102話 次の旅行先が決まりました
「まぁ、王族と仲良くなってくればいいというのは、忘れてしまっていいよ。これは、無茶が過ぎるから。さっき言った、やってほしいことが観光と交流というのも少し違う。」
ん?
「本当に見て来てほしいのは、観光として行くことが出来そうかだね。」
「どういうことですか?」
ゲートが開いたのに、観光ができないかもしれないの?
「先ほども言ったが、元々、異世界に行く文化があったわけじゃない。となると、そういう地元の人たちとのトラブルとかあるかもしれないだろ?具体的なランクも決めないといけないし。」
「え?ランク決まってないんですか?」
私、まだEランクだから、そこしか行けないけど。
「いや、決まっては、いる。魔物などの危険性もないし、地元の人々の人柄も良い。そして、世界として、しっかり形を保っている。例えば規則とかね。大きな争いが起きているわけでもない。だから、Eランクと営業課は見ている。けど、実際の人柄とか、土地柄って難しいだろう?だから、見て来てほしい。異文化の受け入れ態勢とかね。」
仕事としては、納得かな。
私の仕事であるかは、別だけどね。
それに、観光できるかどうかというのが、企画宣伝課の仕事なのも、そうなの?という感じである。
この仕事を私に回したこと、根に持っちゃうんだから。
「あわよくば、王族を…」
いや、無理ですって。
あわよくばという感覚で近づいていい相手じゃないですって。
下手したら、罪に問われて断罪されるって。
そんな、綱渡りしたくないよ。
「まぁ、安心して。向こうの人たちとは、ゲートを通じてすでに何度かやり取りはしているから。変なことが、起こることはないだろうし、楽しんで観光してきてくれればいいよ。あまり、気負わずにね。だって、その世界に初めて旅行に行く人なんだから。楽しまないと損だろう?」
旅行第一号ってこと?
それは、なんか特別感ないか?
「単純だな」
「ネロ、おだまり」
特別という言葉に人はだいたい弱いんだよ。
私の単純な思考に、隣からため息が聞こえた気がするけど、気にしない。
だって、行くことが断れないなら仕方ないし。
せっかくの旅行だから、楽しんでくるしかないでしょ。
「それで、どんな所なんですか?」
「いいところだって言っていたけど?」
「えっと?」
どう、いいところなのか聞きたいんだけど。
「営業課って、ゲート開通とランク決めまでが仕事だから、その先ノータッチのことが多くてね。」
それでいいのか、営業課よ。
確かに、それじゃあ、その世界のこと分からないわ。
「でも、面白いことを言っていたな。」
「なんですか?」
「太陽と月。それから自然だと。」
なんか、めちゃくちゃ意味深なこと言われたんだけど。
そういうこと言われると、惹かれちゃうじゃん。
太陽と月ってなんかロマンチックだし、そこに自然って。
どんな繋がりがあるんだろうって、妄想しちゃうでしょ。
私は、しっかり新しい異世界に興味をそそられてしまった。
営業課やるな…。
「単純だな」
うるさいぞ、猫ちゃん。
まぁ、一つツッコむとしたら、自然って範囲広くない?とは思わなくもない。
自然なんて言ったら、だいたい当てはまる気がするけど…。
それとも、異世界は別なのか?
ミシュティは、自然という言葉には該当しないもんね。
どっちかというと、コスモスも自然ではない気がする。
もしかしたら、割と的を射た情報なのかもしれない。
いいではないですか。
「チヒロ。二人にこの仕事を任せてもいいかな?」
断る流れは、一応あったんだ。
でも、ここまで話を聞いたし、興味がそそられることも聞いた。
「はい。」
これは、行く、一択でしょ。
「ネロもいいかい?」
「俺は、チヒロの教育係だからな。」
「へぇ、アルバートが言っていたけど、ほんとにいいコンビなんだね。」
そう言われると、嬉しくなるよね。
ネロは、ツンとしちゃうんだけど。
「じゃあ、詳細の紙をまた送るね。引き受けてくれて、ありがとう。」
そういうと、アスガルさんはオフィスの外へと向かう。
「アスガルさん」
私の声に、アスガルさんは振り返る。
「旅行先の名前は、なんて言うんですか?」
アスガルさんは、私の問いに微笑みながら答えた。
「プティテーラ。」
アスガルさんは、そう言ってオフィスを出ていった。
「プティテーラ…」
どんな場所なのかな。
私は、「プティテーラ」という旅行先へ期待に胸を膨らませるのだった。
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