163話 王子もネロも早起きです
ん…
「んーんー!」
ん?
何か聞こえる…
「んーん!!」
ネロの声?
ゆっくりと目を開けると、腕の中に何か…
「んー!!」
え…
ちょ…ネロ?
私は腕を解くと、ネロは勢いよく上に飛ぶ。
「お前、殺す気か!」
「あ…え…?」
「え?じゃない。お前がいつまでたっても起きてこないから、起こしに来たら拘束されたんだよ。」
起こしに来たって…
「俺は、一度起きて下に行っているんだ。すでに王子様も起きて下にいるぞ。」
「うそ!」
「ほんとだが?」
「私、待たせてるってこと?」
「そうだが?」
ひぇ…
それはまずい。
「おはようございます。お待たせしてすみません。」
「別にいい。それより、よく眠れたか?」
急いで一階のリビングに降りると、そこには本当にシン王子がいた。
この人は、寝たのだろうか。
昨日は、私よりも後に寝たんじゃないかな。
「はい。ベッドが気持ちよくて、ぐっすりでした。」
「それは良かった。ネロは…大丈夫か?」
後から降りてきたネロは、若干ぐったりしている。
…ごめんね。
抱きしめて寝ていたんだけど、ちょっと力が入り過ぎたらしい。
危うく抱き潰すところだったのをネロのうめき声で目を覚ました私…
わざわざ起こしに来てくれたというのに…
「平気だ…」
そう言いながら、ネロは思いっきり私をにらんできている。
あははは…
ごめんって。
「平気ならいいが…。朝食は簡単で済まないがあるぞ。食べるか?」
…この人本当に王族として、今まで生活してきたのだろうか。
それとも、ナトゥラの生活に慣れ過ぎているのだろうか。
テーブルの上には、カップスープ。
「いただいてもいいですか?」
「分かった。」
「シン王子は、食べられたんですか?」
「あぁ、俺は早く目が覚めたから、先にいただいた。悪いな。」
「い…いえ…。」
むしろ待たせてしまってすみませんでした。
「あれ?ネロは食べたの?」
「俺は、王子様と一緒に食べたんだよ。お前が起きるのを待っている間に。」
「あー…」
ネロがジトっとした目で見てきたため、私はそっと顔を逸らすと、目線の先でシン王子は立ち上がり、キッチンの方へ行こうとしていた。
「シン王子。私、お湯沸かしますよ。」
「沸かすだけだし、大丈夫だが?」
「いえ、やらせてください。」
さすがに待たせていたのに、やって貰うのは…
私は急いで、キッチンの方に向かい、ポットに水を入れて火にかける。
シン王子とネロ、二人で朝ごはん食べたのか。
どんな感じだったんだろ。
気になる。
キッチンからそっとリビングの方を覗いてみると、シン王子とネロは仲良さそうにおしゃべりをしていた。
コポコポとした音が聞こえてきたので、覗きをやめてポットの傍に行き、火を止めた。
それにしても、今ここには材料がないけど、あったとしたら、朝起きたら出来立ての朝食が並んでいた可能性あるな。
シン王子、それくらいやりそう。
パーティであった時は、王族だなと思ったけど、案外家庭的なのかな。
お湯をカップに入れてリビングテーブルの方へ戻る。
「今日は、湖と小さな海を見る。湖は大きい。気球の上から見よう。」
私は、スープをすすりつつ、シン王子の話を聞く。
…どんな状況という感じだけど、シン王子の食べないのか?という目線に耐えられず、食べながら話を聞くという何とも言えない感じになってしまった。
確かに、私だけ食べていないわけだから、私が食べないと次に進まないというのは分かるんだけど。
……今度から早起きしよう。
私は、出来るか分からない決意をした。
ナトゥラの水が全て集まる場所。
いわば終着点だと思うんだけど、じゃあ海はどこにあるのだろう。
「湖の中央に海がある。」
「え…?」
「見ればわかるさ。それより、食べ終わったか?」
カップの中は空っぽ。
「はい。」
「食後の休憩はいるか?」
「平気です。」
さすがに待たせてしまっている分、ここはスピーディに。
そのうち、消化するでしょ。
「じゃあ、出るぞ。」
「今日もよろしくお願いします。」
私は、シン王子に続き、一日お世話になったコテージを出た。
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