169話 ナンナル王子は一枚上手でした
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「兄さん…」
ナンナル王子が、兄さんに嫌われたかもと言った瞬間、ダムが決壊したかのように零れ落ちる涙。
そして、涙は、そのまま垂れ流し、泣き顔を隠すことなく堂々と泣いてらっしゃる。
凄い…男らしい泣き方というか…なんというか。
ナンナル王子が、シン王子のことを大切に想っているのは分かったけど、ここまでとは。
ナンナル王子って、お兄ちゃん大好きっ子だったんだね。
そして、ラックさんも文句を言いつつも、シン王子のことは大切だったと…
「ナンナル王子…とりあえず、涙を拭きましょう。」
「泣いていない。」
泣いてるよ。
なんで、そんな嘘をつくの?
むしろ、涙で目の前、何も見えないだろうに。
「あの…何かできることがあれば、私たちも協力しますので、とにかく話を聞かせていただきたいのですが…。」
「ほんと?」
私の言葉に、ナンナル王子は、急に明るく、ぱぁっと花咲く笑顔で私を見てきた。
え…?
「ほんとに?助かる。俺たちだけじゃ、ダメかもしれなくてさ。なぁ、ラック。」
「あぁ、シンもアルビナ嬢も話を聞かない。」
急に雰囲気が変わりましたけど?
ナンナル王子は、さっきまで、壊れたラジオだったよね。
ラックさんは、床いじいじマンだったよね。
「騙しました?」
「いや、兄さんに嫌われたかもしれないのは、今思い出しても、泣けてくる。今夜は、絶対にへこむし寝込む。」
「俺は、シンが荒れると八つ当たりが…」
「そう言いつつ、ラックも兄さんのことが好きだから、結構へこんでいたくせに。」
「うるせぇ。」
やっぱり、この王子は、元気だったし、私が言っていたことは、はっきり理解していた。
「涙は仕込みですか?」
「泣いてない。」
…なぜ、そこは頑固なの?
泣いてはいたから。
涙出ていたから!
あぁ…ナンナル王子の頬っぺたを摘まんで伸ばしてやりたい。
「やられたな。」
「やられたというか、心配するよね、普通。」
「お前、帰ろうとしていたけどな。」
「何かヤな予感がしたんです。」
まさに、こんなヤな予感がね。
「それで?何があったんです?」
「ごめんね。そんなに怒らないで?」
「怒っていません。」
「あははは…」
笑って、ごまかさないでください。
「それで、なにがあったんだ?」
あまりにも話が進まないため、ネロがナンナル王子とラックさんに問いかけ始めた。
「あぁ、兄さんは、ナトゥラに視察という名目でよく行くんだけど…」
「週五のやつですね。」
「多いときはね?それでね。そろそろ、兄さんとアルビナ嬢は、婚約という形を正式にしなきゃいけないんだけど、それをしていなくてね。」
ちょっと、待って。
「正式な婚約者ではないんですか?」
「世間も二人の婚約は周知しているんだけど、実際の手続き上は、口約束で止まっているんだよ。それで、アルビナ嬢側…シュルーク家が、正式な婚約をしないのであれば、別の相手を用意すると言って、白羽の矢が立ったのがクラトというわけ。クラトは、火の一族の代表の家だし、そもそも、太陽と火の一族って相性がいいんだよね。」
あぁ…
「でも、シン王子とアルビナ令嬢の婚約って、両家納得の元だったのでは?」
「そうなんだけど、いつまでたっても正式に婚約を果たさないし、兄さんはナトゥラで遊び歩いていると思われてるしで、シュルーク家が痺れを切らしちゃったという感じかな。」
「なんというか…クラト公子は、完全にとばっちりですね。」
なんか…
ドンマイという感じだね…
「じゃあ、まずいじゃないですか。」
「なにが?」
「クラト公子は、アルビナ令嬢に手を出したわけではないんですよね?」
「そうだよ。むしろ、兄さんとクラトは親友で、兄さんの話によく巻き込まれていたんだから。」
あら、被害者仲間だ。
って、そうじゃなくて。
「シン王子、凄い顔して出て行きましたけど、向かったところってクラト公子のところでしょ。止めないとまずいのでは?」
「いや、兄さんが向かったのは、クラトのところじゃないと思うけど。ねぇ、ラック。」
え?
「そうだな。違うと思うぞ。」
じゃあ、あんな顔をしてどこに向かったというのだろう。
「まさか、シュルーク家に乗り込むつもりで…」
「それも違う。」
じゃあ、どこなの?
「多分、アルビナ嬢のところじゃないかな。」
……
それは…
アルビナ令嬢とシン王子。
この状況で、二人にして大丈夫なはずないよね。
あぁ、シン王子がサクッとやりに行こうとしたのは、アルビナ令嬢ということですか?
いやいや…
冷静な話し合いをしに行ったかもしれないしね…
…いや、ないな。
「…それは、シン王子を止めないとまずいのでは?」
「あ…」
ナンナル王子は、思い出したかのように顔が青ざめていく。
やっぱり、事件のにおいが消えないんですけど。
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