#26 迫り来る終焉
――――ノラクーダ――――
レベル: 8
HP :75
МP :35
こうげき力:19
しゅび力 :19
力づよさ :10
すばやさ :10
ぶき :なし
たて :なし
よろい:なし
どうぐ:たからばこのカギ
まほう:シャキリ
アチャー
マキロソ
おかね : 250
けいけんち:1219
―――――――――――――
「ややッ。こいつ、宝箱の鍵を持っとるぞ」
「おっ、そりゃ渡りに船じゃないか。倒せば手に入るぞ」
「よぉし、見とれよぉ……」
わしはとりあえず“たたかう”コマンドを選択し、実行した。
<ゆうしゃの こうげき… スバッ!>
<ノラクーダに 20ポイントのダメージを あたえた!>
「ははっ、ええぞ」
<ノラクーダの こうげき…>
<ノラクーダは ツバを はきかけた… ドバッ!>
<ゆうしゃは うごきを ふうじられた!>
「うわッ、汚ぇ!! そして、臭ぇ~」
な、何て、お下劣な攻撃じゃ。
許さんぞ、こいつだけは。
わしは再び“たたかう”を選択し、実行した。
<ゆうしゃの こうげき…>
<しかし うごきは ふうじられている>
「な、何じゃとぉ!?」
<ノラクーダの こうげき… スバッ!>
<ゆうしゃは 13ポイントのダメージを うけた!>
「イタタッ……畜生め」
ならば、魔法攻撃じゃ。
わしは“じゅもん”→“アチャー”と選択し、実行した。
<ゆうしゃは アチャーのじゅもんを となえた!>
<ボォ~~~~~ッ!>
<しかし ノラクーダは ダメージを うけなかった>
「なにぃ!? 火炎魔法が効かんだとぉ?」
<ノラクーダの こうげき… スバッ!>
<ゆうしゃは 13ポイントのダメージを うけた!>
「イタタッ……また、やられてしもうた」
もう、こうなったらダジャレ攻撃じゃ。
わしは“アイテム”→“じょうしのダジャレ”と選択し、実行した。
<ゆうしゃは ダジャレを とばした…>
<コンドルが 地面に食い込んどる>
<しかし ノラクーダは わらわなかった>
「だから、なぜ効かんッ!? ちゅうか、効いたためしがないぞ、これ」
まったく、バゴンちゃんも とんだクソアイテムを勧めてくれたもんじゃ。
今度、店に行ったら苦情を言わんとのう……。
<ノラクーダの こうげき… スバッ!>
<ゆうしゃは 13ポイントのダメージを うけた!>
「イタタッ……3発連続で食らっとる。やばいぞ、さすがに」
もう、残るはこれしかないわ。
わしは“じゅもん”→“チベター”と選択し、実行した。
<ゆうしゃは チベターのじゅもんを となえた!>
<ビュ~~~~~ッ!>
<ノラクーダは こおりついた!>
「おぉ、やった! 効いたぞ」
<ノラクーダの こうげき…>
<しかし からだは こおりついている>
<ゆうしゃは うごきを とりもどした>
「さぁ、反撃開始じゃ」
わしは“たたかう”を選択し、実行した。
<ゆうしゃの こうげき… スババッ!! つうかいないちげき!!>
<ノラクーダに 60ポイントのダメージを あたえた!>
<ノラクーダを たおした!>
<けいけんち25ポイント かくとく 250マドカを てにいれた!>
<たからばこのカギを てにいれた!>
「よっしゃー、劇的な逆転勝利じゃ! 見たか、オウム」
「あー、見た見た。それより早く宝箱を開けてみようぜ」
低空へ舞い降りたオウムが息を弾ませながら言った。
「うむ。ちょっと待っとれ……」
わしは体にまとわりついたネバネバ唾液を振り払うと、宝箱の鍵穴に たからばこのカギを挿入し 回した。
箱はギィーと軋んで開いた。
中身は薄っぺらいマスク1枚じゃった。
マスクはさっそく音と光でドエスのほねや、やからのグラサンと共鳴し始めた。
間違いない、これぞ第3の重要アイテム スケバンのマスクじゃ。
わしはマスクを手に取り、広げてみた。
“顔はやばいよ ボディ! ボディ!”と意味不明な刺繍がされておった(もちろんババロアー語でな)。
「これで早3つだな。順調じゃないか、爺さん」
オウムがわしの肩へ戻ってきて笑顔で言った。
「あぁ、そうじゃな。しかし、それにしても喉が渇く」
わしは最後の1つとなる水筒に口をつけると、
「お前も、ほれ……」
と、オウムにも水を飲ませた。
水筒がさらに軽くなってしもうた。
せいぜい、あと二口三口といったところじゃろう。
「これじゃ、砂漠を出る前に脱水症を起こしちまいそうだな」
今、まさに思っていたことをオウムが口にしよった。
「四の五の言うても始まらん。とにかく町を目指して1歩でも進むんじゃ」
わしはドエスのほねで方角を確認し、町のある北方向へ歩きだした。
やからのグラサンをかけとるおかげで雑魚モンを回避しながら進むことができた。
じゃが、青白い太陽の奴が無駄に照りを強めよってな。
たいして進まぬうちに、わしゃ ぶっ倒れてしもうたんじゃ。
「何だよ、だらしねぇなぁ。もうちょっといけるだろ、おい」
「そりゃ、お前はええよな。わしの肩に乗っとるだけなんじゃから。こっちは暑苦しい鎧を着た上に剣も盾も持っとるんじゃぞ」
「何を大げさな……プラスチックじゃねぇか」
「なぁ、オウムよ。お前 余力があるんなら、わしを置いて行ってもええんじゃぞ」
「こりゃ、お気遣いどーも。けど、水なしじゃ辿り着けやしねぇよ。途中でくたばっちまうのがオチだ」
「……」
「……」
「……」
「……」
それから、どれくらいの時間が経ったんじゃろう。
気づけば、唇が 足の踵かと思うくらいガサガサになっとる。
舌で潤したいところじゃが、口の中には一滴のツバもありゃせん。
オウムの奴は、盾が作り出す日陰の下でぐったり伏しておった。
「おい、生きとるか?」
「あぁ、何とかな……」
暑さは、もはやそれほど感じなくなっていた。
アホほど発汗したせいで感覚がバカになってしもうたんじゃろか。
陽は相変わらずギラギラ照っておる。
わしらのことなどお構いなしじゃ。
「キンキンに……冷えた……ビールが……飲みたい」
薄れゆく意識の中で、わしは呟いた。
そしたら、
「俺は……ちべたい……かき氷が……食いたい」
と、返ってきた。
ちべたい……氷……?
「そうじゃ!! あっはっはっ♪ 何で気づかんかったんじゃろ」
出し抜けに、わしが立ち上がってわめきだしたんで、
「とうとう気が狂っちまったか……」
と、憐憫の色を見せるオウム。
「いやいや、わしゃ まだ正気じゃぞ。ええか、見ておれ……」
そして、わしはチベターの呪文を唱えたんじゃ。
すると、どうじゃ。
わしの期待通り、目の前の地面に雪と氷の粒がどっさり積もりよった。
「ははっ、どうじゃ! お前の望んだ ちべたい氷じゃぞ。さぁ、食えッ」
「うひょーッ♪」
歓声を上げて、オウムが氷雪の小山にダイブした。
リスみたいに口いっぱいに頬張ってな、
「んまい! んまい! こりゃ、最高だぜぇ♪」
そんな能天気なオウムを尻目に、わしは氷雪を水筒へせっせと詰め込む。
その作業を終えてから、残りの氷雪を堪能したんじゃ。
「あれれ、もう溶けちまったよ。あんなにあったのに……」
物足りなさげに呟くオウム。
氷雪の小山は、やはりわずかな時間で砂礫の地に吸い込まれてしもうた。
「心配いらん。水筒は4個とも満タンじゃ。さぁ、町へ帰るぞ」
【 ちずまよ放談 】
千寿留「おい、万世。この異世界ばなし なかなか面白いじゃないか」
万 世「だね。ハゲの勇者さん 応援したくなるよ」
千寿留「よし。じゃあ、ハゲの勇者に ハゲ増しの手紙を送ろうぜ」
万 世「“ハゲ増し”じゃなくて“励まし”ね。うん、いい考えだと思うよ」
千寿留「今 これを読んでるみんなも、よかったら送ってくれ」
万 世「宛て先は?」
千寿留「えーと…… 〒194-0721 ババロニア共和国
コンババ町 2丁目3番19号 コンババイン様方 だな」
万 世「ちなみに、切手代はいくら?」
千寿留「6万円だ」
万 世「という訳で、次話もお楽しみにね♪」
千寿留「ぜってぇ読んでくれよな!」