135話 王子と令嬢のダンスは、一味違いました
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貴族の生活ってこんな感じなのかな。
私は、目の前で行われている優雅なダンスをボーっと眺めた。
「ダンスには興味なさそうだな。」
「あるように見える?」
「いや」
ネロは、私の言葉をきっぱり否定した。
そこまで否定しなくてもいいとは思うけど、でもまぁ、興味はないかな。
興味がないというより、そういう世界に身を置いたことがないから、綺麗だなくらいにしか感じられないのだ。
そういう感性が、発達していないと思う。
ん?
あれって…
「第一王子とその婚約者だな。」
「踊るのかな」
二人は手を繋ぎ、大広間の中央の方へ。
腕を組み、二人は向かい合う。
音楽に合わせて、優雅に踊り始めるシン王子とアルビナ令嬢。
…前言撤回かも。
周りが見えなくなるほどの存在感。
スポットライトが当たったみたいに、輝いていて、存在全てで周りを黙らせてくる。
ダンスに詳しいわけじゃないけど、あの二人からは目が離せないや。
音楽がいったん鳴りやむと、二人は踊るのを終えて、お互い体を組んだまま、見つめ合う。
そして、見つめ合ったまま、シン王子とアルビナ令嬢は、照れたようにはにかんだ。
「うわぁ…」
あまりの美しさに思わず声が出てしまった。
美しさというか…なんかこう…尊さ…みたいな?
そして、二人は体を離し、周りに向かって一礼して去っていく。
「ダンスって凄いね。」
「手のひら返しが凄いな。」
ネロの言葉はスルーして、私は二人が去っていく様子を見つめた。
「踊らないのですか?」
「私が踊る訳な…い…じゃないですか…」
あまりにもフランクに話しかけられたので、同等のテンションで返事をし、声の方へ振り返る。
そこにいたのは、ナンナル王子。
ナンナル王子は、ニヤリと笑ってこちらを見ていた。
「ナンナル王子…先ほどぶりですね。」
「そうだね。コスモスのご要人が壁の花をやっているのが見えたから、つい話しかけちゃった。」
話しかけられない様に、壁の花やっていたんだけど…
そして、先ほどとは全く違う雰囲気のナンナル王子。
可愛い弟キャラという感じか?
あと、ナンナル王子と一緒にいる男性。
誰?
「そんな不思議そうな顔をしないでください。初めまして。アリファン侯爵家クラト・アリファンと申します。」
「クラトが謝りたいことがあるらしいから、連れてきたよ。」
謝りたいこと?
私は、クラトと呼ばれた男性をじっと見る。
明るい茶色の髪に赤い瞳。
髪の毛は肩にかかるかな…くらいと少し長めで、後ろで髪の毛をくくっている。
私の独断と偏見で言うのであれば、少しチャラそう?
この人に謝られることなんて、なんかあっただろうか?
「女王の前で転んでしまっただろう?」
「お見苦しいところを…」
「いや、たまたまアルスから来た人たちがこそこそと話をしているのを、こそこそと聞き耳を立てている二人を見つけてね。二人が女王に挨拶をしたかったみたいだから、背中を押したら、思ったよりも君が吹っ飛んでいったから。」
…貴方でしたか。
私の背中を思いっきり押した人は。
あまりの痛さに悪意がある人かと思ったよ…
「悪かったなと。ただ、面白いものが見れたからさ」
「クラト」
「悪い、悪い。」
なんだか軽いぞ?
ナンナル王子もフランクだし。
ナンナル王子と言い、クラト公子といい、しっかりキャラ分けが出来ているじゃないか。
「悪かったな。」
「い、いえ。結果、挨拶は確かにできたので…」
「面白かったしな」
いつまで言うのだ。
割とひやひやものだったんだからな。
「クラトが悪かったよ。お詫びと言っては何だけど、なにかしたいことある?」
別に要らないけど、お詫びなんて。
したいことも特にない。
これいつ終わるのかな、くらいだな。
遠慮しよう。
「お詫びなんて大丈夫です。ただ、教えてもらいたいことがあるのですが…」
「なに?」
「あの…えっと…」
めちゃくちゃ言いにくいんだけど、この人に聞かないと私の人権が終わる気がする。
「お手洗いってどこでしょう…」
「すごい深刻な顔をしているから、どんな無理難題を聞かれるのかと思いきや、そんなこと?」
ナンナル王子とクラト公子は、目を丸くし驚き、その後フフッと笑みをこぼす。
私の沽券に関わるんですけど。
笑い事じゃないんですけど。
「恥ずかしいからに決まっているでしょう。察していただけると嬉しいのですが。」
「ごめんね。あの扉を出てしばらく歩いて、右に曲がり、またしばらく歩くとあるよ。」
えぇ?
なんて…?
あ、ネロは聞いていただろう。
ネロを掴んで、私は急いでナンナル王子が言っていた奥の扉に向かう。
そして、お手洗いへ。
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