118話 無茶振りされて、次の旅行先へ
それにしても、この人たちよく食べるなぁ。
アンジュ君とアンヘル君に至っては、お料理教室の時の試食も兼ねているけど、まだ食べ続けているし。
この人たち、普段からこんなに食べていたっけ。
ネロは、食いしん坊キャラなのは、一緒に過ごして分かっていたんだけど、他の人たちも結構な量、食べるんだな。
私は一足先にリタイヤして、お茶をすすっていた。
…アスガルさんは、ほんとに何しに来たの?
何もなかったけど、たまたま来たら料理を広げていたから寄っただけとか?
そんなことある?
「あの…アスガルさん」
「なんだい?」
こっちを振り向くとアスガルさんの口の端に、ソースが付いている。
これは、いつもしっかりした上司の少し抜けた一面を垣間見て、キュンとするところか?
もしかして、ついてますよ、と言って拭いてあげる展開か?
私がそんなことを思っている間に、アスガルさんはきれいにナフキンで口の周りを上品にふき取った。
うん、そんなことする必要がないな。
「えっと、企画宣伝課に何か用があったのではないかと…」
「え?」
え?
え?って何だろう。
まさか、ないの?
嘘だろ。
「ごめん、ごめん。冗談だ。ちゃんと用があって来たんだけど、興味をそそられるものがあったから、思わずね。」
「そうだな、アスガル。少し食べすぎじゃないか?」
「うるさいぞ、アルバート。チヒロがいいと言ってくれたんだから、別にいいだろう?」
あぁぁ。
また話がそれていくけど、いいのかな。
アルバートさんとアスガルさんは、仲が悪いの?
「課長とアスガルさんは、昔すごく仲が悪かったんだけど、今は見ての通り、仲がいいから安心して」
私が、顔を引きつらせていると、フェリシアさんが耳打ちしてくれた。
これで、仲が良いんだ…
フェリシアさん。
二人を見た結果、仲が悪いのかなと思った私はどうすればいいですか?
「ほら、課長。アスガルさんも。チヒロが困っているでしょ。」
「いや、料理で話の腰を折ってしまったみたいなので、用件は大丈夫かなと思ったのですが…大丈夫ならいいです」
「そうだった。ちゃんと用があって来たんだよ。」
アスガルさんは、懐から封筒を出した。
「チヒロに、これを届けに来たんだ」
アスガルさん、私に用があって来たんだ。
何の封筒だろう。
「チヒロとネロに招待状のプレゼントだよ。」
「招待状ですか?」
「仕事を頼んでいただろう?」
あぁ、そういえば、次の旅行先はアスガルさんから行き先を貰っていたな。
確か、プティテーラ。
「プティテーラの異世界転送装置の開通記念のパーティの招待状だ。これが開かれるのが、明日だから渡しておかないとまずいと思ってね。」
ん?
明日?
この人、明日って言った?
「どうかしたかい?」
「えっと、アスガルさん、明日って言いましたか?」
「そうだね」
アスガルさんは、何事もないように普段の話し方で言った。
そうだねじゃない。
え?
ということは、私は明日には、コスモスから発っていないといけないってことでは?
ネロの方を向くと、ネロはため息をついていた。
他のメンバーも似たような反応をしているってことは、ほんとってこと?
えっと、そんなに急なものなの?
仕事の話って。
「明日の朝には、プティテーラに着く予定ですって伝えてしまったみたいでね。」
「それで、前日に通知を…」
「そうだね」
アスガルさんは、にっこりとほほ笑んだ。
伝えたの誰だよ。
マジか…
「それから、これがプティテーラの概要をまとめた資料ね。渡しておくよ」
これを渡されたということは、頭に入れてねって言うことですよね。
こんなにのんきに料理のバリエーションが、とか言ってる場合じゃないじゃん。
前日に出張のお知らせ…
いや、会社って…仕事って…そういうところもあるのかな…
「チヒロ、頑張ってね。」
「おつかれ様、チヒロ。」
アンジュ君とアンヘル君は、私の傍に寄ってきてくれる。
他の人たちはというと…
「パーティか。楽しんでおいで」
「旅行初でしょ。いいじゃない。」
アルバートさん、フェリシアさん、私は忘れてませんから。
さりげなく、この仕事を私に誘導したの…
「こういうことは、よくあるわよ?」
「そうだな。上司に振り回されることには、慣れた方がいいぞ」
私の肩をポンと叩くリリスさんとどこか遠い目をしたカイン君。
この二人も苦労しているのだろう。
これから、プティテーラの情報を読んで、明日の準備をして…
私は、次の旅行先に行く前に、胃を痛める羽目になった。
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