101話 やっぱり、今回も盛大に巻き込まれた気がします
私が、アスガルさんに疑いの目を向けていると、奥の方からネロがやってきた。
「フェリシアに行けと言われたんだが、なんか用か?」
「ちょうどいいところに、来たね。ネロも交えて話をしようか。座ってくれる?」
ネロも疑問に思ったのだろうが、しぶしぶ私の横に座った。
「ネロは、この紙を読みながら聞いてね。」
そう言って、アスガルさんは、さっきまで私が読んでいた、新ゲート開通のお知らせの紙をネロに渡した。
「さて、今回やってきてほしいのは、さっきも言ったけど、観光と交流。観光は、その土地の魅力を見てくること。交流はその土地の人たちと仲良くできるかどうか、見極めること。この二つをやってきてくれれば、あとは好きにしていいよ。」
この二つをやればいいって…その二つが大変なのでは?
「こういう交流って、もっと偉い人が行くものなのでは…」
「今回は、アルバート推薦だね。文句を言うなら、アルバートにしてくれ。」
アルバートさん…。
外交なんてきついですって…。
「あの…、もし異世界交流で関係悪化なんかになったら…」
「うーん。怒られるでは、すまないかもね。」
ねぇ、なんでこの仕事、私に回ってくるの…。
「そもそも、新ゲート開通に伴う異世界の反応は、様々だ。今回行く世界も、魔法技術はあるが異世界を転移する技術は、持っていなかったらしい。営業課が交渉に行くためにその土地を降りたとき、異世界に転移することが、技術で出来ることを説明するのも結構大変だったらしい。」
確かに。
元々、私も異世界に日常的に飛べる文化にいたわけじゃないし。
むしろ、物語の中だけの話というか。
それが技術で出来るって言われても、当時の私は信じなかっただろうな。
「そこでなんだけど。」
「…なんでしょうか」
聞いてはいけない気がする。
絶対聞いてはいけない気がするんだけど。
「新ゲート開通に伴い、パーティが開かれるらしいんだ。そこには、偉い人達も来る。例えば、王族とか貴族とか」
「なるほど…それで…?」
「ミシュティの時みたいに、仲良くなってくれば外交がしやすくなるのではって。」
いや、無理でしょ。
私とネロは、思いっきり顔をひきつらせた。
「いやいや、それは舐めすぎですって…」
「そんなにうまくいくわけが、ないだろう…」
「そこは、王族の人たちと仲良くなれるんですか?とか言ってくれないかな」
言うわけなくない?
「僕に言わないでくれよ。僕も正気かと思ったさ。そうコスモス上層部の一人が言っていたのを、僕が伝えているだけ。正直、こんなこと僕も伝えるのはだるいんだよ。」
…やさぐれたアスガルさん。
苦労しているのですね。
というか、コスモス上層部は、頭が悪いのか?
そういえば、上層部の人って確か、異世界についてあることないこと言って、宣伝課を解体に追い込んだって、私がコスモスに来た当初に聞いた気がするな。
どうして、こんなに私の上司たちは優秀なのに、王族と仲良くなってきて?なんて無理そうなことを言ってくるのだ。
そもそも、上層部の一人って…総意じゃないの?
なのに、なぜそれでこの案に決まってしまうのか、不思議でならないんだけど。
「正直な話をすると、この話をアルバートに持っていったとき、アルバートにもないなと言って、断られているんだよね。その場に、フェリシアもいたし。でも、誰かしら行くしかないから、どうしようと思っていたところに、たまたま王族と仲良くなって帰ってきたチヒロがいたという。いやぁ、これには驚いたね。」
アルバートさん…
フェリシアさん…
おかしいと思ったんだよね。
お土産を渡すときに、どうしてあんなにグラースさんとメルの話に持っていこうとしたのかと。
こうなると、話の流れに気づけず、どや顔をかましていた過去は忘れてしまいたい。
許すまじ!
…いや、完全に周りが私の上手でしたね。
「あの…、断るという選択肢は…」
私がアスガルさんの方をちらりと見ると、アスガルさん必殺、ノーなんて言わせない笑顔を繰り出してきた。
断ったら、何させられるんだろう…。
「ネロ…」
「俺は、完全に巻き込まれたんだが」
いや、私も巻き込まれただけだよ。
「大丈夫、旅行先自体は楽しいところだって言っていたしね。」
こうして、私の次の旅行先が決定したのだった。
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