114話 毒耐性の獲得は命がけ?
転送装置に乗りオフィスの方に帰ってくると、企画宣伝課の人たちが迎えてくれる。
ネロも、用事が終わって帰ってきているみたいだ。
「おかえりなさい、お使いはどうだった?」
「楽しかったです。今後もお使い担当しっかりさせていただきますね」
「あらあら、知ってたのね。」
私が、どや顔をして言うと、フェリシアさんはクスクスと笑って答えた。
「ちゃんと、お使いできたか確認してもいいかしら。なんだかいい匂いがしているみたいだし。」
「もちろんです。」
私が、今日手に入れたものと、先ほど作って、アンジュ君たちが持ってくれている料理たちを机の上に並べる。
「まずは、アルバートさんの魔法石。錬金術のお店で手に入れてきた透明の魔法石です。」
「これこれ。ありがとう。今回は、ヘルメスやアリスはいたかい?」
「残念ながら、ヘルメスさんはいらっしゃらなくて会えなかったんですけど、アリスさんはいました」
「そうか。面白い話を聞けるから、また顔を出してみるといいよ。」
「アリスさんに、また行きますと約束しました。」
アルバートさんは、私の返答を頷きながら聞いてくれた。
アルバートさんって、なんかお父さんみたいなんだよね。
「ありがとう。お使いおつかれ様。」
「はい!」
そして、次に渡すのはフェリシアさんのトリカブト。
「これがメーディさんとニヴ君から貰ってきたトリカブトですね」
「あら、ありがとう。二人は元気にしてた?」
「元気だった。」
「相変わらず、ニヴがメーディをしつけてた。」
フェリシアさんの問いにアンジュ君とアンヘル君が答える。
しつけ…
「そうなのね。よかったわ。チヒロは二人と話をすることが出来たかしら」
「はい。なんなら、お使い担当のことを二人から聞きましたし」
「あら、あの二人が先に話してしまったのね。本当はお使いをすべて終えてから任命するつもりだったのに。二人にはちゃんと言っておくわね。」
…何を言うのだろう。
トリカブトを持ちながら、笑顔。
怖すぎる。
「そういえば、トリカブトは何に使うんですか?」
「私は、毒草の研究をしているの。その後は、毒と薬に分けて、抽出した毒は、お茶に溶かして飲むの。」
ん?
ちょっと待って。
毒の方を飲むの?
なんで?
トリカブトの毒って、口にするの、NGじゃなかったっけ。
「そんな驚かなくても。アラクネは毒耐性が付いているから平気なのよ。私にとってみれば、毒は自分の体を強くするものであって、危険なものではないのよ。」
…プロテインみたいなもの?
それにしても、体を鍛えるために毒を摂取するのか…
厳ついなぁ。
そういえば、フェリシアさんって昔は肉食お姉さんだったんだっけ?
普段の穏やかさからは、分からないけど、圧のある笑顔とか、こういう突飛な行動とか割と片鱗があるな。
「まぁ、毒耐性を獲得するために、毒を摂取する人はいるけど、知識ない人がやると間違いなく危険だから、真似はしない方がいい。」
アルバートさんの言葉は、まさにその通りだと思う。
良い子のみんなも、悪い子も絶対まねしてはいけない類の物だと思う。
「まぁ、毒慣らしは、やっている人はやっているけどな。」
「微量から初めて、だんだん増やしていくものでしょ。」
「毒による戦闘ダウンって割と面倒くさいから、毒に慣らしてしまう人も多いんだよね」
ネロ、リリスさん、カイン君の順番の発言に、この人たちも毒慣らしは、やり終えてるんだろうと思った。
「チヒロは、まだこっちの空気に慣れていないから、毒慣らしなんてやってはだめだよ。」
「や、やりません。」
「チヒロはこっちに来て、魔力に慣れるために体が一生懸命だから、そこに毒慣らしなんてすると、体に異常をきたすから、絶対にやめてね。」
私は、アルバートさんに大きく頷く。
すると、周りは少し安心した空気になったんだけど、私はそんなに毒を飲みそうでしたか?
どう思われているんだ、いったい?
「チヒロ、お使いご苦労様。また、メーディやニヴのところには頼むと思うから、その時はよろしく頼むわね。」
「はい!」
フェリシアさんの分もミッション完了。
あとは、リリスさんと食べ物コンビ二人だけだ。
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