167話 婚約破棄のフラグは嵐の前兆?
「に、兄さん。ナトゥラから帰ってきてたんだね。」
「あぁ、ナンナル。迎えに来てくれたのか。」
作り笑いのナンナル王子に近づき、シン王子は微笑む。
「え?あぁ、うん。」
「ラックは、いつも出迎えてくれているのに、今日はいないから心配したよ。」
「あぁ、すまん。」
穏やかに話しかけるシン王子に、戸惑ったナンナル王子とラックさん。
「それで?」
「え…。」
「それで?」
「あ…えっと、兄さん、ナトゥラから帰ってきてたんだね。」
「あぁ、今回はチヒロとネロの案内で行ったからな。」
「あぁ…楽しかった?」
「それは、そうだな。」
…圧迫面接?
シン王子は、笑顔なのに、圧が凄まじいというか…
空気が重い…
「…それは良かったね。チヒロとネロもおかえり。ナトゥラは楽しかった?」
ナンナル王子…
なぜ、こっちに話を振る??
絶対に、重い空気に耐えられなくなって、私とネロに話を振ったでしょ。
「た、楽しかったですよ。ねぇ、ネロ。」
「あ、あぁ。」
「それはよかったね。」
私を巻き込まないでいただいても?
「それで?」
ナンナル王子…
シン王子は、話を逸らさせてはくれないみたいですよ。
私やネロに話を振って何とかしようとしないで、この状況を何とかしてください。
シン王子は、いまだに穏やかな笑顔…。
だから、怖いって。
「ラックも今日は外に出てこなかったな。」
「あぁ、すまん、な…。」
「……。」
「ナンナルと話をしていたんだ。」
「ちょ…、俺はラックに任せてすぐ帰ろうとしていたんだって。引き留めたのは、ラックだよね。」
「押し付けようとした、の間違いだろ。」
ナンナル王子とラックさん、お互いへの擦り付け合いが凄まじい。
「…どっちでもいいから、早く言えよ。」
あぁ…
そして、ついにシン王子の堪忍袋の緒が切れるという…
さっきまでは、かろうじて雪山だったけど、今はブリザード。
「あ…」
「あ?」
「アルビナ嬢が別の人と婚約するかもという…」
「……」
「話が上がっているらしくて…」
「……」
「でも、あくまで噂だから。兄さんがそこまで気にする必要はないかもしれなくて。」
ナンナル王子が罪を告白するべく、びくびくしながら告げていく。
「……」
「…兄さん?」
あ、上目遣いだ。
シン王子とナンナル王子の身長差、そして怯えたナンナル王子のせいでいい角度。
こんなことでも考えないと、この空気に凍えてしまう。
だって、ブリザードだし。
「誰。」
「え?」
「だから、相手。誰?」
「あ…」
ナンナル王子、言いにくそう。
それは言いたくないよね…
だって、兄の婚約者が別の相手と結婚するかもしれない…
その相手だもんね。
「誰だ?」
「ク…」
「く?」
「クラト…」
「へぇ…なるほどなぁ。」
重い、重い、重い…
クラトって、クラト公子?
嘘でしょ。
どうしてそうなったの?
そういえば、ナンナル王子とクラト公子って仲が良かったよね。
それは言いたくないわ。
ナンナル王子、しっかり板挟みにされてる。
ドンマイ。
「チヒロ、ネロ。」
「はい!」
「ナトゥラ、どうだった?」
あれ?
急に、いつもの穏やかさ。
さっきまでの作った穏やかではない、自然な表情。
「え…楽しかったです。」
「それは良かった。」
「ありがとうございました。」
「さて、俺は、寄る所があるから帰る。宿泊場所まで送れなくて悪いな。」
「いえ、そんな。」
……
あれ?
さっきまでの雰囲気…
なんで?
気にしていないのかな。
それとも、クラト公子と聞いて、何か吹っ切れたとか?
「じゃあ、またな。」
「はい。また、会いま…いっ!」
い…
いや気にしている…
これは、絶対に気にしている。
だって、振り返りざま、人をさっくりやりそうな顔をしていた…
ただでさえ迫力あるんだから、やめてくれ。
ドアがガチャリと閉まり、私たちは、シン王子が案内所から出ていく様子を見送った。
というか、どこに行くの?
寄る所ってどこ?
まさか、クラト公子のところに乗り込む気じゃないよね?
私は、ナンナル王子とラックさんを見ると、青ざめた顔をした二人がいた。
……え?
これからもしかして、事件でも起きるのでしょうか?
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