113話 アンジュ君アンヘル君とお料理教室
3人でオフィスに帰る前に、料理を作れる場所による。
場所はもちろん、私の部屋…。
アンジュ君とアンヘル君いわく、食堂があるらしいんだけど、急にキッチンを貸してくださいなんて言っても困るだろうと思い、私の部屋に行くことにした。
一人で生活するのに絶対必要ない規模のキッチンを持て余していたけど、使われる機会があって良かったね、キッチンさん。
そういえば、この部屋に人を招くのは、二人目だ。
自分の部屋に、他の人がいるなんて新鮮かも。
アンジュ君とアンヘル君も、キョロキョロしてる。
ネロの要望が、ミソマヨ、ピクルス、芋よこせ。
カイン君の要望が、トマト料理食べたい。
ちょっと面倒なネロの方から片づけよう。
私はアンジュ君とアンヘル君を呼び、まずは3人で手洗い。
食材を取り出し、二人に説明をすると、二人はすごく真剣に話を聞いてくれた。
野菜を切り、芋を揚げて、ミソマヨを作り、ピクルスを漬ける。
二人はどんどん出来上がる料理に目をキラキラさせていた。
そうそう、さすが異世界の品物が集まる商業街なだけのことはある。
調味料の「さしすせそ」はもちろんのこと、ソースやケチャップ、つゆにドレッシングも見つけたんだよね。
これらを見つけた時、絶対また来てやろうと心に決めるくらい私は、調味料が好きなのだ。
食の楽しみが広がりそう。
アンジュ君とアンヘル君の口にミソマヨを付けた野菜スティックを運んであげる。
恐る恐る口を開く二人の反応は、とても初々しい。
最初は、メルもネロもこんな感じだったっけ?
「ん」
「おいしい…」
「こっちもどうぞ」
今度はフライドポテト。
揚げ物って自分の部屋ではあんまり作りたくないものなんだけど、二人の顔を見ると作ってよかったと思う。
もちろん作りたくない理由は、片づけるのが面倒くさいからだけど。
それを上回る二人のおいしそうな顔。
カイン君に作る、トマトチーズトーストは、二人のトッピング。
トマトとチーズあとツナマヨを二人は丁寧にのせていく。
私は、マヨネーズバージョンやほかのトッピングを試してみよう。
ゆで卵とマヨネーズをあえたものや、野菜のトッピング。
これは、トーストというよりもサンドイッチになってきているような気がする。
まぁ、おいしいからありでしょ。
こうして、トーストをオーブンで焼くのを二人はオーブン越しに噛り付いてみていた。
チーズがドロッとしてきたり、マヨネーズに焦げ目が付いたり、その変化を楽しんでいるみたいだ。
オーブンの音が鳴り、トーストを取り出す。
カイン君たちにも、転送装置を使っての移動なら、熱々のまま料理をオフィスに持っていくことが出来ると思う。
でも折角だし、二人にはここで伸びるチーズを体験してもらおう。
市場でもチーズは大人気だったみたいだし、食べたことはあるとは思うんだけどね。
「はい、二人とも食べてみて。」
私は、二人にトマトとチーズが乗ったトーストを渡す。
二人は、私からトーストを受け取ると勢いよくかぶりつく。
最初のころの戸惑いが消えてるなぁ。
「チヒロ、チーズ伸びる」
「すごい長いよ、チヒロ」
モゴモゴしていているけど、こんな感じのことを言ってるのだろう。
それにしても…
そんなにチーズって伸びるものだっけ?
二人はいまだにチーズを切るためにチーズを口の中に入れて、トーストと格闘している。
異世界のチーズは熱を通すと馬鹿にならないくらい伸びると…。
覚えておこう。
二人とも頑張れ。
ようやくチーズの終わりを迎え、小さい口をリスみたいにパンパンにしながら一生懸命もぐもぐしてる。
私も一口味見しよう。
トーストを切って、一口食べるとトマトの酸味とチーズの濃厚さがちょうどいい。
それに、チーズがめちゃくちゃ伸びる。
一口サイズですら、こんなに伸びるのであれば二人は大変だったかもな。
このチーズ面白いかも。
アンジュ君とアンヘル君は、トーストをきれいに食べ切った。
野菜スティック、ピクルス、フライドポテト、そしてトーストをぺろりと平らげてしまう二人を見て、結構食べるんだなと思った。
味見という名の食事が終わり、どれもおいしくできたことを確認する。
二人も頷いてくれてるし、大丈夫なのだろう。
「完成だね」
「うん、完成」
「おいしかった」
私がそう告げると、二人は大きく頷いてくれた。
「二人とも手伝ってくれて、ありがとう。」
これでお使いの品がすべてそろった。
さぁ、トーストやフライドポテトが温かいうちにオフィスに向かおう。
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