138話 シン王子の真意が分からないんだけど
居たたまれない…
修羅場を目撃し、その本人と対面してしまった。
当の本人は、私たちに出て来いと言って、私たちを確認した後、少しじっと見た後に石段のところに座り込んでしまい、その後はだんまりである。
どうしよう。
この場を去る訳に行かないよね。
でも、シン王子はさっきから、うつむいたまま何も言ってこないし。
だからと言って、私から声をかける勇気はない。
自ら、修羅場に突っ込んでいく気力もないよ。
さっきまで私も、ネロに癒されていたというのに…
どうしよう…
「おい」
うーん、でもこの空間に居続けるのは嫌だし、一言声をかければ許される?
「おい」
なんて声かけよう。
お大事に…
風邪でも引いたのかって?
元気出して
…何様のつもりってなるよね…
まだまだいけますよ
…これでいいか。
「おい!」
「はい!」
私は、頭の中でなんて言うかを考えていたため、突然声をかけられたことに驚いてしまった。
な、なんだろう。
「お前、さっきから声をかけられていたぞ」
「うそ!」
「ほんと」
シン王子がじっと見つめてくるので、なんだろうと思っていたが、ネロが耳打ちしてくれたことで、やらかしてしまっていたことに気が付いた。
え、王子の言葉を無視するとか、めちゃくちゃ失礼じゃん…
どうしよう…
そして再び思考のループに入り、また無視ってしまったらしい。
やっとお互いが落ち着き、会話の体勢に入った。
「お前、確かコスモスから来たというチヒロだったか…」
「コスモスから来ました、チヒロです。」
再び自己紹介。
覚えて貰ってるとは思わなかったが、もう一回やっておこう。
「そのだな…」
私の自己紹介を聞き、顔をじっと見つめてきた後、顔を逸らして、下を向く。
なんだろう?
何か言いたいことがあるのだろうか?
「さっきのことは」
なるほど。
さっき見てしまったことを気にしているんだな。
「言いません。断じて、誰にも言いません。」
そりゃ、もちろんですとも。
「いや…そういう…」
「王子の不利益になることなんて言うはずありません。何に誓えばいいでしょうか。指切り…いや、ないな。何に誓えばいいか分からないですけど、誓って言いません。」
「そんなこと言って誰が信用するんだ?」
「ネロは、黙ってて。」
だって、人によって誓っているものが違うじゃん。
何に誓えというのだ。
まったく。
「だから話を聞け。」
シン王子は、そう言うと大きくため息を吐いた。
え?
何も言わないって言ってるじゃん。
もう、何がいけないの。
そんな、やれやれみたいな顔されても。
「そうじゃない。そうじゃなくて…だな。」
そうじゃなくて?
言うか言わないかという口止めをしたかったのではないってこと?
…はて?
じゃあ、呼び止められて、話しかけられる理由が分からないんだけど。
「だから、……思った」
ん?
なんて?
何を思ったのだろう…?
これ聞き返していいやつ?
「えっと、申し訳ございません。なんと?」
私の言葉に、シン王子が無言で睨んできた。
す、すみません。
だって聞こえなかったんだもん。
シン王子は再び俯いてしまった。
ほんとに何?
私はどうすればいいの?
再び長い沈黙…
そして、シン王子は、険しい表情をしながら顔を上げた。
「だからだな、お前は、さっき何がいけなかったと思った?」
え?
さっき、何がいけないと思った?
さっきってまさか、アルビナ令嬢との修羅場?
それをどう思ったかってこと?
それを私が答えるの?
本気か、この王子。
私は、顔を引きつらせながら、シン王子の方を見る。
するとシン王子は、あまりにも真剣な表情でこちらを見てきた。
ええぇぇ。
言いたかったことって、ほんとにそれなの?
言いにくい。
いや、ただの痴話喧嘩ですよねって。
なんで、そんなことを聞いてくるの。
ネロに助けを求め、そちらを見ると、ネロも信じられないという顔をしていて、あまり助けは期待できなかった。
読んでいただき、ありがとうございます!
よろしければ、
評価、ブックマーク、感想等いただけると
嬉しいです!
よろしくお願いします!