108話 毒と薬は表裏一体?
私は、四人の戯れをそっと見ていたのだが、その光景も突然終わりを迎える。
「いってぇ…ニヴ、おま…」
何が起こったか簡単に言うと、ニヴ君が男性の頭を盛大に叩いた。
椅子の上から、ジャンピングアタック…
あれは、痛いだろうな。
「馬鹿か、お客さん来てるって言ってるだろ」
そういえば、ここにトリカブトを買いに来ていたんだっけ。
四人がワチャワチャしている間、私は、あまりにもゆっくりしていたから、目的を忘れていたよ。
そして、男性と再び目が合い、男性は、今度はヘラりと笑った。
「は、はじめまして…でしたよね。すみません。メーディと言います。」
「はじめまして。チヒロです。」
なんか、やっと目的が進んだ気がするけど。
さっきのやり取りも、見ていて楽しかったので大丈夫です。
子ども四人の戯れみたいな感じで。
「メーディとニヴは兄弟」
「二人で、この薬屋をやっているんだ」
メーディさんに解放された二人は、ぼさぼさの髪の毛のまま、私の近くに来て説明してくれる。
やっぱり兄弟なんだ。
私は、二人の髪の毛を直し、メーディさんとニヴ君の方を見る。
「待たせてごめん。それで今日は、何を買いに来たの?」
私を見て、申し訳なさそうにするニヴ君。
「大丈夫です。今日は、えっと、トリカブトを買いに来たんだけど」
「トリカブト…フェリシアさんの?」
フェリシアさんも知り合いなのね…。
企画宣伝課が、顔が広いのかな…。
「フェリシアさんは、常連でアンジュとアンヘルの二人が買いに来るんだよ」
私が驚いていると、メーディさんがそれに気が付き教えてくれた。
アンジュ君とアンヘル君が、いつもお使いしているの?
見たい。
というか、フェリシアさんって常連なんだ。
しかも、トリカブトといったら、フェリシアさんに結び付くほど…。
何回も思うけど、ほんとに何に使っているの?
「今、取ってくる」
悶々と考えていると、ニヴ君が奥の部屋にトリカブトを取りに行った。
「毒は薬にもなるって聞いたことある?」
へ?
私は、メーディさんの言葉に首を傾げた。
「フェリシアさんが毒草の常連と聞いて、不安そうな顔をしていたから」
そう言って、優しく微笑むメーディさん。
慰められてしまった…
残念なイケメンが、イケメンに…
「フフッ」
「あれ、おかしなこと言った?」
「いえ、ありがとうございます」
メーディさんの優しい気遣いに、思わず笑ってしまった。
「毒と薬は表裏一体であり、薬も用途を間違えれば害があるし、毒はちゃんと知識を持って扱えば薬にもなる。本当のことなんだけど…」
「疑っていませんって。私も聞いたことがあります。」
薬も飲みすぎると、危険ですって地球でも言われていた。
今回も結局、何に使うか分からないわけだし。
メーディさんが、言ったみたいに、薬として使うのかも。
「まぁ、フェリシアさんが何に使っているは、知らないけどな。」
……
やっぱり、メーディさんは、残念なイケメンでいいと思う。
さっきまでの慰めシーンをぶっ壊していく豪快さは、悪くないと思うけど。
アンジュ君とアンヘル君が私の横で、メーディさんを鼻で笑った。
こんな二人初めて見たよ。
「あ、えっと?」
アンジュ君とアンヘル君を見て、戸惑うメーディさん。
「何やっているんだ?」
奥から出てきたニヴ君がこの空気を察して怪訝そうに言った。
「いや、なんでもないぞ」
「メーディに聞いてないけど?」
メーディさんの言葉がニヴ君によって、バッサリ切られる。
「はい、これ。フェリシアさんは、大丈夫だと思うけど、これを本人に渡すまで、取り扱いには気を付けて。」
「分かった。」
袋の中には、瓶に詰められたトリカブト。
これを袋ごと受け取った。
「ありがとうございました。じゃあ、二人とも次のお使いに行こうか。」
私は、メーディさんとニヴ君にしっかり頭を下げて、お礼を言い、アンジュ君とアンヘル君に次を促す。
初めの四人の戯れで、結構時間を取ったので…。
「うん。」
「またね。メーディ、ニヴ。」
アンジュ君とアンヘル君は、メーディさんとニヴ君に手を振る。
「また来るだろ?」
ん?
ニヴ君は、私の方を見て言っているな。
薬のお世話になることはあるだろうけど…
「チヒロ、次のお使い担当だろ?」
「あー、確かに。アンジュとアンヘルも、しばらく来ていたもんな。」
「あぁ、企画宣伝課の恒例なんだろ?」
「昔、ネロやカイン、リリスも来ていたな。」
そうなの?
このお使いって、担当制だったのね。
道理で知り合い多いわけだよ。
でも、みんなこうやって、いろんな人たちと知り合っていったのかな。
私は、改めてメーディさんとニヴ君に向き直る。
「また、来ます!」
私が笑顔で言うと、メーディさんとニヴ君が、微笑んでくれた。
メーディさんは、親指を立てて、グッとポーズをして、ニヴ君は仕方ないなといった風に。
こういう出会いがあるのなら、お使い担当も悪くないかもしれないな。
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