109話 コスモスの徒歩移動は新鮮
私たちは、次のお使いを完遂すべく、市場の方に来たんだけど。
露店のお店がたくさん並んでいて、いろんな物が売っている。
さすが、大型の商業街なだけあるな。
すごい、賑わっている。
お祭りみたい。
これは、二人と離れたら、めぐり合うのが大変だろうな。
「チヒロ、はぐれない様にね」
「手を繋ぐ?チヒロ。」
そして二人にまで心配されたし。
そんなに、ぼぉーっとして生きているつもりはないんだけどな。
まずは、リリスさんのコルクボードを探す。
「コルクボードなら、雑貨店」
「あっちだよ。」
さすが、元お使い担当の二人である。
心当たりがあるのか、人込みを縫って歩いて行った。
「いらっしゃい。」
着いた先には、優しそうなおばあちゃん。
「おばあちゃん、コルクボードってこっちに持ってきている?」
「あぁ、あるよ。ほら、どうぞ。」
「ありがとう、おばあちゃん。」
「チヒロ、お支払いして」
アンジュ君が物を受け取り、アンヘル君が私に支払いを促す。
アンジュ君の言っていた、こっちに持ってくるってなんだろう。
「ここの市場は、自分の店から品物を持って来て、お店の場所を借りて、物を置いている店が多いんだ」
「元々、お店を持たない人たちもいるから、全部がそうではないけど。」
へぇ。
いわば、フリーマーケットみたいな物かな。
自分の店から、人通りの多いこの市場に物を持ってきて売る。
「異世界から物を売りに来ている人たちは、このシステムが助かっているみたい。」
「そして、元々コスモスでお店を開いている人たちも、このシステムに乗っかって、今みたいな賑わいになってる。」
確かに、異世界からの物売りは、いちいちお店を構えずに露店として売った方が効率よさそう。
しかも、フリーマーケットのシステムの何がいいって、お店の人とお客さんが、しっかり話ができるところがいい。
異世界の物を手に取った時、その場でそれが何かを聞けるし。
いいシステムだ。
「おばあちゃんが、品物をこっちに持って来てくれていて良かったね。」
「もしなかったら、もう少し時間がかかってた」
「あの、雑貨屋のおばあちゃんのお店って、遠いの?」
二人がほっとしているのを見て、私は首を傾げた。
「遠い。だから、おばあちゃんお店に行くなら、運び屋に頼まないといけない。」
運び屋?
また新しい単語が。
アンジュ君は、人差し指を空に向けた。
そこには、飛んでいる車。
「あれが、運び屋。人も荷物もしっかり運んでくれる。」
それは、もしかして空飛ぶタクシーでは?
おぉ!
異世界って、すごい。
「それか、別のお店をこの辺りで探す。どっも、時間かかったと思う。」
いつも、コスモス内で転送装置にお世話になっているから、時間がかかる移動って新鮮かも。
「そういえば、センタービル以外には、転送装置ってないの?」
私が、二人に問いかけると、二人はぎくりと顔を逸らす。
え?あるの?
この徒歩移動は、いったい…。
「チヒロはまだコスモスのこと知らないから、歩いて来いって」
「フェリシア達が言ってた」
なんだ。
結局、私のためにペナルティもお使いだったのかな。
「でも、転送移動するためにも、装置のところにはいかないといけないから、センタービル内よりは、不便だよ。」
「街中で、そこら中に魔法陣を張られると困るから…。だから、運び屋という仕事が成り立っているし。運び屋は民間部の仕事で、町での移動制限を免除してもらってる。運び屋に頼むと、ほんとは移動早いよ。」
公共タクシーって感じかな。
流通も、運送もすごくしっかりしてる。
「ここが、食べ物がたくさん売っているところ。」
コスモスの話をしながらだと、徒歩でも早い気がする。
そして、そこには、食材がずらりと並んでいた。
「ここは?」
「いろんな食材が手に入るお店だよ」
この中から探すの…?
嫌なんだけど…。
私は、この広さに圧倒された。
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