106話 魔法と錬金術の違いって?
「チヒロ、お会計してみて」
そうだった。
私は、異世界で初めて自分で物を買うのだ。
どうすれば…。
「エアの買い物が初めてなの?」
「はい、買い物の必要がなくて…」
あまりにも言いにくい理由に、思わず口ごもる。
アリスさんは、首を傾げたが、あまり深く追求してこなかった。
「なるほど。支払方法はどうする?」
「スキャンの方」
「了解。5万エアね。デバイスの決済のページを表示して、スキャンのボタンを押してそこの板にかざしてみて。」
アリスさんとアンジュ君の会話は、さっぱりだけど、私が言われたことは分かる。
デバイスの画面を決済画面にして、スキャンを選択。
言われたところにあるのは、透明な板。
ピピッ
「音が鳴ったら、支払いが完了した合図だよ。」
おぉ。
「今回は、デバイスに入れたお金を使う支払方法。エアバンクから直接支払う場合は個人番号が必要で、そこの板に数字を打ち込んでもらって、支払い終了ね。」
電子マネー決済とクレジット決済って感じだね。
異世界で初の買い物、出来たよ。
出来ることが増えていくって、なんか嬉しい。
「はい、これ。魔法石、忘れないように」
「ありがとうございます」
私は、アリスさんから魔法石を受け取る。
「アリス、ありがと」
「また来るね」
「師匠と待ってるね。」
二人は、アリスさんに手を振り、先にお店を出る。
「チヒロさんもまた来てね。」
「はい」
「錬金術に興味があったら、話もできるし。」
へ?
「錬金術は、いろんな分野があるけど、どの分野においても疑問を持つことは大切と師匠が言っていたの。マナ・ストーンと魔法石の違い、そこの違いを気にせず使う人は多いって。私も当時同じことが気になっていたんだ。」
アリスさんは、照れくさそうに笑っている。
「また、遊びに来て。」
そして、ニッコリと笑いながら右手を出した。
「はい、ぜひ。」
私は、アリスさんの右手を取り、力強く握手をした。
「チヒロ、まだ?」
「置いていっちゃうよ、チヒロ」
しびれを切らして、ひょっこりとドアの隙間から顔を出すアンジュ君とアンヘル君。
アリスさんと見つめ合い、フフッと笑い合った。
その様子を、アンジュ君とアンヘル君は、不思議そうに眺めていたけど。
錬金術のお店を後にして、次に向かうは薬師のお店。
「それにしても、錬金術って面白そうだよね」
「チヒロ、興味もったの?」
「実際話を聞いてみて、興味は出たな。いままで、そう言ったものには縁がなかったけど。」
私がそう言うと、アンジュ君とアンヘル君は少し考えて口を開いた。
「錬金術と魔法は全くの別物って、アルバートやヘルメスが言ってた」
「実際は魔力という在るものを使ってはいるけど、魔法は無から有を生み出すのに対して、錬金術の基本は、有から有を生み出すことって。」
魔法は無から有に対して、錬金術は有から有。
どこかで、錬金術は科学だと聞いたことがある。
「興味があったら、聞きに行ってみるといいよ。」
「その時は、僕たちもついていく」
「二人も錬金術を教わりに行ってるの?」
アンジュ君もアンヘル君も錬金術に詳しそうなんだよな。
「ううん。教わってるわけじゃない。」
「でも、ヘルメスが錬金術の話をしてくれるの。知らない話は面白いよ。」
二人の幸せそうな笑顔。
天使の二人でも、新しい知識を得ることはやっぱり嬉しいことなのかな。
観光部の人たちって、自分で生き残るすべを持っているって言ってたけど、アンジュ君とアンヘル君は、どんな力なのかな。
「分かる。知らなかったことを聞くのって面白いよね。」
私の言葉に、アンジュ君とアンヘル君は大きく頷いた。
3人で錬金術の話で盛り上がり、商業街の道を進んでいく。
「あそこが、薬師のお店」
アンジュ君は、トタトタとお店の前まで走っていく。
アンヘル君は、私の手を引いてアンジュ君の後をついていった。
今回もレンガ造りのお店だな。
商業街全体がレンガ造りの店に合わせているのかな。
窓のつき方や外の出店のようなものがあったりなど、外観は少しずつ違っているけど。
私は、次の目的であるトリカブトを手に入れるべく、ドアをたたいた。
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