14話 新たな決意をしたら、犯罪者になりかけたんだけど
「昨日も、仕事について話したと思うんだけど、チヒロちゃんには宣伝担当をしてほしい。昨日はいろいろあって、しっかり返事を聞けてなかったから改めて。どうかしら?」
元の世界の心配もあったけど、一方的とはいえ連絡は取れた。
これで元の世界に帰れるなら、話は違っただろうけど、結局帰れないみたいだし。
私のことを知らない土地へ旅に出るといった意味でも、ある意味達成している。
これで断ったら、あまりにも居心地のいい部屋とも、おさらばだろうか。
見ず知らずの土地で生き抜くには、正直厳しくないか?
働かず生活するのも結構厳しそう。
……。
それに、ほんの一日しか、関わってないのに、
この場所が居心地いいのである。
時間をかけて、人間関係を形成するって、言うけれど、
例外もあるのかな。
待って。
私ちょろい?
これは、安易な選択じゃないのか?
……
「やらせてもらっていいですか」
私は、まっすぐフェリシアさんのほうを向き、はっきりと告げた。
その言葉を聞いて、フェリシアさんは微笑んでくれたし、アンジュ君アンヘル君はむぎゅっと背中と正面に抱き着いてくれた。
私のことを、歓迎してくれる雰囲気に、ちょっぴり照れくさくなった。
ふと、ネロの様子が気になり、伺うように見ると、ネロと目が合う。
ネロは、当たり前だろとでも言いたげな顔をして、私を見ていた。
ネロの視線に驚いて、慌てて目をそらし、正面のアンヘル君に抱き着き返す。
あの目、心臓に悪い!
猫ちゃんのくせに!
アンヘル君にムギュムギュしていると、背中にいたアンジュ君も正面に来て、おしくらまんじゅう状態。
く、くるしい…
ってか、この二人も力強くない?
抱きついてきてくれたのが、あまりにも可愛くて聞こえないふりしてたんだけど、お二人さん、体がみしみし言ってます。
「ほら二人とも、チヒロちゃん潰れちゃうわよ」
「「わかった」」
フェリシアさん、感謝。
フェリシアさんの声に、二人が私の体から離れていく。
その代わりに、私の両隣にちょこんと座った。
ハイ、可愛い。
「それじゃあ、業務の方に移ってもらう前に、大きな問題があります」
まだあるの?
問題。
むしろここに来て、問題を感じなかったことないんだけど。
「本来だと、世界を跨ぐときは、その世界で決められたゲートを通らないといけないの。コスモスにもそういうゲート、デゥールというのがちゃんとあるのよ。そのゲートでは、誰が国に入ってきたのか、どんなものを持ち込んでいるのかなどの、チェックを受ける。それを、入界審査っていうんだけど。」
へぇ、しっかり管理されているんだなぁ。
地球でもそういうの、あったな。
税関と旅行者がバトルやつとか。
「さて、ここでチヒロちゃん。あなたはコスモスにどうやって入ってきたでしょう。」
スマホの画面で旅行サイト(求人サイトを見ていて)、いい条件に食いつき、何も読まず登録したら、光に包まれ…て…。
あれ?ちょっと待てよ
私、受けてないな、その入界審査
……
地球でもあったけど、もしかして私、不法入国…いや不法入界か
って、そんなこと、どっちでもいいんだけど!
えぇ!?新しい生活頑張ろうって決意したとたん、実は私、犯罪者でしたってまずいでしょ。
でも、私故意にしたわけじゃないし…
より、言い訳っぽいことしてどうする!!
あぁぁぁ、頭ぐるぐるする。
これ捕まるのか?どうしよう!!
逃げるか?いや無理でしょ…
「チヒロちゃーん、聞いてる?」
「私は、罪を犯しましたと言って、自首すればよろしいのでしょうか」
{異世界旅行先は、牢屋でした…
牢屋?住めば都ってよく言うでしょ}
本できそうだな。
牢屋の中で書こうかな、ミリオンセラー目指して。
「チヒロちゃん!」
「はぁあい!!!」
びっくりしたぁ。
えっ、もうなに!?
「チヒロちゃん、話聞いてる?」
「私が犯罪者の話ですよね?」
「フッッ…」
音の方を振り向いていると、ネロが口を押さえて、笑いを必死に耐えていた。
声は漏れてるし、全然耐えられてないんですけど
「チヒロちゃん。ちょっと、落ち着いてね」
「すみません」
「暴走加減が…すごいな…クッ…」
「笑いすぎなんですけど」
少し落ち着きを取り戻した、私は、今にも決壊しそうなネロの笑いに腹を立てる。
あぁ、もう、いいよ!
思う存分笑うがいいさ!
ヤケである
「落ち着いたんですが、私はどうすれば?」
「今回の場合、デゥールに何らかの不具合が出た可能性があるわね。これから働くうえで、いろいろ書類が必要になるし、ということで、まずは外に出て人に、会いに行きます。」
おぉ
異世界に来て、企画宣伝課以外の人と出会うか…
なんか緊張するかも。
「話は通してくれてあるみたい、だから早速行きましょうか。アンジュとアンヘルは、いつも通り、電話対応のお仕事よろしくね。ネロは、私たちと一緒に行くわよ」
「はぁ?なんでだよ」
「いくわよ?」
フェリシアさんの笑顔の圧力により、猫ちゃんが敗北した。
そうして、私とネロは、フェリシアさんについて行き、企画宣伝課のオフィスを出るのだった。
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