132話 マウントを取られたままにはさせません
挨拶をすべき女性に、我さきと人が群がってくれて良かった。
普通に考えれば、私たちは、早い段階で挨拶をするべき人間だからだ。
その反面、周りにここまで群がっていなければ、初めましてと普通に挨拶すれば済んだかもしれない。
実際初めましてだし、それでもいい気がするんだけど、コスモス以外から来た人物たちは、あの女性を知っていて、挨拶をしてるとなると、やっぱり舐められるのかなと感じてしまう部分もある訳で。
というか、今回こんなに苦労している理由は、挨拶して来いと言った割にその人物の特徴、そして抑えるべきポイントを全く知らせなかったコスモスのせいとも言えるんだけど。
女性の周りに群がっている、おそらく各世界の重要な人たちを後ろから眺めながら、あたりに耳を澄ます。
「本日は、このような素敵なパーティに招待いただき、ありがとうございます。」
「楽しんでいるか?」
「はい。」
ふむ…
「プティテーラの新たな開きに、お目にかかれて光栄です」
「プティテーラも歓迎しよう」
か、かっこいいな…
女性も、男性も口説いているのかというほど、甘やかに会話を終えるのは何で?
「すごいな…」
「だね。」
私は思わず赤面、ネロは顔を引きつらせている。
「異世界移動装置の世界は、もう挨拶を済ませたのかな。」
「さあな。だが、済ませていたら、俺らはだいぶ良くない立ち位置にいるな」
「そうだよね。」
「それに情報収集と言っても、周りが色めき立つ女性ということくらいしか、分からないしな。」
情報戦を制してやると言った割に、大した情報を手に入れられていない。
そもそも、あの周りの人たちは、あの女性に関することを口にしていない気がするんだよね。
「もうヤダ。お腹すいた…」
「駄々をこねるな。」
半分諦めかけていた時、すこし離れたところで会話が聞こえる。
私とネロは、会話が聞こえる方に近づくと、そこは庭へと通じるバルコニーだった。
「トリウェア女王、相変わらずかっこいいわ。」
「旦那を押しのけて、王の座についているくらいだからな。」
「はぁ?元々、あの女王が血筋で、旦那は外からの血だろ」
おいおい…
こんな所で、そんな会話をするのは、危なくない?
私たちは助かるけど。
「じゃあ、旦那は?」
「あの女王の少し後ろに控えた青色の髪の優男」
「使用人じゃないのか、あれ。」
青い髪の人…
あの優しそうな人が旦那さん…ということは、王配というやつか。
「ま、プティテーラは安泰だろうな。王子が二人も生まれていて、二人とも優秀。」
「それに、上の王子は、優秀な婚約者もいる。次期、王と王妃は決まっているようなもんだな。」
二人の王子…
あ、いた。
一人は女性を連れ立っているから、あっちが上の王子様かな。
「それにしても、コスモスって大したことないのかもな」
ん?
急に、話の流れがプティテーラの王族からコスモスへと移る。
なぜ急にコスモスの話題に?
ネロと首を傾げつつ、話の続きを聞く。
「異世界屈指の転移技術を持つ世界と言っても、所詮は雑食の世界。技術構築において右に出るものなしと言われている、アルスには勝てないんじゃないか?」
「入場の時に、紹介はされていたけど、いまだに女王への挨拶を済ませていないだろ?」
「確かに。アルスは、開始早々に済ませていた。他の世界もそれで挨拶に続けたんだし」
アルス…
それが、異世界移動装置を置いた世界か。
技術構築ね…
「魔法と技術の応用において、コスモスはいまだに負け知らずのはずだが。」
ネロの機嫌が急転直下なんですけど…
なんだかんだ言って、ネロはコスモスのこと好きなんだよね。
「アルスって知ってる?」
「知らんな。最近出てきた世界じゃないか?」
「そんなことある?」
「アルバートからもアスガルからも聞いたことがない。上層部が黙っていたのなら別だけどな。異世界移動装置についてもそうだ。コスモスにとっては、未知の世界。」
コスモスにとっては、未開の世界アルス。
どんな世界なんだろう。
まぁ、こんな所で不用意な会話をしてくれたおかげで、私たちは最低限の情報は手に入ったわけだし、少しぐらいお礼してやってもいいかな。
それに、異世界移動装置の世界が挨拶を済ませているのなら、私たちが挨拶をしていないのも確かに変だし。
いろいろ周りに突っ込みどころを与えてしまっているのは、事実だ。
「行く?」
「ふん。当たり前だ。」
じゃあ行こう。
いざ、プティテーラ女王への挨拶に。
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