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美女に子種をせがまれて  作者: ぬ~ぶ
30/46

#30 いざ、ヒュルリの洞窟へ


「よし、これでヒュルリの洞窟へ行けるぞ」


 わしは在りし日のオウムの言葉を思い起こした。


『ヒュルリの洞窟はな、コンババタウンから北西に15キロほど行った所にあるんだぜ』


 ちゅうことは、ここからだと北東の方角じゃな。


 わしはチャンリンシャン注射を太股(ふともも)に打つと、ヒュルリの洞窟目指して歩き始めた。


 気づけば、既に夜は明けておった。


 沼地を抜けると、ようやく足場も固く締まってきてのう。

 やがて、広大な草原地帯に至ったんじゃ。


 雑魚モンも現れないんで、どんどん突き進んでおったら……


 突如 カンテーンが出現し、戦闘画面が立ち上がった。


「なぜじゃ? 弱敵を寄せつけん『イノバのベルト』を巻いておるのに」


 とりあえず、敵のステイタスをチェックしてみる。


――――メタルカンテーン――――

レベル: 30

HP :235

МP :225

こうげき力:141

しゅび力 :121

力づよさ :101

すばやさ : 91

ぶき :なし

たて :なし

よろい:なし

どうぐ:ウルティモのつるぎ

まほう:シャキリ

    アチャー

    マキロソ

    チベター

    マウジー

    ヤラセン

    ゴロピカ

    トコトコ

    イネコラ

    ビンビン

    アマタツ

おかね  : 4700

けいけんち:72311

――――――――――――――――


「なにぃ~ッ!? レベル30じゃとぉ?」


 攻守共に、わしのを遥かに凌ぐ数値じゃ。

 魔法も全種マスターしとる。


 ちゅうか こいつ、ただのカンテーンじゃないぞ。

 メタルカンテーンじゃ。


 確かに、金属っぽい質感をしとるわ。


「こりゃ、いよいよ やばいかもしれんぞ……」


 わしはまず、ヤラセンで敵の魔法を封じることにした。


 じゃが、間違って“じゅもん”→“マウジー”と選択し、実行してしもうた。


<ゆうしゃは マウジーのじゅもんを となえた!>

<ピロリロリィ~ン♪>

<ゆうしゃは たっぴつに なった!>


「くそッ、こんな時に達筆になってどうする。アホかッ」


<メタルカンテーンは とんずらした!>

<タッタッタッタッ…>


「えっ?」


<メタルカンテーンは ウルティモのつるぎを おとした!>

<ゆうしゃは ウルティモのつるぎを てにいれた!>


「マジか?」


 何かよう分からんが、とにかく わしは『ウルティモの剣』っちゅうのを獲得した。


 さっそく装備してみる。

 じゃが、攻撃力や力強さの数値は変わらんかった。


「まぁ、ええか……」


 わしは先を急ぐことにした。


 草原地帯も限りに差し掛かると、今度はひび割れた荒野が広がりだした。


 青い太陽が昇るにつれ、前方の(かすみ)が取れてゆき 視界も晴れてゆく。


 そしたら、巨大な岩山が眼前に浮かび上がったんじゃ。


 鋭い傾斜でそそり立つその岩山は 不気味に口を開いておった。


 近寄って耳を澄ますと、ヒュルリヒュルリと風鳴り音が聞こえてくる。


 うむ、ここがヒュルリの洞窟の入り口に相違ない。


 わしは臆することなく その(うつ)ろな穴へ踏み入った。


 途端に生暖かい風が全身にまとわりついてくる。


 わしは ゆうさくライターを点火させた。


“ブオォ~~~~~~~ッ!!”


 真っ赤な炎が空中高くに燃え上がった。


「おぉ、こりゃ凄い。まるで火柱じゃな」


 それはたいまつなんかとは比べ物にならん猛火じゃった。


 これさえありゃ、たとえどんな烈風が吹こうと安泰じゃろう。


 ちなみにオウムの話では、オイル満タン状態なら 点けっぱなしで12時間は持つ、とのことじゃった。


 ゆうさくライターが照らし出す洞窟内部は、何とも神秘で異様な有り様じゃった。


 岩肌がどこもかしこも隆起沈降を不規則に繰り返しとってな、まるで何かの臓物(ぞうもつ)みたいじゃ。


 天井には赤褐色の鍾乳石がつらら状に垂れ下がっとるが、今にも降ってきそうでおっかない。

 だから、わしは盾を頭上にかざしながら歩を進めた。


 すると間もなく、雑魚モン共が襲いかかってきた。


 クモやムカデを醜悪に擬人化したバケモンじゃ。

 レベルは、22から24ほどあった。


 対するわしはレベル20だったから、苦戦は必至と思われた。


 ところがどっこい 楽勝じゃった。


 痛快な一撃が頻発してくれたせいじゃ。


 4回振るったら、3回も出よる。

 やはり、この剣 相当な代物(しろもの)じゃわ。


 ウルティモの剣のおかげで不敵となったわしは、地中を邁進した。


 道は迷路の如く入り組んでおったが、そう複雑でもなかったし、また広大でもなかったから、間違いながらも何とか先へ進むことができたんじゃ。


 ルートは下層へ下層へと続いておった。


 終着点であろう最下層に近づくにつれ、雑魚モン共もその数と強さを増してゆく。


 そのうち、レベルが21に上がった。

 水上歩行ができる魔法 トコトコを覚えた。


 わしはさらに下層へ突き進んだ。


「それにしても、この洞窟 えろう深いな。大江戸線の六本木駅くらいあるんじゃないか?」


 一体、どこまで下らせりゃ気が済むんじゃろう。


 さすがに嫌気が差してきたわしは、つと立ち止まり 辺りを見回した。


 そしたら、すぐ横手の岩壁に鉄の扉を見つけてな。

 わしゃ、鉄輪の取っ手を力任せに引っ張ったんじゃ。


 鉄扉(てっぴ)は砂埃を上げ、難なく開いた。


 その先には30畳くらいの四角い空間が広がっておった。


 もちろん岩じゃよ、壁も床も天井も。


 しかし、凸凹(でこぼこ)はしとらん。

 コンクリートみたくツルンと滑らかじゃ。


 わしはその部屋にそろりと足を踏み入れた。


 入りきると、途端に鉄扉が「ガシャン」と閉まりよった。


 中は、完全なる無風じゃった。


 真っ暗ではなく、ほの暗い。

 部屋の四隅にかがり火が焚かれとるせいじゃ。


 わしは ゆうさくライターを巡らせながら部屋の中央まで歩を進めた。


 正面奥の壁に祭壇らしきものが見えた。

 その手前には黒塗りの棺桶も認められる。


「何だか今にもフタが開いて、吸血鬼なんかが出てきそうじゃな……」


 わしは思わず呟いたが、それは現実のものとなった。


 (ひつぎ)から起き上がってきたのは、黒いスーツに赤いマントを羽織った男じゃった。


 黒縁のメガネをかけとって、前髪はSの字にカールしとる。

 左右の口角からは鋭い牙を覗かせておった。


 男はゆっくりと近づいてきた。

 するとマントが明滅し、金属音を発し始めた。


 わしの手中のゆうさくライターも同様じゃ。


 てことは、こいつがケントで、今 羽織っとるのがケントのマントじゃな。


 わしは ゆうさくライターのフタを閉め 火を消すと、ジャージパンツのポケットにしまった。


 そして、ウルティモの剣を抜き 身構えた。


 じゃが、戦闘画面は立ち上がらんかった。


 ケントの奴が“試練の3番勝負”とかいうもんを提案してきたからじゃ。


 なんでもその勝負で勝ち越すことができれば、マントを譲ってくれるという。


 ほほぉ、面白い。

 わしは二つ返事で了承した。


 かくして、3番勝負の火ぶたは切られた。


 その第1戦目は『ミミズ踊り食い対決』じゃった。


 通常ならここで顔を青くして後ずさってたところ。


 じゃが、人肉まで食ろうたこのわしじゃ。

 もはや食えないもんなど何もなかった。


 さっそく、手下のコウモリらが長テーブルと椅子をセッティングする。


 わしとケントは並んで席に着いた。


 そこへ丼鉢(どんぶりばち)が運ばれてくる。


 ぱっと見は、うどん。

 けど、実際は極太の白ミミズじゃ。


 100匹くらいは入ってそうじゃな。

 うねうねと のたくっとるわ、気色の悪い……。


 制限時間は10分。

 1匹でも多く食った方の勝ち。


“カァーンッ!”


 試合開始のゴングが打ち鳴らされた。


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