121話 旅行の準備は前もって
「おい、起きろ。」
んんん…
「起きろ」
「いたぁ…」
私は、頬の痛みで目を開ける。
何が起こったか全く分からない…
すると、顔の目の前に、ドアップの…ネロ?
「起きろと言ってるだろ。」
ん…えっと、これはどういう状況?
私は、あたりをきょろきょろと見渡す。
ここは、私の部屋…
「なんで、ネロ?」
「お前が昨日、俺をここに連れてきたんだろうが」
ネロに頬をつままれて、引っ張られる。
「いひゃい、いひゃい。」
そうだ…
プティテーラについて、頭に叩き込もうと思ったら、異世界機構、フィニスという別の話題に頭を持っていかれ、その後は多分、私は寝落ちたのだろう。
それにしても、眠い…
「言っとくが、あと五分でここを出ないと、アスガルと約束した時間に遅刻するからな。」
「うそ!」
「ほんとだ。」
私は、時計を確認し、急いで朝の支度をする。
あと五分は無理だよ。
「なんでもっと早く起こしてくれなかったの。」
「俺は、起こした。ちなみに、俺はあと五分したら、お前を置いてここを出るから。俺は遅刻したくない。」
「薄情者!」
私は、手を動かしながら、ネロに言い放つ。
「なんとでも言え。俺は起こしたって言ってるだろ。」
「起こしてない。起こすというのは、相手が起きたことを確認するのが大事なんだから。」
「そんなもの知るか。口を動かすなら、手を動かせよ。」
「動かしてるでしょ。」
「動かしていても、遅いな。」
ネロと言い合いをしつつも、私は…、五分は多分オーバーしたと思うが、何とか支度を終えた。
ネロは、なんだかんだ言って、しっかり待ってくれていた。
「文句言いつつも、待ってくれてるじゃん」
「あぁ、まだ間に合うからな。」
え?
どういうこと?
「五分と言って急かさないと、チヒロは起きないだろ?」
だ、騙された…
どんだけ急いだと思ってるの?
「そもそも、余裕をもって起きれば、あんなことにはなっていない。昨日の夜、寝落ちて、旅行の準備すらしてなかった、自分を恨め。」
い、言い返せない…
確かに、余裕こいて遅刻する未来が、自分でも見えているのが怖い。
「早くいくぞ。」
「わかったよ。」
またもや、軽い言い合いをしつつ、私の部屋を出て異世界転送装置があるところへ向かう。
「結局、昨日、プティテーラの情報増えなかったね。」
「そもそも、あの資料自体に、プティテーラの情報があまり書かれていなかった。書いた奴は、プティテーラどころじゃなかったんだろうな。」
私は、行き当たりばったりの旅行も好きだけど、やるべきことがあるときは効率的に済ましてしまいたいから、しっかりと調査してから行きたかったのに。
「やあ、チヒロ、ネロ。おはよう」
「アスガルさん。おはようございます。」
朝から爽やかだな…
アスガルさん。
「アスガル、異世界機構や異世界移動装置のこと黙っていたな。それに俺の資料の方には入っていなかった。」
「あぁ、あれ。あれは、俺も直近に貰ったんだよ。先に貰っていたら、俺もネロに渡したさ。さすがに、俺も、異世界機構となると話は別だからね。だから、あの時言った、あわよくば…。うまくいくといいね」
嫌だ。
絶対に嫌だ。
「それから、ネロにこれを渡しておくよ。荷物になるだろうから、小さく圧縮してある。良かったら使ってくれ。」
アスガルさんがネロに渡した物は、ビー玉サイズの小さな球体。
なんだろう?
私が首をかしげると、アスガルさんはクスクスと笑った。
「大丈夫。ネロに使い方を聞いて。きっと役に立つものだから。」
「わかりました。」
ネロは使い方を知っているということだもんね。
じゃあ、任せてしまおう。
「さて、そろそろ行くといいよ。」
「はい。行ってきます。」
私とネロは、アスガルさんと別れ、異世界転送装置の方へ向かう。
「お、来たな。」
「オーロックさん。今日もよろしくお願いします。」
「任せろ。」
オーロックさんの笑顔って落ち着く。
アスガルさんは、笑うと何か裏がありそうだし、アルバートさんの微笑みも今回見事に騙された。
オーロックさんは、そんなことないと信じたい。
「じゃあ、装置の中に入ってくれ。」
装置に促され、私とネロは中に入る。
「じゃあ、該当するものを選択していって。申請も忘れないように。」
持ち物申請…それから同行者設定をネロにして…
行き先は…プティテーラ
あ、プティテーラの横に新規って書かれてる。
いいね、なんか。
選択をし終えると転移が始まる。
「今回、大変かもしれないが楽しんで来いよ。ネロもな。」
「はい!行ってきます。」
「あぁ。」
オーロックさんの言葉に私とネロは返事をする。
「いってらっしゃい。いい旅を。」
いざ、新たな異世界へ。
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