちが、プティテーラに、そして友人たちの害になるのは困るからね。しかも、シンもナンナルも君たちとは、仲良くやっているんだろ?」
仲良く…
そうか、流れで関わることになったとはいえ、いろんなことを知ったしなぁ。
いつの間にか、仲良くなっていたのかな?
シン王子や、アルビナ令嬢、ナンナル王子…
うん。
ちょっと嬉しいかも。
「ましてや、話をしている内容が、結構デリケートだろ?だから、どんな人物なのか気になった。」
「どうでしたか?私たちは?」
「…いや、予想外も予想外だよ。俺の予定では、俺が案内すると言ったら、食いついてくると思っていたんだよね。シンにもナトゥラを案内してもらったと聞いたし。」
「シン王子にナトゥラを案内してもらったからこそ、クラト公子はどうしてあたしたちを案内したがるのか気になったんですけどね。」
悔しがるクラト公子に、ちゃんとネタ晴らしをすると、クラト公子は意外そうな顔をした。
「なんで、シンが?」
「パーティについてお話に来てくれました。」
「あぁ、なるほどね。」
さすが、クラト公子。
詳しく話さなくても、察してくれる能力が高い。
「だから、シン王子には、私たちを訪ねる目的が明確にあったんです。でも、クラト公子は、そこがよく分からなかったので、何かあるんだろうなと。」
「人の親切は素直に受け取っておくべきじゃないか?」
「親切をするのにも、ちゃんとその人なりに理由があるんですよ。」
クラト公子は、私たちの方を見て、大きく息を吐き、両手を顔の横に挙げた。
「俺の負けだね。」
「言っておきますけど、勝負なんかしていませんから。」
「そうだったな。」
やれやれといった様子で微笑んだ。
まぁ、逃がしはしませんけどね。
「それで?」
「え?」
「私たちの見極めはどうだったんですか?合格ですか?」
「今更、そこを気にする?」
「勝手に見極めをしようとしたんですから、教えてくれてもいいのでは?」
クラト公子は、言いよどむが、私はじっとクラト公子を見つめる。
「はいはい。合格じゃないかな。」
「ありがとうございます。」
無事、シン王子の親友に合格をいただいたことにより、プティテーラでより動きやすくなったのでは?と思った。
それに、クラト公子には、聞きたいことが出来た。
今度は、私がクラト公子にお願いする番かな。
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