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126話 どこにでもあるは、案外見つからないものです


「ねぇ、ネロ」

「なんだ」

「そこら中って、私が知っている言葉と違うのかな」

「俺が知ってる言葉とも違うのかもな」


おばちゃん、どこにもないよ?

ウォーターフルーツ、水団子、フレーブ。

水路を船で移動し、出店のような場所に声をかけて、早数十回。

おばちゃん…そこら中って、どこら辺のこと言っているの。

むしろ、魔水魚の方がそこら中で売っている。

思わず、魔水魚のカルパッチョや魔水魚のから揚げを買ってしまったではないか。

それにしても、おばちゃんが言っていた通り、魔水魚は焼いても、揚げても、生でもおいしかった。

せめて、どんな料理かだけでも見て見たかったのに。


おばちゃんのところに、もう一度、話を聞きに戻ろうと思ったんだけど、水路が入り組んでいて、戻ることが出来なかった。

むしろ迷った。

おばちゃんのところに戻ることを諦めて、周辺で話を聞くと、


「ウォーターフルーツ?水団子?フレーブ?ここにはないよ」


と言われる。

どこに行けば、それらが見れますかと聞くと、


「どこにでもあるさ」


とおばちゃんと同じ返答をする。

でも、どこにもない。

ほんとになんで?

売り切れてしまっているとか?

だったら、売り切れてしまって、今日はもうないよって言うと思うんだよね。

実際、ネロが魔水魚はあるか聞いたときは、


「うちのは、今日はもう売り切れてないのさ」


と返事をしっかり貰ったくらいだし。


うーん。

なんか、謎かけされてる?

クイズ出されているとか?

街全体を巻き込んでの、盛大なイベントが行われているとか?

珍しい観光客に、サプライズ的な?


ある訳ないか。

あまりにも意味が分からなくなり、考えを斜め上の方に持っていこうとするが、冷静な私がありえんと言って、突飛な思考を蹴って追い出した。


船は自動とはいえ、乗りっぱなしはやはり疲れるもので。

私とネロは、船の上で休憩をとることにした。

もちろん先ほどたくさん買った、魔水魚料理を食べながら。


「疲れた…」

「ここまで来ると、実在するのかどうか怪しくなってくるな」

「そうだね…あ、これおいしい。」

「どれだ?」

「魔水魚フライ」


私がネロの方に差し出すと、ネロはフライに噛り付く。

もぐもぐと咀嚼し、最後に舌をペロっと出して、口を舐めとる。

え…可愛くない?

疲れてきたせいで、頭は全く働いていないようで、ネロが前足で顔をスリスリしている様子を、無言、無心、真顔で眺めていた。


「なんだよ」


ん?


「なに?」

「俺のセリフだ。」

「いやぁ、ちょっと、ボーっとしていたのかなぁ…なんて。」


やめて、そんな目で見ないで。

いいじゃん、疲れてたら癒されたくなるじゃん。

なんか悪いですか?


「そうかよ。」

「そうです。」


私は、にっこりと笑い、ネロからの痛い視線を見なかったことにした。


ウォーターフルーツ、水団子、フレーブ探しが難航したことで、魔水魚のやけ食いをした私とネロは、お腹いっぱいになった。

お腹いっぱいになったということは、ほら、やっぱり眠くなるというか…

パーティまで、もう少し時間があるということで、近くの船着き場まで行き、いったん船を止め、舟の上でうとうと…。

二人そろって、一休み。

瞼がだんだん重くなり、私は眠りに落ちていった。


「起きろ」


んん…

大きな揺れにゆっくりと目を開ける。


「起きろ!」


またもや大きな揺れ。

地震?

私は、勢いよく飛び起きる。

するとそこは、船の上。

あれ?


「相変わらず、よく寝るな。」

「おはよ、ネロ。ネロも寝たの?」

「寝るわけがないだろ」


嘘。

じゃあ、ネロはずっと私の抱き枕になったまま、起きていたの。


「退屈じゃなかった?」

「お前が言うな。」

「確かに。」


いつもの軽口を言い合いながら、思考が徐々に覚醒していく。


「それで、なに?」

「チヒロ、忘れてないか?」

「何を?」


私が聞くと、ネロは大きなため息をつく。

あ、とても失礼な匂いがした。


「いいから帰るぞ。」


ネロに促され、仕方なく私は宿泊先に戻った。

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