176話 クラト公子の思惑はなんでしょうか?
「あの…ここまで来てもらって申し訳ないんですけど…」
「もしかして、引き受けてもらえない?」
引き受けるも何も…
「いえ。そういうわけではなくて。実は、私のちょっとしたミスで、シン王子とアルビナ令嬢の婚約がうまくいくまでのお手伝いをすることを、シン王子と約束しているんです。」
「え?」
「なので、クラト公子にわざわざ来てもらってしまい申し訳ないんですが、すでにそのことは依頼を受け済みというか…今日もそれで出かけようと思っているんですよね。」
そう。
クラト公子に頼まれるまでもなく、その話はすでにシン王子と約束済み。
昨日までナトゥラにいて、月の約束について、それとなく考えてみたけど、最終的に行き詰ってしまったため、今日はカナリスを観光がてら、手がかり探しに出ようと思っていたのだ。
それにしても、なんでナンナル王子は、そのことをクラト公子に伝えなかったのだろう。
「どこに行くんだ?」
「カナリス観光をしながら、大きい図書館があると聞いたので、そこに行こうかと。」
「あぁ、太陽の街シャムスだね。」
公共の街として、広場や、図書館といったものが多くあるみたいで、規律のある街とガイドブックに書いてあった。
「そうか…」
「はい。結果的には、クラト公子のお手伝いにもなるのではないかと思います。」
「ふーん。」
「クラト公子?」
「俺がカナリスを案内しようか?」
はい?
またこのパターン。
王族や貴族の人たちは、どうしてこうも自分を安売りするのだろうか。
案内なんてさせられるわけないでしょ。
シン王子の時だって、すごく、すごく、すごく断りたかったんだから。
「いえ…そんな悪いですし。」
「俺がいいって言ってるんだし、良くない?」
良くないです。
「でも、俺もお願いしに来ている立場。俺の方も手伝ってほしいんだよね。」
「それは、シン王子のお願いを解決すれば、クラト公子の方も解決するのでは?」
「俺の方も同時に解決してほしんだよ。むしろ、俺との婚約がなかったことになるくらい、シンとアルビナ嬢の方が盛り上がればいいと思うんだよね。むしろ、そういう感じにしてほしい。」
なかったことにするのは、もう無理じゃないかな…
噂って、公共の電波を垂れ流しにしているのですか?というほど速いスピードで浸透していくし…
「社交界は、新しく珍しいものが好きでね。そういう話題が出ると、今までの話題は、どこかに行ってしまうことが多いのさ。そして、幸いなことに、王子と令嬢の婚約破棄は、まだ広まっておらず、俺とアルビナ嬢のことも、まだ広まっていないんだよね。」
そうなんだ。
案外プティテーラは、情報が回るのが遅いのかな。
「シュルーク家は、アルビナ嬢が拒否をして情報が止まっている。そして、アリファン家は恐れ多くて、そのことを口にするものがいないんだよね。」
「シュルーク家とアリファン家は、仲が良く相性がいいと聞きましたが。」
確か、ナンナル王子の情報だった気がするけど…
「確かに、太陽の一族と火の一族は元々、仲も相性もいいけど、現在の火の一族は、もめごとは、出来るだけ回避したいという意思が強いんだよね。」
「もめごと…ですか?」
もめごとは、誰でも回避したいと感じると思うけど…
「そう。だから、こんな所で次期王になるシンや月の一族と揉めるなというのが、火の一族の意思なんだよ。」
「…クラト公子は、ナンナル王子やシン王子と仲がいいのでは?」
「俺はね?でも、火の一族は俺だけじゃないでしょ?」
どうして、こんなに一族の話が出るのだろうか。
そういえば、プティテーラの一族の話は聞いたけど、詳しいことは知らないな…
そして、今回、クラト公子は個人のお願いというより、火の一族のトップとして話に来ているということ?
でも、さっきは、シン王子とアルビナ令嬢のことを思っての発言だったし。
この人は、どういうつもりで私たちのところに来て、私たちに何を頼みたいのだろうか。
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