159話 地球の文化を思い出しました
梯子を登りきると、小さな空間。
屋根裏部屋…にしては綺麗だけど。
あたりをキョロキョロと見まわす。
「面白いものがあるな。」
ネロの方に行ってみると、そこはベランダのようなところ。
「望遠鏡?」
「あぁ。」
「結構大きいね。」
「かなり遠くまで見えるんじゃないか?」
この大きさの金属の塊をよくこの木で出来た家の中に作ったな…
「覗いてみていいぞ。」
望遠鏡を二人で観察していると、後ろからシン王子の声。
言われた通り、そっと中を覗く。
「わぁ、月が見える。」
「地上の方だと、アルトゥンの端まで見えるぞ。」
「え?動物見えますか?」
「もしかしたら…な。」
今度は、望遠鏡を地上に向けて覗いてみる。
アルトゥンは、確かこっちの方だったはず。
……
暗くて見えないんだけど。
私は、シン王子の方を向くと、シン王子は口元を抑えて笑いを堪えている。
そして、猫ちゃんは笑いを堪えずに笑っている。
馬鹿にされてる…
そして、騙された。
「騙しました?」
「俺は、見えるかもなって言ったんだ。」
そうだけど…
見えるも何も、見えないから。
暗すぎて。
はぁーあ。
私のワクワク心を返してほしい。
クシュ
うー…寒くなってきた。
水辺の近くだし、夜は涼しくなるみたいだ。
「風邪をひく前に、中に入るぞ。」
「はい。」
梯子を下りて、リビングに戻る。
そして、なぜか机の上には、食べ物が並んでいる。
あれ?
冷蔵庫には、何もなかった気が…
「言っただろ。ナトゥラは、一日では回り切れないだろうと。冷蔵が必要ない物を買ってきておいた。」
この人、本当に配慮の鬼。
そしてよく見ると、これはお湯で温める系の…カップ麺!
神!!
このジャンキーな味、時々食べたくなる味なんだよね。
まさかプティテーラに来て、食べることが出来るなんて。
「お湯を入れてしばらく待てば、出来上がる。」
やっぱり。
シン王子が、カップ麺を食べることに驚きだけど、私はすごく嬉しい。
ルンルンしながらお湯を沸かし、ルンルンしながらカップにお湯を注ぐ。
「そんなにお腹すいていたのか?」
食いしん坊のネロに引かれるレベルで、私は浮かれていたらしい。
危ない、危ない。
出来上がりを待って、ふたを開ける。
そうそう、この感じ。
私が選んだものは、カップ麺の魚介ラーメン。
ネロも同じものを選んだみたい。
シン王子は、カップ焼きそば。
出来上がりをそれぞれ待って、仕上げに粉やスープの素を入れる。
「3つとも出来たな。食べるか。」
シン王子がそう言ってくれるので、私は手を合わせて、いただきますと言った。
麺を取って、口に運ぶ。
ツルツル、コシコシの麺に、カップ麺特有のジャンキーな味。
うー…おいしい。
それに、魚介が有名なだけあるな。
魚介スープが濃くておいしい。
ふと、視線を感じ、顔を上げる。
ネロは、同じく夢中でカップ麺をすすっている。
シン王子の方を見ると、不思議そうに私の方を見ていた。
「食べないんですか?」
「あぁ…いや。いただきますって何だと思って。」
あぁ…
いただきますって日本の文化なんだっけ?
今は、どうなんだろう。
地球では、言われているのかな。
「いただきますは、私が住んでいた所の文化で、つい言ってしまいました。」
「どんな文化だ?」
「いろんな意味があるみたいなんですけど、食べ物をいただく…つまり命あるものをいただく。命に感謝していただきますと言います。他にも、料理が出来上がるまでに、いろんな人が関わっているんですけど、その人たちに感謝を込めて。と小さいころに教わるんです。改めて聞かれると、ただ癖がついてしまっただけとも言えるのですが…」
いただきます。
確かに、意識しなくても口から出てしまっていたな。
当たり前のように、ご飯が出てくる環境だったからかな。
ありがたみを感じなくなってしまったみたい。
「へぇ、面白い文化だな。」
「いや…癖で口から出ただけです。」
「それだけ言い続けたってことだろ?」
確かに。
小さいころから言っていた言葉かも。
無意識になってしまった言葉。
食べる行為でこんな些細なことに気づかされるなんて思わなかったけど、文化の違いがあるからこそ、気づけたことなんだろう。
心の中で再びいただきますと唱える。
今度は、少しだけ意識して感謝を込めて。
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