143話 パーティの終わり…
アルビナ令嬢から月の約束の話を聞いて思い出したのは、ユオのこと。
「嘘かホントか分からない。その方が、ロマンがあっていい。」
「どうかしたのか?」
「こういう話って、ロマンがあっていいなと思って」
「そうだな」
お、意外。
ネロがこういう話に乗ってきてくれるなんて。
「なんだよ。」
「いや、意外だなと思って。」
私は、ネロを捕まえて、抱き着いた。
「やめろ!なんだ、急に。」
じたばた暴れるネロ。
うんうん。
この反応が癖になってきているんだよね。
すると、私とネロをじっと見て、アルビナ令嬢が微笑んだ。
「仲がいいのね。」
「え?」
「チヒロとネロ。仲がいいと思って。昔から仲がいいの?」
昔から?
「ネロと知り合ったのはここ最近です。」
「あぁ、出会って二カ月は経っていないんじゃないか?」
「そうだっけ?」
そっか。
ずっと一緒にいるから、あまり気にしてなかったけど、そんなもんか。
ネロとは、サバイバルから始まり、ミシュティへ旅行する時も常に一緒だった。
私がこっちに来て、ネロと離れている時よりも一緒にいる時の方が多いよなぁ。
「私は、コスモスに入ったばかりの職員で、ネロは私の教育係なんです。」
「あら、そうなのね。」
意外そうな顔をするアルビナ令嬢に私は首を傾げる。
「二人の関わり方が、ずいぶん違和感がないから、てっきり長年連れ添った仲なのかと思ったわ。」
「こいつと長年連れ添うのは、大変だと思う。」
「ちょっと、どういう意味?」
「絶対に、振り回される未来が見える。」
失礼じゃない?
そんなことしないし。
…しないし。
多分。
「図星だろ。」
「違います。」
ニヤニヤ笑うネロの頬っぺたを摘まみ、ビヨビヨと伸ばす。
そして、アルビナ令嬢はクスクスと笑いだした。
「どうかしました?」
「二人を見ていると、なんだか愉快な気分になるわね。」
……
褒められていますか、それ。
それでも笑い続けているアルビナ令嬢に、笑ってくれたのなら、まあいいかと思った。
「今日は、話を聞いてくれてありがとう。少しすっきりしたわ。」
「いえ、こちらこそ。月の約束という興味深い話を聞けたので。ありがとうございました。」
「そろそろ、パーティもお開きになるころじゃないかしら。」
大広間の方を見ると、人が大きく動いているのが見える。
「そろそろ戻った方がいいかもしれないですね。」
「あら。このまま帰っても大丈夫よ。」
「え?挨拶は…」
「大丈夫。それに、シンの方も私から言っておくから。わざわざ、ここまで来てくれてありがとう。長い間、捕まえたままでごめんなさい。」
ほんとにいいのかな?
パーティの終わりって、正直よく分からないんだよね。
ここはお言葉に甘えていいのだろうか?
「帰るか。」
ネロが帰りを促してきた。
なら、いいのかな?
「それでは、アルビナ令嬢。本日はありがとうございました。お先に失礼します。」
「えぇ、また会いましょう。」
「はい。」
プティテーラに滞在する中で、また令嬢に会う機会があるのか分からないけど、またお話しできたらいいなと思う。
アルビナ令嬢に一礼をすると、アルビナ令嬢は、あの疲れるお辞儀を返してくれた。
所作と言い、立ち振る舞いと言い、やっぱり見惚れてしまうくらい一つ一つの動きが美しい。
かと思えば、お辞儀をした後は、大きく手を振って私たちを見送ってくれた。
お茶目な部分もあるんだなぁ。
アルビナ令嬢の意外な一面も見ることが出来た。
私とネロは、アルビナ令嬢に見送られながら、月の宮殿セレーネギアを後にする。
帰りも水馬車が迎えに来てくれて、私たちは優雅に宿泊施設まで向かうことが出来た。
馬車の中では、私もネロも無言で窓の外を眺める。
想像以上につかれた。
そして、眠い。
もう、早く帰って眠りたい。
何も考えず、ベッドに飛び込んで、ネロを抱き枕にして眠りたい。
「大丈夫か?」
「えぇ?うん。」
気を張っていたところから、一気に気が抜けてフワフワする。
「着きましたよ。」
水馬車を操縦してくれた人に声を掛けられ、水馬車から外に出る。
私とネロは、その人にお礼を言い、フラフラと宿泊施設に入った。
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