139話 シン王子、女心は難しいものですよ
再び居たたまれない。
そんな目で見てこないで、シン王子。
「いや、どう思ったって…」
「ネロと言ったよな、お前はどうだ?」
「俺…いや。」
ネロも言いよどむほどの必死の圧。
というか、どう思うって何?
最初は、痴話喧嘩でしたねって思ったんだけど、それでいいの?
私は、この質問の意図がよく分からないんだけど。
見ていてどう思ったかということ?
修羅場を?
見ていてあまり気持ちがいいものでは…
言えるか!
「そうか…分からないよな。」
残念そうな顔をされると心苦しい…
そうなんです…
質問の意図が分からないんです。
「アルビナには、なんで伝わらないか分からないんだ。」
シン王子は大きく息を吐き、肩を落としている。
ん?
どういうこと?
さっきの会話で、アルビナ令嬢に何を伝えたかったんだろう。
「俺とアルビナが婚約の間柄というのは、話しただろう?」
「は…」
「それは、小さいころから決まっていたことなのだが、別に俺は決められたから、アルビナを婚約者にしているわけではないんだ。分かるか?」
「なるほ…」
「だが、アルビナにはそれが伝わっているように見えない。しかも、なぜかいつもさっきのように言い合いになってしまう。それは、なんでだ?」
「……」
「さっきもアルビナの笑みを周りに見られるのが好きじゃないと言ったのに、アルビナはなんであんなに怒ったのか分からない。なぁ、どうしてだ?」
「……」
「何をすれば、アルビナは今日、大広間で踊った時のような笑顔を見せてくれるんだ?どうしてだと思う?」
……
これは質問を投げかけられているのかな?
それにしては、二度遮られ、さらに答える必要もなく話は進んでいくんだけど。
そして、まだシン王子の語りは続いている。
うん。
これは、答えを求められていないな。
壁になろう。
壁役に徹して、愚痴を壁打ちしてもらおう。
私は、和やかな気持ちになりながら、シン王子の話を聞く。
って、思っていたんだけど…
アルビナが…とずっと言っているけど、これは好きってことでいいんだよね?
だとしたら、さっきの修羅場の会話でアルビナ令嬢に伝わる訳なくない?とふと思ってしまった。
それが、頭に浮かんでからは、壁役になり続けるのは難しい。
だって、伝わる訳ないじゃん。
いつも、さっきのような言い合いをしているなら、絶対に伝わってないよ。
それに、アルビナ令嬢の笑みを周りに見られるのが好きじゃない、なんてさっきの会話で行ってなかったよね?
周りに愛想を振りまきやがって、って言ってたよね?
もし、アルビナ令嬢の笑みを見られたくないのなら、そう言わなくちゃいけなくない?
そういったら、アルビナ令嬢もシン王子の笑顔を他の人に見られたくないって言ってくれるのでは?
「おい、聞いているんだが…?」
え?
さっきまで、わたしの意見を求めてなかったじゃんか。
もう、どうすればいいの、この王子。
そんな不安そうな顔をするな。
振り回されて、ゲッソリしてきた。
でもなぁ…
恋愛に夢中の時って、周りが見えなくなっちゃうもんだよね。
分からなくないけどさ…
というか、分かるけどさ。
「女心は、女性に聞いた方がいいだろ?聞いていたのなら、さっきの会話、どう思った?」
どう思ったって、そういうことね。
やっとわかったよ。
人にバラされるが嫌なのではなく、そして、修羅場でしたねという答えでもなく。
さっきの会話を聞いて、俺はどうだったということね。
どうもなにも…
理由は、言葉足らず、言葉の違い、ちゃんと伝わってないのでは?
アルビナ令嬢を見る限り、誤解に誤解を重ねて、ここを去ったと思うんだけど。
それに、いつもこんな感じの会話をしているのであれば、そりゃ誤解もするって。
それに、シン王子が最後に言ったトドメの一言。
『だったら、もう好きにしていい。』
これは、やっぱりまずくない?
アルビナ令嬢、目に涙をためていたよね。
泣かないように気を張ってはいたけど。
驚いてもいた。
今までは、あんな感じに突き放す言い方してなかったんだろうな。
だとしたら、やっぱりまずい。
アルビナ令嬢、相当ショックだったと思うんだけど。
シン王子は、不安そうな顔で私の返答を待っていた。
さっきとは大違い。
これ、やっぱり居たたまれない。
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