107話 天使と残念なイケメン?
「お邪魔します」
ドアを開けて、中に入る。
光はついているけれど、部屋の中には誰もいなかった。
私は、部屋の中をきょろきょろと見まわした。
棚の上には瓶に詰められた薬草がびっしりと置かれている。
奥の方にもよく見ると引き出しがたくさんある。
あの中も、薬草なのかな。
「誰もいないね」
「この時間は、店を開いてるはず」
「どこいったんだろう。」
これは出直すしかないかもしれないと思っていたら、お店のドアが開く。
そこにいたのは、アンジュ君とアンヘル君くらいの身長の男の子。
その男の子は、私たちを見て首を傾げた。
もしかして、お客さんだろうかと思っていたら、アンジュ君が男の子に飛びついた。
アンヘル君も男の子の傍に寄る。
「ニヴ」
「ニヴ、どこに行っていたの?」
えっと、こちらもお知り合いなのね。
アンジュ君、アンヘル君って、思ったよりも顔広いな。
すっごい…
かわいらしい男の子が三人で戯れているんだが。
「いらっしゃい、アンジュ、アンヘル。それから…」
二人に押しつぶされながら、挨拶をして、私の方に目を向けた。
「はじめまして。チヒロと言います。」
「はじめまして。俺はニヴ。よろしく。」
アンジュ君、アンヘル君、二人とも死んじゃいそうだから、手加減をしてあげて…。
「ニヴ。お店、開けっぱなしだった。いいの?」
アンヘル君の言葉に、ニヴ君は驚いた顔をして、そのあと二人をはがす。
はがし終わった後、ムッとした顔をして、部屋の奥へと入っていった。
あまりの素早い動きに、何事かと呆気にとられていたが、アンジュ君とアンヘル君はあきれた顔をしていた。
すると、奥からドゴンともの凄い物音が聞こえた
な、なに?
何の音?
アンジュ君とアンヘル君の手を握り、いったんお店の外に出ようとして、逆に二人に強く手を握られ引き留められた。
「メーディ、お客さん来てる。」
「うそっ、気が付かなった。」
「気が付く訳がないだろ、物音が聞こえないように耳栓なんかしてるんだから」
「痛いっ。ニヴ、すまんって」
物音とともに大きな声が響く。
ニヴ君のほかにも、人がいたのだろうか。
バコッ
「いっ!!!!」
大きな音とともに、悲鳴のような声が聞こえて、奥は静かになった。
え、どういう状況?
一旦出直したい。
この状況を整理する時間が欲しい。
でも、アンジュ君とアンヘル君が手を握っていて、それができない。
「ごめん、待たせた」
すると、奥の方から再びニヴ君が現れる。
なんかすっきりした顔をしているんだけど…。
そして、ニヴ君の後ろからゲッソリとした背の高い男性がついてきた。
男性は、私たちを見て、目を瞬かせ、状況を理解したのか、にっこりと笑った。
「いらっしゃいませ」
いやいや…。
そんな、きりっとした顔をされても。
顔はすごく整っているのに…
あ、残念なイケメンだ。
それにしても、なんかニヴ君とこの男の人、似ている気がする。
ニヴ君も男性も、薄めの水色の髪で水色の目。
顔もよく見ると似ている気がする。
まぁ、ニヴ君がキリっとしたクールな顔に対して、後ろの男性は、どちらかというと表情豊かな感じがする。
男性の見た目は、私と同じか、もしくは少し上くらいに見える。
アンジュ君とアンヘル君が男性の傍に寄ると、男性はにっかりと笑って二人の頭を撫でた。
「アンジュ、アンヘル、よく来てくれたな。いらっしゃい。」
「メーディ、また寝てたの?」
「懲りないね、メーディ」
二人は、いつもの容赦のない言葉遣いになっているけれど。
男性は、ギクリとして二人の頭をなでるのを一瞬止めたが、ごまかす様にして、さっきより雑に撫でた。
「なにするの」
「メーディ、ねぇ。」
「メーディ、アンジュとアンヘルを放せ」
「なんだよ、いつも撫でてってくるのに。」
何となくだけど、アンジュ君とアンヘル君は、この男性のことも好きなんだろうな。
なんか甘えている感じ。
やっぱり、二人とも顔が広い。
それにしても、あの男性は、ニヴ君の兄弟とかかな。
いまだに二人は男性に豪快に撫でられているけれど、アンジュ君とアンヘル君がいいのであれば、それでいいやと私は、四人を眺めていた。
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