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168話 逃げ出すタイミングは大事


静かに、でも分かりやすく動揺していたシン王子を見送り、案内所の中には静寂が訪れる。

訪れると言っても、あまりの怒涛の出来事にナンナル王子とラックさんが機能していないだけなんだけど。

いつまでボーっとしているんだろう。

そんなことをしていていいのだろうか?


「あの…」


無言のまま私の声…音の鳴る方へ首を回すナンナル王子。

怖いけど、なんかおもろいな。


「シン王子、どこかに行っちゃいましたけど、いいんですか?」


シン王子が、クラト公子の名前を聞いたときの冷え切った室内。

クラト公子のところに殴り込みになんて行ってないよね…

いや…もしかしたら、クラト公子をサクッとやりに行った?

アルビナ令嬢と言い合いをしている時に思ったけど、シン王子って、案外ガラが悪いというか…

さすがに、アルビナ令嬢もなかなかのガラの悪さだったし、女性ということもあって、シン王子が手を出すことはなかったけど。

なんとなく、クラト公子になら、あ、やってしまった。みたいなテンションで手が出てそうというか。

クラト公子、無事でいてくれ。


「え…?」


そして、ナンナル王子は大丈夫か?


「え、じゃなくて…シン王子、行ってしまいましたけど…?」


シン王子が出て行った方に指をさし、ナンナル王子に向かって言う。


「兄さんが…出て行った…」

「シン王子がここを出る時、すごい顔をしてました。このまま放ってお…い??」


扉の方を見ながら話し、反応がないためナンナル王子の方を向いて、私はギョッとする。

な、泣いてる?

いや、辛うじて、まだ涙は一滴も落ちていない。

目のところ、水分が凄いことになっているけど…


なんで?

そんなに怖かった?

シン王子、確かに怖かったけど、ナンナル王子は、見慣れてるんじゃないの?

助けを求め、ラックさんの方を向くと、ラックさんは、床に体育座りをして、指でひらがなの「の」の字を書き始めている。

だから、なんで?

さっきまでの兄貴というキャラをどこに置いて来てしまったのですか?


ラックさんは、ダメだ。

戦力にならない。

再びナンナル王子の方を向き、刺激しない様に様子を見る。


「にいさ…おれ…にいさん…」


壊れてしまったラジオのように、兄さんと呼んでいるけど、この方は、本当にどうしたの?

そして、ナンナル王子は、床に崩れ落ちた。


「ナンナル王子!?」

「にいさ…」

「ナンナル王子?ちょっと落ち着きましょうか?深呼吸ですよ?」


おいおい。

目にも光が無くなっているって。

どうしたの、本当に。


「ナンナル王子…?」

「おれ…」

「はい。」

「おれね…」

「はい?」

「……」


え、あれ?

ナンナル王子―。

ナンナル王子がフリーズしたんですけど。


「どうしよう…」

「どうしようも何も、どういう状況なんだ?」


どういう状況って、そりゃあ、床で体育座りをして、指でグニグニしているラックさんと、床に崩れ落ちて、急に虚空を見つめ始めたナンナル王子って感じだけど。


うーん。

ラックさんとナンナル王子も心配だけど…

シン王子も心配なんだよね。

手が出ていないか。


「……帰る?」

「うそだろ…」

「え、だって、ここにいても、やれることないよ。」

「こいつら、どうするんだよ。」

「でもさぁ、シン王子どうするの?」

「この異空間から抜け出したいだけだろ。」


もっともらしいことを言ったら、ネロに図星を指された。

…抜け出したい。

いや…抜け出した方がいいって言ってる。

勘が。

このままいくと、何かまずい気がするって。

何かって、もちろん、私のことだけど?

こんなことなら、シン王子が出て行った瞬間に、シン王子を追いかけて、この空間を出ればよかった。


「ナンナル王子、私とネロは、今日は帰ります。」


いまだにボーっとしているナンナル王子に、挨拶を終えて立ち上がる。

ドアに向かって歩き出そうとしたとき、足首が何かに突っかかり、私は盛大に転んだ。


「チヒロ?」


驚いたネロの声。


え?

なに?


足首の方を見ると、ナンナル王子が、私の足首を掴んでいる。

とりあえず、足を抜こうとしたら、足をぎゅっと握られる。

ナンナル王子、足から変な音がしてるから…

出来れば離してほしいです。


「わかりました。帰らないので、離してもらっても…?」


そう言うと、納得してくれたのか、手を放してくれた。

…この王子、こっちの話ちゃんと理解できてるじゃん。


「ねぇ…」

「はい。」


ナンナル王子は、顔を上げると深刻そうな表情をしている。

やっぱり、シン王子に何かあるかもしれないってこと?


「俺、兄さんに嫌われたかもしれない。」

「はい????」


もしかして、さっきまで、ずっと、それを考えていたの?

…この弟どうしてくれようか。

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