16話 空気を読んでたら、要求を通せない場合どうしましょう
「事情と言いましても、故意に不法入界したわけではなくてですね。元居た世界にて、旅行サイトで、旅行先を探していたのですが、間違えてコスモスのサイトにつないでしまい、おいしい広告文句に誘われて登録したら、いつの間にかここにいました。」
懺悔するように、言葉を吐いていく。
だって、なんでこんなに怖い雰囲気なの?
「正直!コスモスのサイトを旅行サイトと思ってたので、こっちで仕事がしたいとかそういうのが目的だったわけじゃないんです!異世界っていうのも、こっちに来て初めて気が付いたんです!!」
今度は、勢いとパッションで乗り切ろうとしてみる。
駄目か?駄目なのか?
やっぱり、牢屋ライフが待っているのか?
「事情は分かったよ。それで、何かお願いがあるって聞いたけど」
お願い…
もしかして、フェリシアさん、この状況で交渉しようとしてるの?
いくら何でも、無理でしょ
やだやだムリムリムリ!!!
「お願いというのは、身分を証明するパーソナルカード、あと観光部で働くために、旅行者ライセンスを作っていただこうと思って」
言ったよ、まじぃ?
ほらぁ、部屋の温度が下がったよ!
「フェリシアさん、あの…」
フェリシアに声をかけると、にっこり笑い返してくれる。
あ…、これ安心していいよ?の笑みじゃないな
このままだと借金だけどいいの?の笑みですね、これは。
働けないと契約しても意味ないから、違約金が発生してしまうのか。
「フェリシアさん、パーソナルカードは身分を証明する大事なカードです。どこ人とも分からない方に、簡単に渡せません。コスモスで身分を保証したってことは、何かあったとき、コスモスの責任になります。それに、旅行者ライセンスもそうです。異世界とのつながりを主としているのに、簡単に渡せるわけないですよね。」
ジェフティさん、さすが民間部という感じです。
いたって普通のこと言ってる気がして、反論できない。
「こいつの出身は、ティエラ(地球)だ。コスモスとティエラ(地球)は、ゲートをつないでない。デゥールに何らかの不具合が出たんじゃないのか?じゃなきゃ、今現在、魔力を持たないこいつに、異世界を渡るなんて無理だと思うが。」
ネロ!!
「昨日、デゥールで不具合が出たって報告は、聞いてないな。しかも、デゥールに関わっているのなら、彼女の履歴はさすがに残ると思うけどな」
「でも、実際にチヒロちゃんは、世界を渡ってここに来ているんですよ?」
………
どうしよう。
話にどう入っていけばいいか分からない。
「じゃあ、やっぱり何か企んでるから、魔力隠してこっち来たとか?」
「魔力なんて持ってません!」
「じゃないと、こっちに来る方法なくない?」
美しく笑いながら、私を見てくるアスガルさん。
「アスガル」
「なぁに?ネロ」
「お前の目なら、今現在は魔力がないのわかってるだろ」
「へぇ、ネロ。君が他人に興味持つなんてね」
「うるさい、分かってることを、とやかく言ったところで意味ない。」
「ふーん、そういうことにしておこうか」
ネロとアスガルさんって仲悪いのかな?
仲悪いっていうか、馬が合わないのか、それとも猫が合わないのか。
「ほかに何か手掛かりはないのか?」
オーロックさんに問いかけられたので、もう一度、転移する前の状況をゆっくり思い出す。
旅に出たいって思って、旅行サイトで旅行先を探してたら、食いつくしかないって思えるような広告が出てきて、そこに触れたら、名前と服装とか容姿とか聞かれて、入力して、登録ボタンを押したら、光に包まれてて…
「あ、入力が完了しましたっていう音声が流れ続けてました」
「どんな」
私がぼそっと言った言葉に反応して、その場にいた人たちが私のほうを見る。
「どんなって、こう、声高めの音声案内、みたいな?」
えへへとごまかすように笑ったが、周りはいたってまじめな空気である。
話について行けない!
でも聞ける雰囲気でもない。
「これは、イブが影響を及ぼした可能性あるねぇ」
「イブのシステム履歴を見たほうがいいかもしれないな」
イブって?
システムってことは、また複雑な何かなのかな。
ついて行けないので、一人で考察を始めると、入り口のドアが開いた。
「それには及ばないな。」
低めのイケメンボイスの声がする方を振り向くと、そこにはイケおじが立っていた。
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