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美女に子種をせがまれて  作者: ぬ~ぶ
24/46

#24 さまよいの森 アゲイン


 その後、わしは拘束椅子に座らされた。


 手足を枷で固定され、口にも枷(俗に言うヨダレ玉じゃ)、おまけに鼻フックまで はめられてしもうたんじゃ。


 完全に自由を奪われ、絶望に打ち震えるわし。

 じゃが、そこへさらなる試練が降りかかる。


 (ろう)じゃ。

 非情にも、火のついた極太ロウソクを傾けてきよったんじゃよ。


「アチアチアチアチアチッ……」

 

 いや、熱いだけじゃあないぞ。

 めちゃんこ染みよる。


 そりゃ当然じゃ。

 バラ鞭とハイヒールのせいで、体のあちこちに炎症を起こしとるんじゃからな。


 それから、わしは四つん這いにさせられ ハイヒールを舐めさせられた。

 首輪をはめられ 部屋中を引きずり回された。


 そして、荒縄で縛られ 天井フックで吊るし上げにされた。

 卓球のラケットみたいな板で尻を叩かれ続けた。


「も、もう、無理じゃ。勘弁してくれぇ……」


 いよいよ虫の息となったわしは、涙ながらに哀願した。


 じゃが、それでもアバズレンは許してくれなんだ。


「怒りを悦びに! 苦痛を快感に!」


 と、馬鹿の一つ覚えみたいに繰り返すばかりじゃ。


 怒りを悦びにぃ~? 苦痛を快感にぃ~?

 そんなことできてたまるかッ、クソが!!


 じゃが……

 できてしまったんじゃよなぁ、これが。


 確か三角木馬に乗せられて、両の足首に水の入ったバケツをくくり付けられた時じゃった。


 股が今にも裂けそうな激痛に、わしゃ白目をむいて(あえ)いでおったんじゃがな。


 そのうち、ふっと麻痺したみたいに全身がしびれだしてのう。

 そこから、じわじわっと押し寄せてきたんが、まさに悦楽と快感。


 それは、わしの中のマゾヒズムが目覚めた瞬間じゃった。


 アバズレンは わしのエレクトした下半身に気づくと、


「ついにやりましたね! さすがはハゲの勇者。やはり、わたくしの目に狂いはなかったわ」


 一転 仏のような笑顔を見せて、縄を解いてくれた。

 乳首に重くぶら下がる分銅付きクリップも外してくれた。


 わしはアバズレンの肩を借り、隠し部屋から町長室へ戻った。


 すると、そこには多くの職員が整列しておって、拍手で迎えてくれた。

 その中の一人が歩み出てきて、アバズレンに細長い木箱を手渡した。


 彼女は箱から中身を取り出すと、わしに差し出した。


 それは、上腕骨とおぼしき骨じゃった。


 鈍い光を放つその骨は、一方のみが鋭く尖っておった。


 骨を手に取ったわしは、試しにそれを床に転がしてみた。


 骨は円を描くようにクルクル回転し、間もなく静止した。


 すぐさま方位磁石を持った職員が飛び出てきて、骨の尖った先が指し示す方角を確認する。


「南です。合ってます」


 すると、場にひときわ大きな拍手と歓声が沸き起こった。


「やったな、爺さん」


 窓際で成り行きを見守っていたオウムも嬉しそうに笑った。


 こうしてわしは、ドSの町長からドエスのほねをGETしたんじゃ。



 そして次にわしらが向かったのが、さまよいの森じゃ。


 そう……わしがこの世界に落っこちて最初に目を覚ました場所じゃよ。


 ここには、透明の敵を可視化するアイテム『やからのグラサン』が眠っとるらしい。


「ときに、オウムよ。この森に入るのに、なぜドエスのほねが必須なんじゃ? 市販のコンパスではダメなのか?」


「あぁ、ダメだ。どんなコンパスも狂っちまう。実はこの原生林の下は溶岩だらけでな、強烈な磁場が形成されてるんだよ」


「なるほど、そういうことか。なら、苦労して手に入れた甲斐があったというもんじゃな……」


 わしらは森の北西辺りから踏み入って、まっすぐ東を目指した。

 10分ほど歩く度にドエスのほねで方角のズレを調整しながらな。


 言わずもがなじゃが、南が分かれば あとの3つも容易に知れる。

 南を背にして立てば、前方が北で、右手が東、左手が西じゃもんな。


 森を東に抜けたら、少し南下して今度は西へ突き進む。

 で 西に抜けたら、また少し南下して東方向へ……

 といった具合に、東西を往復しながら探検する手筈じゃった。


「しかし、オウムよ。こんなだだっ広い樹海で、ちっぽけなサングラスなんぞ どうやって見つければええんじゃ?」


「そういや、まだ言ってなかったが……重要アイテムは皆、光るんだ。で アイテム同士が近づくとな、音と光で共鳴し合うってんだよ」


「ほぉ、それは初耳じゃ。なら、意外にあっさり見つかるかもしれんな……」


 じゃが、そうは問屋が卸さんかった。

 

 朝一番で始めてから日暮れを迎えるまでに 森を横断できたのは、たったの1回きり。


「ったく、広すぎるんだよッ、この森は」


「まぁ、そうカリカリするな。今日はもうここまでにして、また明日じゃ……」


 わしは町への方角を確かめんとドエスのほねを転がしたんじゃが、


“キーンキーンキーン……”


 突如、甲高い金属音を骨が発しよった。


「爺さんッ」

「うむッ」


 わしらは驚異の眼を見合わせた。

 否が応にも色めき立ってしまう。

 

 わしはドエスのほねを拾い上げると、尖った先を周囲に巡らしてみた。


“キーン! キーン! キーン!”


 明らかに音がデカくなる方角があった。


 わしは はやる気持ちを抑えながら、その方へと歩みを進めた。

 日暮れのせいで薄暗いんじゃがな、骨の光が強さを増してくれとるおかげで何とか視界は保てた。

 

 しばらく行くと、ゴツゴツした岩場に至った。


 そこには、樹齢何百年みたいな巨木が倒れておった。


 で その巨木と岩石との隙間が、ちょっとしたほら穴みたいになっとってな……

 どうやら、そこがアイテムの居場所っぽいんじゃよ。


 オウムの奴も同じ見当をつけたようで、わしに先んじてそのほら穴へ飛んで行きよった。


「おい、爺さん、気をつけろ。化け物がいるぞッ」


「なにぃ!? 化け物じゃとぉ?」


 足元に気をつけながら駆けつけてみると、ほら穴の中に確かにそれらしきものが横たわっておった。


「ちょっと待っとれよ……」


 わしは近くの木から手頃な枝を1本 剣で切り取った。

 そして、枝の先端に布切れを巻きつけ、マッチで火をつけた。


 その手製のたいまつを、恐る恐るほら穴へと近づけてみる。


「……んん?」


 照らし出されたのは、濃色(こきいろ)の山袴に茶色い毛皮をまとった老婆の姿じゃった。


「なーにが化け物じゃ、人間の婆さんではないか」


 じゃが、オウムはすかさず否定する。


「こんなデカい婆さんがいるかよッ」


 言われてみれば、確かにそうじゃ。


 くの字形に横たわっとるから気づかんかったが……この婆さん、2メートルは優にあるぞ。


「ヴヴッ……何者じゃ?」


 不意に、婆さんが瞼を開いて鎌首をもたげた。


 その目はナツメ球みたいな橙色(だいだいいろ)で、瞳はなかった。

 ちらと見えた前歯もすべて犬歯じゃった。


 やはりこの婆さん、人間ではない。


「お、お前こそ何者だぁ、この化け物ッ」


 オウムが恐怖心を紛らすようにいきり立った。

 

 すると、婆さんは絞りだすような声で、


「ヴヴッ……おらは、もりんばじゃ」


 それを聞いたわしは反論せずにはいられんかった。


「バカなッ。もりんばはサワデの父ちゃんによって退治されたはずじゃ、3年も前に」

 

 そしたら、婆さんは不承不承といった感でおもむろに上体を起こした。


 そして、自分の胸を指し示し、


「これのことか?」


 胸の真ん中にゴルフボールくらいの穴が空いておった。

 周囲の組織は黒や緑色にただれとる。


 腐敗菌にやられたらしい。

 悪臭も漂ってきた。


「よくそんなんで生きとるな……」


 わしは率直な感想を漏らした。


「ヴヴッ……それより、おらに何か用か?」


 青ざめた顔に脂汗を浮かべながら、もりんばが言った。


「実はわしら、この森で探し物をしとってのう……光るサングラスじゃ。心当たりはないか?」


 すると、もりんばは後ろを向いて何かをつかみ取った。

 そして、その手をわしらの方へと持ってきた。


 それは、何とも妖しい光を放つサングラスじゃった。


 第2の重要アイテム やからのグラサンに違いなかった。


“キーンコーンカーンコーン♪”


“コーンカーンコーンキーン♪”


 もりんばの手中のサングラスと、わしの腰にさした骨が共鳴を始めよった。

 快活な音色を奏で、明滅を繰り返す。


 まるで再会を喜び合う つがいのようじゃ。


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