145話 シン王子の突然の来訪
気持ちのいい朝。
ボーっとした頭を、体を転がして起こしていく。
頭を起こした後は、体を伸ばし、寝ていた時に凝り固まった体を起こす。
うん。
今日もスッキリ。
今日は、ネロとナトゥラに行く約束をしたし、準備をしよう。
ベッドを見ると、ネロはすでにいない。
相変わらず、早起きだな。
「ネロ?」
洗面所とかかな?
あれ?いない?
どこに行ったんだろう。
疑問に思いながらも、行く準備を進めて行く。
すると、部屋のドアがガチャリと開いた。
そこからネロがフヨフヨと中に入ってくる。
「あ、ネロ。どこに行っていた…の?」
ドアから入ってきたのは、ネロだけではなかった。
疲れ切ったネロの後ろから入ってきたのは…
「シン王子。お久しぶりですね。」
そこにいるのは、なぜなのか…
「おはよう。いい朝だな。」
うわぁ、爽やかな笑顔。
私は、シン王子ににっこりと笑いかけ、ネロを引っ掴みネロに顔を寄せる。
「ちょっと、どういうこと?」
「知らん。」
「知らないってことないじゃん。なんでここに、シン王子がいるのよ。」
「俺が起きたら、そこの椅子に座っていたんだよ。そして、俺は寝起きに連れまわされたんだ。」
うわぁ…
だから、ゲッソリしていたのね。
「起こしてくれれば、良かったのに。」
「女性の寝ている場所にいくのは、ダメなんだと。」
変なところに変なポリシーがあるな。
だったら、女性が泊まっている部屋への侵入はダメなんじゃないの?
紳士なのか、紳士じゃないのか分からない。
「それで、シン王子はなぜここに?」
「だから知らない。」
「外に何しに行ったのさ。」
「朝食を買いに行ったんだ。」
朝食?
宿泊場所では、出ないのだろうか?
「王子おススメの、水団子だそうだ。」
こんな所でお目にかかれるとは。
水団子ってホントにあったんだ。
シン王子が、こんな所にいる理由は結局分かってないってことね。
「何を話しているんだ?」
気が付けば、私とネロは、シン王子を放っておいて、二人でこそこそと話をしていたため、背中の方から聞こえるシン王子の声に背筋が凍る。
「いえ。シン王子に失礼はなかったかと。」
「ネロを朝から連れまわして悪かったな。」
「いえいえ。どんどん連れまわしてください。」
そう言うと、シン王子から見えない背中を、ネロに思いっきり叩かれた。
痛い、痛い。
朝から、よく分からない現象に驚いたが、だんだんこの状況を冷静に考えられるようになってきた。
頭がようやく起きてきた。
この寝坊助さんめ。
「シン王子は、なぜここに?」
そう、これだ。
一番の疑問。
ネロを連れまわすのは最悪いいとして、シン王子はなぜこの宿泊施設にいるのだろうか。
「昨日のお詫びをしに」
「昨日の?」
「お詫びだと?」
翌日に来てもらって、お詫びされるようなことは、別になかったと思うけど。
「相談にたくさん乗ってもらったからな。それに、昨日アルビナに怒られた。巻き込むなと。」
シン王子に頼まれたことは、アルビナ令嬢の様子を見に行くこと。
それを報告出来てなかったな。
アルビナ令嬢からいいとは言われていたけど。
アルビナ令嬢、あの後ちゃんと、シン王子のところに行ったんだ。
「あの後、アルビナ令嬢に会えたんですね。」
「まぁな。」
その報告をわざわざしに来てくれたというのか?
わざわざ?
「それでだな、聞きたいことがあって。」
「聞きたいことですか?」
「あ…」
あ?
「アルビナとは…」
アルビナ令嬢が?
「アルビナとはどうやって打ち解けた?」
え?
どうやって打ち解けたって…
「アルビナ令嬢と普通に話しただけですが…」
「普通に…か。」
え?
なに?
なんなの?
「あのだな…」
「はぁ…」
「俺の話を聞いてくれないか?」
あー…
これが言いたかったことだろうなぁ。
アルビナ令嬢の話を聞いたけど、なんでシン王子がここに来るような事態になっているんだろうか。
昨日の様子から見るに、仲直りしていい感じになる流れだったと思うんだけど。
ネロと顔を見合い、二人で首を傾げた。
そして、これは聞かないといけないのだろうか…
ダメだよね。
「なにかあったんですか?」
私は諦めて、シン王子に問いかけるのだった。
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