15話 第一印象ってやっぱり大事
「便利ですね、転送システムって」
「そうね、移動時間も削れるし、空間転移の魔法を得意としている、コスモスならではの生活スタイルじゃないかしら。ちなみに、転送システムのことを“ヴェーダ”っていうのよ。今後、働くうえで出てくると思うから覚えてね」
ヴェーダ
フェリシアさんの説明曰く、
距離は、魔法陣さえ設定すればどこまででも、重量も制限が入ったことはないそうだ。
基本的に、国家内、コスモス内での移動によく使われている。
例外あり。
使い方としては、デバイス(地球でいうスマホみたいなもの)であらかじめ設定していた魔法陣の場所を選択すると、そこの場所まで運んでくれる。
魔法陣は、各自でそれぞれの場所に設定することで、自分の生きたい場所への行き来を可能にしている。
ちなみに直接その場に行って、魔法陣を置かなくても、マップからピンをさすことが可能らしい。
例外あり。
コスモスでは、魔力の力で大体の物を動かしているそうだ。
もちろん、デバイスもマナを使用する。
私の携帯が機能停止していた時に、再び動いたのはネロがマナを流し機能を回復してくれたからだ。
スマホとデバイスが似ていたことから、ネロが、それと使い方が同じだろうと判断してマナを流してくれていたのだそうで。
スマホの使い方が分からないのに、ネロには大変なことをさせていたんだと思った。
コスモスの説明を少しだけど受けることができて、賢くなった気がする。
まだまだ、なにこれという未知のものもたくさんあるのだが。
「さて、ここよ」
立ち止まったところは、両開きの木製ドアの前。
細かい装飾まで掘られているのか、なんか高そう。
フェリシアさんは、そこを何のためらいもなく開けた。
「皆さん、お待たせいたしました」
「フェリシアちゃん、いらっしゃい。お?ネロもついて来たんだねぇ」
部屋の中に入ると、見たことのない人たちが3人いた。
1人は、濃い茶髪のミディアムヘアに黒縁眼鏡をかけた男性。
茶色の瞳。
見た目だけで判断するのはいけないと思うが、とても真面目そうな方だ。
2人目は、クリーム色の髪で前髪をくくっており、おでこを出し、サイドは外はねでやんちゃな感じの男の子。
目とか薄いパステル色の紫できらきらしてて綺麗。
あと特徴としては、身長が小さいかな。
3人目は、髪型は長い金髪を一括りにして、右肩から流している。
瞳は暗いオレンジ色。
綺麗なお兄さんって感じの人。
さっき、フェリシアさんに声をかけた話し方的に、飄々とした人だ。
「さて、一応、話は君たちの課長から聞いているけど、本人の口から状況を聞きたいかな」
この世界の人の笑顔は、圧があって怖いんだけども。
何とか、ならないのだろうか。
「その前に、3人の紹介をさせてください。だれか分からない人たちに話すのは、怖いんですから。ただでさえ、怖いっていうのに。チヒロちゃん、そこに、座って。」
「相変わらず失礼だなぁ、フェリシアちゃんは」
「わりぃな!確かにその方がいいわ!」
「じゃあ、私からでいいですね」
フェリシアさんに促されソファーに座る。
体が、すごく沈み込む、やわらかいソファーだった。
一番初めは、眼鏡の男性。
「私は、民間部・住民課のジェフティと申します」
「民間部ですか?」
「主に、コスモスに住んでいる住民の生活について支える仕事を行っております。住民課は、その名の通り、住人の把握と管理。」
あー…なるほど。
戸籍的な、あれかな。
私が現在持ってないあれだね。
ジェフティさんの顔が怖くて見れないんですが
「次は俺だな!」
そういって、おでこを出した男の子は、立ち上がりにかっと笑った。
「俺は、観光部・渡航課のオーロックっていうんだ。観光部については知ってるだろうから、渡航課について!渡航課は、異世界の行き来の管理や、異世界へとつなぐゲートであるデゥールの管理を行ってる」
おぉぉぉ…
入界審査のやつな!
私がやってないやつだよな!!
やっぱり、オーロックさんの顔も見えない。
この流れきつい…
ちょっと心細くなり、ソファーの背もたれの上で丸まっているネロを捕まえて、膝の上に置く。
ネロはビクッとして声を出そうとしたので、口元に指を添える。
大人しくしててというジェスチャーが伝わったのか、ネロは、私を睨みつけてきた。
「おやおや。じゃあ最後は僕だね。」
最後は金髪の男性。
この人の雰囲気は少し怖いかもしれない。
特に、目が怖い。
全てを見透かしそうな濃いオレンジの瞳。
「はじめまして。僕は、観光部で部長職をしています、アスガル・ビルロストです。」
部長…観光部部長!
…ってことは、上司じゃん!!
「は、はじめまして!有間千紘です!!すみません!よろしくお願いします」
私は勢いよく立ち上がり、自己紹介をしながらお辞儀をする。
その時、ネロを抱えたままだったため、お腹のあたりから、グエッって声が気がした。
「うん、聞いているよ。さてさて、自己紹介も終わったことだし、事情を教えてもらおうかな。」
アスガルさんの言葉と、オーロックさんとジェフティさんの目に、私はネロをぎゅううううううっと抱きしめて、不安を和らげるのであった。
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