131話 パーティでの情報不足は命取り?
「今宵、我が世界、プティテーラの正式な世界の開きを祝う宴の参加に感謝する。ささやかながら、もてなしを受け取ってくれると嬉しい。存分にくつろいでくれ。」
声から感じ取れる、余裕。
そして、この場全てを圧倒するほどの存在感。
かっこいい女性。
「お前たちからは何かあるか?」
その人が、後ろに並んでいる人たちの方を振り返り、声をかけている。
後ろの人たちは、首を振り何かを言っていたみたいだけど、ここからじゃ聞き取れないな。
「さぁ、宴だ。プティテーラの新たな歴史をともに祝ってくれると嬉しい。」
そう告げると、その女性と後ろにいた人たちが、踊り場の階段から降りてきた。
下りてくると、その人の元へ人が集まる。
「ねぇ、もしかして、今からあの人に挨拶するの?」
「そうだろうな。」
「めっちゃ、失礼なこと言ってもいい?」
「小声なら許可する。」
私は、ネロの傍に寄り、耳の傍に口元を近づけた。
「あの人どなたでしょうか…」
「……さぁ。」
やばくないか?
招待された先の多分えらい人の名前を知らないの…。
しかも、今回ってコスモスの異世界転送装置と、どこかの世界の異世界移動装置の開通記念でしょ。
まずい…非常にまずいのでは?
「しかもさ、さっき気になったんだけど、正式な世界の開きということは、いままでも、どこかの世界と交流していたわけだよね。」
「そうだろうな。」
「ねぇ、コスモスさぁ…」
「情報戦でもだいぶ後れを取っている可能性があるな。」
「だよねぇ…」
そんな情報なかったし、なんなら私が旅行者初になる予定だった。
だけど、妙に慣れた入界や接待。
おかしいとは思っていた。
でも、街の様子は、観光客の対応に慣れていない人が多かった。
道案内しかりね。
ただ、観光案内所や、そこから行った宿泊施設、水馬車、騎士、そこら辺の人たちは、すでに客というものを対応したことがあるんだろうな。
一般の人たちは知らないけど、要人たちを対応したことがあると言ったら…
「一足早く、外交は開かれていたと思っていいだろう。」
「しかも、コスモスには悟られずに同時に外交を開くなんてやるね。」
コスモスもプティテーラとやり取りはしたと言っていたけど、だいぶ情報を小出しにされ、手玉に取られたんだろう。
「天下のコスモスを手玉に取る…ほんとにやり手だな。」
「天下?」
「いっただろ?コスモスは、異世界機構に認められている筆頭だ。そういった意味でトップを走り続けている。異世界機構の運営も、コスモス支援の部分がデカいしな。」
へぇ。
なのに、今回は後手後手になってしまっているわけね。
そりゃ、焦るわ。
まぁ、だからと言って、私たちを巻き込んだことは、許さんけど。
「今回、コスモス側から異世界転送装置を通って来たのが、俺たちだけだとすると、ここにいる奴らは全員、プティテーラの人間、もしくはもう一つの異世界移動装置で来た奴らってことになる。」
なるほど。
それは、コスモスから来たなんて聞いたら、どんな奴らがきたのか気になる訳だよ。
さっきの視線は、そういうことね。
納得したら、さっきまでの気後れは感じなくなった。
「すごいアウェイな環境じゃん」
「そうだな。」
「この状況で、あの中心にいる人たちと繋がりを持てと言ってるんだよね。」
「あぁ。それに、あわよくば…王族と繋がりを持てと。」
「行けると思う?」
「いや、無理だろうな。」
だよね。
私もそう思う。
今回は、中心人物に挨拶をして、大人しくしていよう。
何かをやらかす前に。
状況がしっかりと分析できると、気が楽になる。
何事も、分からないというものは、恐怖なのだ。
ネロも今回は分が悪いと言っているから、本当に分が悪いのだろう。
ある意味、敵だらけってことでしょ?
コスモスのことをどのように思っているか知らないけど。
知らないということは、周りも何らかの理由で私たちを気にして恐れているということ。
コスモスは、無害ですよとアピールして、今回のパーティは帰ろう。
そんなことより、今一番大事なことは、あの中心人物がどんな人物かということ。
周りに気軽に聞ける相手がいないのが、不便すぎるけど。
どうやって情報収集しようかな…。
私は、目線だけ動かし、あたりを観察する。
挙動不審だと舐められちゃうからね。
こう思うと、壁の花になっておいて良かった。
中心人物達を取り囲むように、人が群がっている。
挨拶をしているのだろうか。
そこで、一つ閃く。
「ねぇ、ネロ。」
「なんだ。」
「挨拶しに行こう。」
「誰か分からないのにか?」
一か八かなんだけど…
「盗み聞きしよう。」
「なるほどな。挨拶の盗み聞き。ここの誰かに、情報を全く知らないことを悟られない様に近づき、挨拶を盗み聞くことで、あの中心人物が誰なのか探る。」
「うん。万が一、私たちがあの人たちのことを知らないとバレたらアウト。どう?」
ネロはニヤリと笑う。
こういう好戦的なところいいと思うよ。
「乗った。」
「じゃあ、行こう。」
私たちは、壁の花をやめて、敵戦地にて情報戦に向かう。
また情報戦かぁ。
前回は、グラースさんにやられたけど、今回は負けないんだから。
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