156話 エメラルドグリーンの芸術
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「着いたな。」
え?
どこどこ?
気球から身を乗り出し、下を覗く。
そこにあったものは、いくつもの湖と滝。
水は、透き通ったエメラルドグリーン。
そして、エンゲルストラートやアルトゥンの岩肌と違った、緑の世界が広がる。
そして、上から眺める湖と滝の集合体は、ナトゥラの半分を占めていた。
エンゲルストラートやアルトゥンも大きかったけど。
そういう規模じゃないな。
とにかく広大。
でも、激しさがある訳ではなく、透き通るような静けさがあった。
まるで、芸術品だな。
「ここは、アクアルテ。上からだと分かりやすいが、ナトゥラの半分ほどを占めている湖と滝の集合体。さらに、緑に囲まれた自然の土地だ。」
ここまで凄いと言葉が出てこない。
新人とはいえ、観光職員としてまだまだだな。
「あれ…もしかして、道みたいな物がありますか?」
「正解だ。ここは下に降りられる。そして、湖や滝を見て周るための道がある。」
湖の上に道があり、本当に近くから見ることが出来るんだと思った。
「現在、大小合わせて24の湖と150の滝がある。」
上から見ても、湖や滝の数が多いのが分かるけど、そんなにあるんだ。
「せっかくだし、降りるか。」
「はい。」
シン王子は、私たちに声をかけて、ゆっくりと気球を降下させていく。
王族なのに運転うまいな…
手慣れているというか…
シン王子の気球の操縦技術に少し疑問を持ちつつも、下に降りて間近で見るアクアルテに疑問も吹き飛ぶ。
湖のエメラルドグリーンを覗き込むと、生き物が泳いでいた。
「ここには、エンゲルストラートやアルトゥンとは違って、生き物がいるんですね。」
「あぁ、魚などの水の生き物もいるし、動物もいるぞ。」
動物?
「鳥類や、クマ、オオカミ」
クマ、オオカミも出るの?
危なくない?
「オオカミやクマの生息地はアクアルテの上の方。世界を包む滝の流れ初めあたりで目撃されている。世界を包む滝付近は、危険だから基本立ち入り禁止なんだよ。上から落ちられても困るしな。」
そうだったのか。
残念。
怖いものは怖いけど、オオカミって見たことないから、見たかったなぁ。
再び、アクアルテの湖を覗き込み、ふと疑問が浮かぶ。
私は、世界を包む滝を見上げ、首を傾げた。
「どうかしたか?」
「いや、アルトゥンもエンゲルストラートも世界を包む滝から流れ落ちていますよね。それなのに、ここまで水が透き通るようなエメラルドグリーンじゃなかったなぁっと。」
「本当にいいところに気が付くな。」
シン王子は、ニヤリと笑う。
「じゃあ、なんでだか分かるか?」
そして、シン王子からの突然のクイズ。
えぇ…なんでだろう。
「ネロは分かるか?」
「光の反射。…もそうだろうが、水の中にいる生物の数が多いんじゃないか。」
「あぁ、聞いたことあるかも。」
海が青く見えるわけとか、理科の授業でやったな。
周りが緑に包まれて、木々が水に反射したり、水の中に含まれている植物が映ったりするんだっけ?
「生物が多いということは、水が含む魔力も多いんだろうな。」
「魔力の量の違い?」
「魔力の元は、気ということはアルバートに教わっただろ。気は、生き物には、存在するものだ。」
「正解だな。本当にお前たちは、可愛げがないし、教え甲斐がない。」
ネロの返答に、シン王子は呆れた顔で文句を言う。
「自然が多くあるところは、生命力が強く、魔力が濃い。手を加えていない世界を包む滝付近は、もっと魔力が濃いな。だから、生き物や動物の生息地なんだろう。」
生き物も、自然豊かな方が生活しやすいってことだよね。
「上の方に行く人たちは、いなかったんですか。」
「いるぞ。生態系を研究している研究者たちは、よく行く。ただ、生態系を崩すことは、プティテーラでは、許されていない。見る分にはいいが、捕えたりした場合は、ばれたら死刑だな。」
…密漁は死刑ってことね。
これから、観光地になるなら、そういう人たちもいそうだな。
この美しい景色が、観光地になっても崩れませんように。
私は、そっと心の中で願った。
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