174話 VSシュルーク家に備えて
口は禍の元とよく言うが、まさにその通りだと思う。
恋愛相談って、あくまでも最終的には、本人たちの問題だから相談に乗れるのであって、最後まで責任をもってと言われると、神様じゃないし、そんなの無理では?
というか、最後までってどこまでなんだろう。
「あの…最後までって…」
「それはもちろん、成就までだろう?」
それは、神のみぞ知る領域に入っています。
一般人の私には無理なのでは…
「俺は、諦めるつもりはないからな。」
あー…
なるほどね。
何度もトライするということかな?
シン王子とアルビナ令嬢の婚約が正式なものになるまで、私はコスモスに帰れないということだね?
「今からアルビナ令嬢に謝りに行っては?」
「それは無理だな。」
なんでよ。
お互いの喧嘩なんだから、謝ってどうにかしなよ。
「謝っても、婚約はできないからだ。」
…まさか。
「月の約束が果たせていない。」
頑固だった。
「それに、シュルーク家が痺れを切らした結果、今回の婚約破棄だ。シュルークを納得させないと、どのみちアルビナとの婚約は成立しない。」
「一理あるだろうな。あの様子だと、シュルーク家を抑えていたのは令嬢で、他はクラト公子に傾いていると言ってもいいかもしれない。」
シン王子の話に、まさかネロが乗るとは。
こういうお家騒動って、王家の血を争うものだと思っていたけど、シュルーク家は、王族の血が欲しくないのだろうか。
「しかし、今日は遅いしここまでだろうな。」
「え?」
いろいろ物事が起きていて全然気が付かなかったが、あたりは真っ暗になっていた。
そう言えばそうだ。
私たちって、今日ナトゥラから帰ってきて、そのままセレーネギアに来たんだっけ。
そのことを思い出すと、体のほうにドサッと疲れがくる。
「では、私とネロは、宿泊施設にいったん帰ります。」
「水馬車を用意しよう。」
今回はシン王子の厚意に甘えさせてもらおう。
セレーネギアとアルカンシェルが近くにあるとはいえ、歩いて帰る元気は残っていない。
しかも、近いと言っても、隣接しているだけで、歩いたら結構時間がかかる。
「ありがとうございます。」
水馬車が到着し、私とネロは、水馬車に乗り込む。
シン王子とナンナル王子に見送られ、セレーネギアを出た。
王子二人にお見送りされる経験なんて、ないだろうなぁ。
ボーっとしながらその様子を眺める。
水馬車は、安全運転で乗り心地は抜群だ。
ネロの方を見ると、体がゆらゆら揺れていて、とても眠そうであった。
そういう私も、いまにも目が閉じそうで、気を抜くと眠ってしまいそうだった。
何とか眠らずに、私たちの宿泊施設につく。
私は、半分眠っているネロを抱き上げ、水馬車を操縦してくれた男性にお礼を言って、水馬車を降りた。
宿泊施設に入り、少し早足で自分たちの部屋へ駆け込んだ。
ネロをゆっくりと、部屋のベッドに降ろして、私もベッドに倒れこみたい気持ちをぐっと抑え、シャワールームに入った。
ここで寝たら死ぬ、ここで寝たら死ぬ。
自分の中で呟きながら、眠気と戦い、シャワーを終えて、ベッドの方へ。
念願のベッドに飛びつきたかったが、ネロが寝ているため、今回は我慢。
そういえば、私より早くネロが寝るのって珍しいよね。
いつも、私が寝落ちして、朝起きるとネロが文句言うという流れが出来上がっていたのに。
よほど疲れていたのだろうか。
私は、ネロを観察すべく、寝顔をじっと見つめる。
ネロの寝顔なんて見たことなかったけど、可愛いな…
視線が煩わしかったのか、ネロは、うぅっと唸って、寝返りを打つ。
私は、ネロの頭をそっと撫でた。
「いつもありがとう。明日もよろしくね。」
面と向かって言えない感謝の言葉をネロが寝てるのをいいことに言ってみた。
でも、やっぱり照れくさいけどね。
「おやすみ、ネロ。」
でも、こういうのは、最後まで起きていた人の特権だよね。
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