166話 修羅場の予感
気球は、シン王子の操縦により、カナリスとナトゥラの壁を越えて、気球を借りた案内所へ下降する。
気球が地面につき、シン王子は私とネロを先に降ろしてくれた。
刻印を抜き、シン王子も気球から降りて、近くに気球を括り付ける。
「ラックがいないな。」
「いつもは、いらっしゃるんですか?」
「あぁ、文句を言いながら、その辺にいるんだけどな。」
あぁ…なんかイメージつくなぁ。
ラックさんが、シン王子にぶつぶつ言いながら、気球を片付けている姿が…
「…案内所の中に行ってみるか」
「え…はい。」
あまりにも真剣な顔をするシン王子に驚きつつ、私とネロはシン王子について案内所の中へ向かう。
そんなに出迎えがないことが、おかしいのだろうか…
確かに、想像はつくんだけど。
「いたぁ…」
なに?
考えていたところ、目の前にシン王子が立ち止まっていて、そこに激突したらしい。
「シン王子?」
立ち止まって何しているんだろう…?
扉のところに耳を寄せてみる。
「兄さんはまだ帰ってきてないよね?」
「あぁ、まだだが…」
聞いたことある声が聞こえる。
この声ってラックさんと…
「ナンナルが来ているな。」
ナンナル王子…?
「いつも来られるんですか?」
「まさか。俺は、多いときは、週五でここに通っているんだぞ。」
えぇ…
週五って。
学校ですか?
それ、宮殿にいるよりも長いんじゃ…
「なんだ…多いときはと言っているだろう?」
ほんとかな。
「それに、やることはやっているから、誰も何も言わない」
それは、もう諦められているんじゃ…
「それにしても、ナンナルはこんな所に何しに来たんだ?」
「何かあったんじゃないか?」
「何かって?」
「それは知らないが、いつも来ない第二王子が第一王子に会いに来ているなんて、何かあったとしか思えないだろ?」
そうだけどさぁ。
ネロが不穏なこと言うから、シン王子が黙っちゃったじゃん。
シン王子を横目に見つつ、また耳を澄ませる。
「兄さんが来たら、ラックが何とかしてよ。」
「…嫌だ。」
「じゃあ、どうするの。こんなこと兄さんが知ったら大変じゃん。」
「…そうだが。」
「でしょ?ラック、お願い。」
…ん?
何の話をしているんだろう。
なんか、話の流れだと、シン王子に何かばれてはいけないことがあるみたいな…
この状況、ダメなんじゃないかな。
だって、シン王子、話をがっつり聞いちゃっているんだけど。
シン王子の方を見ると、表情が消え落ちていて怖い…
私は、さりげなくネロの足を捕まえて、抱え込む。
「お前な…」
「だって…」
ネロは、足を掴まれたことに驚き、私の肩をペシっと叩いた。
「だけど、バレないなんて無理じゃないのか。」
「しばらく黙っていて、その間に何とかするんじゃん。」
「何とか、なんてなるのか?ならないだろ。」
「でも、こんなの兄さんが知ったら…」
「それは、そうだが…」
…なんか、本当に何かあった臭いぞ?
ネロの言っていたことが、本当になっているっぽいぞ。
ナンナル王子とラックさんの話し方が…
「分かった。じゃあ、こうしよう。」
「なんだ…」
「取り合えず、兄さんがセレーネギアに帰ってこない様に、ラックが足止めしといて。」
「何が、分かった、だ。何もわかってないだろ。さっきと何も変わってない。」
「でも…だって、言えないじゃん!アルビナ嬢が、別の人と婚約するかもなんて。」
え…今なんて?
シン王子の方が見られないんだけど。
スゥーーーーーーーーーーーー。
隣から大きく深い息を吐く音が聞こえる。
ひぃいいい。
扉に手をかけて、ガチャリと開ける。
嘘、この中に入っていくの?
「ナンナル、来ていたんだな。」
シン王子。
笑顔が怖いよ。
ナンナル王子とラックさん、顔が引きつっちゃっているって。
この状況…
プティテーラは、修羅場が多いのでしょうか。
修羅場は、お腹いっぱいなんだけど。
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