103話 異世界での初めてのお使い
「チヒロ、ちょっと来てくれるかしら?」
私が、デスクトップデバイスに向き合い、事務作業をしているとフェリシアさんに声をかけられた。
なんだろうと思い、私は、フェリシアさんのところに向かう。
そして、フェリシアさんから渡されたのは、財布と封筒。
なにこれ?
いきなり渡されたので、なんのことだか全く分からず、首をかしげる。
「チヒロ、この前、遅れてきたでしょ?」
この前…?
あぁ、カイン君とリリスさんの紹介があった日ね。
発覚した事実が多すぎて、すっかり自分がやったことを忘れていた。
そういえば、お説教は後にして…ってフェリシアさんも言っていたな。
「思い出した?」
「あの時は、大変ご迷惑をおかけしました。」
「そんなことは、いいのよ」
そんなことなの…?
なのに、ペナルティは、しっかりあるんだ。
いや、私が悪いし、ちゃんと受けるけど。
どんなことしなくちゃいけないのか、結構怖いんだよね。
ここの人たちの頼みって、容赦のない事が多いから。
「お使いに行ってきてもらおうかなと。」
お使い…?
割と普通というか、頼まれごととしては、簡単な部類なのでは?
「封筒の中に買ってきてほしい物を入れてあるから、お願いね。」
なるほど。
それで、財布と封筒。
なんで、ご丁寧に封筒に入っているのだろうか。
「それから、案内役にアンジュとアンヘルを連れて行っていいわよ。今日は、仕事が比較的に落ち着いているし。」
落ち着いている?
私さっきまで、デスクトップデバイスで書類と格闘していたのですが…。
言われてみれば、フェリシアさん達は、いつもより顔が生き生きしているように見える。
え?
格闘していたのって、もしかして私だけ?
でも、フェリシアさん達、私の倍以上の仕事を捌いているよね。
いやぁ、すごすぎでしょ。
そういえば、ネロがいないな。
「今日は、ネロじゃないんですね。」
「ネロは、今、別の用事でいないのよ。だから、アンジュとアンヘルに頼もうと思って。」
フェリシアさんが、そう言うと行く準備をして部屋の奥から出てきた、アンジュ君とアンヘル君。
セーラー服に、紺のセーラー帽を被っていた。
え、かわいい。
「よろしく、チヒロ」
「チヒロ、行こう」
そうじゃなくて…。
アンジュ君とアンヘル君とお出かけだと、一瞬喜んだけど、それでいいのか?
だって、私の寝坊からの遅刻へのお説教代わりにお使いってことでしょ?
アンジュ君とアンヘル君、完全に巻き込んでしまっているじゃん。
「私のペナルティなのに、アンジュ君とアンヘル君を付き合わせてしまっていいんですか?」
「アンジュとアンヘルが行きたいって言ったのよ。連れて行ってあげて。」
フェリシアさんにそう言われ、アンジュ君とアンヘル君を見るとキラキラした目で私のことを見ていた。
ま、眩しい…。
二人がそういってくれているのなら、私から断る必要もないよね。
「二人とも、お願いしていい?」
「うん」
「任せて」
私が、アンジュ君とアンヘル君に聞くと、アンジュ君は誇らしげに、アンヘル君はちょっと照れ臭そうに返事をしてくれた。
「よ、よろしくね。アンジュ君、アンヘル君」
天使のどや顔と、天使の照れ笑いをいただきました。
思わず、動揺してしまったよ。
この子達、ほんとに天使なんだよな…
いや、ほんとに天使なんだけどね。
いままで、ネロと一緒にいて、いろいろ助けてもらうことが多かったけど…
いや、むしろ、ネロに引っ張って行ってもらっていたけれども。
今回はアンジュ君とアンヘル君が一緒ということだし。
私もしっかりしないといけないな。
この子達の笑顔は、私が守る。
天使の表情を浮かべた二人を見て、気合を入れる。
いつもの猫ちゃんとの癒される旅ではなく、両手に花のウハウハのお使いに、私は浮かれ気分…
いや、気合十分で挑むのであった。
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