120話 あわよくば…繋がりをってことね
次の日の朝には、コスモスを出ないといけないわけだし…
資料を頭に入れたら、絶対に寝る。
テスト勉強も、徹夜して効率が落ちることはよくある訳だし。
ある程度頭に入れたら、あとはあきらめも肝心だと思う。
私は、自分にそう言い聞かせながら、資料を読み進めた。
「プティテーラ…確か太陽と月、自然の世界って、アスガルさんは言っていたよね。」
「それで、お前、流されていたもんな」
うるさいなぁ。
私とネロは、貰ってきた資料をベッドの上に広げ、二人並んでうつ伏せになりながら、資料を読んでいく。
調査報告…
魔物の危険性なし
人柄、規律、世界としての形成度合い、
世界間や異世界との目立った争いなし。
よって、Eランク。
「太陽と月というのはどこから来ているんだろう。書いてないよね」
「さあな。営業課が書く必要はないと思ったんだろう。」
いや、書いてほしかった。
確かに、アスガルさんが言った通り、ゲート開通とランク決めについての資料は多いけど、その先が全くない。
ん?
なんだろう。
ひとつ気になる項目を見つけた。
「プティテーラって、元々異世界との交流があった訳じゃないんだよね。」
「アスガルが言っていたな。」
「じゃあ、この異世界転送装置の横に書かれている、異世界移動装置って何?」
そう言うと、ネロは私が指をさした資料をのぞき込んできた。
「俺のところには入ってなかった資料だ。この世界、コスモス以外にも異世界との交流をこの機会に持ったんだ。」
「どういうこと?」
「コスモスは、異世界転送装置を用いて、異世界に旅行できるようになっている。つまり、異世界転送装置が設置されている世界なら、コスモスを経由しなくても、別の世界にいけるんだ。分かるか?」
コスモスが運営している装置があれば、わざわざコスモスに帰ってこなくてもいいってこと。
つまり、ミシュティからプティテーラへ移動することは可能ってことでしょ。
「この横の装置は、コスモスの異世界転送装置と同じで、異世界に飛ぶための装置だ。」
え?
じゃあ、コスモスでは行くことが出来ない異世界にも、この移動装置を使えば行けちゃうってこと?
「転送装置を使って異世界を移動するのってコスモスだけじゃないんだ。」
「まぁな。ただ、異世界を移動するための装置の設置が許されることは多くない。」
異世界間で独立しているのに、どこが許可を出しているというのだろうか。
「顔に出すぎ。分かりやす過ぎだ。」
「え?」
「異世界の狭間にある組織、異世界機構。通称フィニス」
「フィニス?」
「あぁ、そこが異世界を管理している。フィニスは、異世界機構に登録している中の、代表的な世界のトップを集めて、物事を決める。別の世界に影響を及ぼす可能性がある出来事は、だいたいフィニスを通していることが多い。異世界転送装置のような直接、別の世界に干渉するようなものは特にな。」
異世界版、国際…連合みたいな…?
「あれ、でも異世界転送装置の運営は、コスモスがしているよね。」
「あぁ、そういう決め事はしっかりとする割に、フィニスはあまり世界に干渉してこないんだよ。」
「じゃあ、コスモスの知らない別の世界からも人が来ることになるんだ。」
「だからか…。そもそも、この話が俺らのところに来るのがおかしいと思っていたんだが、プティテーラが異世界転送装置では、行くことのできない世界に行けることになる。異世界転送を売りにしているコスモスが、コスモスの知らない異世界と繋がる新しい世界を見つけてしまったわけだ。」
あー…
「お株が奪われるかもしれないと。」
「あぁ。観光部の上層や営業課は大慌て。そこに、ミシュティとの繋がりを築いてきた新人。アスガルの言っていたこと、あながち間違いじゃなかったってことだな。」
アスガルさんの言っていたことって。
「あわよくば…ってやつ。」
「お前がプティテーラで繋がりを築いてきたら、観光部は大助かりだということ。今回、営業課が口をはさんでこなかった理由は、繋がるべき異世界が他にあるということが分かり、そっちの仕事に人材が回されているためだろうな。」
ここで、また過度な期待をされているような…
ほんとに、観光部という花形事業は、なんでこんなに人手不足なの。
私とネロは、異世界を取り巻く事情に頭を使い、結局、徹夜の勉強会になってしまったのだった。
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